タイムボカンシリーズはタツノコプロが制作した、正義の味方の主人公と、リーダーの女と男の子分2人の悪玉トリオが対決する形式のコメディアニメだ。サザエさんやドラえもんのように絶え間なく放送が続けられてはいないし、ガンダムシリーズ程の頻度で新シリーズが作られているわけでもないが、相応に人気のある作品で、2000