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最早デバッグでは対応しきれないバグ塗れの国


 未だに「Youtuberは簡単にガッボリ稼げる気楽な稼業」だと思っている人が少なくない。但し、それはYoutube普及以前、というかWeb普及以前から、テレビタレントは楽して稼げる気楽な稼業だと思っていた人が多いのと何も変わらない。今じゃ小学生のやりたい職業ランキングの上位に、Youtuberが入るのも珍しくもなんともないが、大人ですらそんな風なYoutuber感を持っていのるのだから、多くの子どもたちは同様のYoutuber感を持っているのだろう。実際は見えてる部分以外に何倍もの労力が必要で、その労力をかければ必ずお金につながるという保証などどこにもないのに。

 大人が夢見がち過ぎるのには多少の問題もあるが、子どもが夢見がちなのは何も悪いことではない。 理想と現実のギャップを知るのはもう少し後でもいいかもしれない。どんなことにもネガティブな面は必ず存在するが、子どもの頃からネガティブな面ばかり見せられてしまうと、大人になる前に絶望することにもなりかねない。
 今の子たちがYoutuberに憧れるような感覚は、自分の世代ではゲームクリエイターがそれに近かったように思う。自分の小学生期はファミコンブーム真っ只中で、勿論プロ野球選手やお医者さん、お花屋さんにケーキ屋さんなど、定番の職業をやりたい職にあげる子も多かったが、ゲームクリエイターという新しい職に興味を抱く子どもも決して少なくなかった。
 しかしゲーム好きの子どもの間には、その頃既にゲームクリエイターはゲームを作る仕事でゲームをする仕事じゃない、という理解はあった。今でこそプロゲーマーというゲームをする職業が成立しているものの、当時はゲームをすることでお金を稼ぐという職はなかった。○○名人のようなゲームメーカーの広報、記事作りの為にゲームを進める必要のあるゲーム誌編集者という仕事は当時からあったが、どれも直接的にゲームをすることで稼ぐ、という印象とは違った。ゲーム誌を読んでいる子はそれを概ね理解していた。

 ある日、友達の一人が「デバッグ」という1日中ゲームをしてお金がもらえる仕事がある、という話を持ってきた。デバッグとは、プログラミングの不備「バグ」を洗い出す作業で、それを1日中やるバイトがあるという話だった。後々、デバッグは普通の人が凡そやりそうもないプレイの仕方、例えばレースゲームでずっとコース外を走り続けるとか、全ての敵にあたって死ぬ、をしらみつぶしに続けるとか、ゲームを楽しむのとは程遠いプレイを強いられる仕事だということを知ることになるのだが、当時は仲間たちと「そんな夢のような仕事があるのか!」と盛り上がっていた。

 前述の通り「バグ」という表現はプログラミング上の不具合を意味する。バグが残ったままのゲームも当時は結構あって、一定の条件下でゲームが止まってしまい、そこからどうすることもできなくなる、なんてこともしばしばあった。セーブ機能があるゲームならばセーブしたところまで戻されるだけだが、当時はセーブ機能のないゲームも多く、そのようなバグに嵌るとリセットボタンを押して最初からやり直さなくてはならなかった。
 またファミコンはソフトが入ったカートリッジを本体に固定する機構が緩く、お菓子を取ろうとして、トイレに行こうとしてなど、何かの拍子にカセットを微妙に揺らしただけで、接触不良を起こしてゲームが止まるなんてこともよくあった。バグという言葉がある程度普及すると、厳密にはバグでないそんな場合も、「バグった」と表現するようになった。
 今ではさほど頻繁に使われる表現ではないような気もするが、今でも不具合を起こすこと全般について「バグった」と言ったりする。少なくとも30-50代にはその表現が通じるのではないだろうか。


 4/1に首相が「全世帯に布製マスク2枚配布」と言い出したが、エイプリルフールのネタではなく事実だった(マスク2枚配布「情けない」 国民から与党から疑問次々 [新型肺炎・コロナウイルス]:朝日新聞デジタル)、ということについては昨日の投稿でも触れた。

マスクの品薄、来週以降に解消したい=官房長官 - ロイター


によると、官房長官が2/12に、当時既に品薄になっていたマスクの供給に関して増産に努めていることをアピールし、翌週以降に品薄解消するという見通しを示していた。それから約2ヶ月を経て、「全世帯(全国民ではない)に布製マスク2枚配布」と首相が発表する。しかも、その施策決定の過程に関して、

布マスクで「不安パッと消えます」 官僚案に乗って炎上 [新型肺炎・コロナウイルス]:朝日新聞デジタル


こんな記事が出てくる。
 官邸/政府中枢内にかなり深刻なバグがあることは誰の目にも明白だ。


 バグッているのは官邸や政府だけでない。三浦何某という国際政治学者を名乗る女性が、この布マスク2枚配布についてこんなツイートをしていた。


「布マスクはありがたい」「郵便利用で配るのは画期的」…。この人は、国際政治学者を称するくせに、他国政府がどのような支援策を講じているのか、などの海外のニュースを知らないのか? そしてWHOがマスクについて「効果が得られるのは小まめな手洗いをしている場合に限り、正しい方法で使い、適切に捨てる必要がある」と強調している(マスクを着けるべきなのか? WHOが最新研究を検討 - BBCニュース)ことを知らないのだろうか。国際政治学者を名乗る者がこんな主張をしているのなら、何らかのバグが生じているは間違いない。

WHOは布マスクを非推奨、結局マスクは着用すべきなのか否かを研究論文や研究者の意見を基に解説 - GIGAZINE


 また昨日はこんなツイートも話題になっていた。


「厚生省もそれなりに頑張っている」? この人も他国がどんな対応をしているか、に興味がないのだろう。それなりの頑張り、で有難がることが出来るなんて、内部関係者か利害関係者、若しくは底抜けのお人好しなのだろう。不安等で正常な状況の認識ができなくなったのだろうか。振込め詐欺に簡単に引っかかるタイプだ。この人にもバグが生じている恐れが非常に高い。


 だが今最も深刻なバグが発生しているのは、感染症や労働問題を管轄する、現在最も重要な中央省庁・厚生労働省だ。

ナイトクラブや風俗業、休業補償の対象外 厚労省「公金助成ふさわしくない」に批判 - 毎日新聞

新型コロナウイルス対策の一斉休校の影響で休職した保護者の支援策として、一定の休業補償を行う厚生労働省の制度は、接待を伴うナイトクラブなどの飲食店や、風俗業の関係者を支給対象外としている。厚労省は「公金を投じるのにふさわしくない業種との判断だ」と説明する
信じられるだろうか。感染症や労働問題を管轄する中央省庁が、感染症対策の中で平然と職業差別を行っているのである。厚労省は暴力団関係者も同様に制度の対象外としているようだが、暴力団関係者にだって人権は認められているし、暴力団関係者にだって感染の恐れは当然ある。職業や国籍に関係なく制度の対象とするのが、人道的な対応ではないのか。バグなんて生易しい話ではなく、最早狂っているとしか言いようがない。
 こんなに平然と偏見をまき散らし、差別を公然と行う厚労省が、そしてその責任を負う内閣が、信頼できるか?できる筈がない。日本は一応民主主義が成立していると言える状況だが、民主主義下でこの状況なのは、独裁国でこの状況よりも一層タチが悪い。何故なら、国民がそんな政府を支持しているということだからだ。

 支援するに相応しいとか相応しくないとか、 人の命の価値に差をつけるな、としか思えない。水商売や性産業に関わる本人を差別するのも当然言語道断だが、その人達に子どもがいる場合だってある。それら全てひっくるめて「相応しくない」とすることは、その人達は困窮しても構わないということでもあるし、食うに困って仕事を続け、その結果の感染し万一死んでも仕方がない、と言っているのも同然だ。それに気づけないような人は即刻免職にしないといけない。見えないナイフをブンブン振り回してるようなものだから。

 こんな風に今の日本はバグだらけだ。 


東京都、営業縮小のバー・クラブなどに支援金給付へ :日本経済新聞


によると、都は国と違って方向転換を始めたようだ。一部にはそれを好意的に受け止める向きもあるようだが、それにしたって対応が遅い。この緊急時に「ようやく」声が届くような政治は、また次も同じように後手後手だろうし、未だに届かない中央の政治は目も当てられない。
 そんな政治に声を届けようとするよりもごっそり取り替えた方が、一時的には対応の遅れが生じるかもしれないが、結果的にはスムーズな対応がなされるのではないか。1から10までツッコミが必要な政治にいちいちツッコミを入れ続けるのは、明らかに合理性に欠ける。あまりにもバグだらけなプログラミングは、いちいちデバッグで対応するよりも、プログラミング全体を一から見直す方が合理的である。


 トップ画像は、Photo by Kelly Sikkema on Unsplash を使用した。

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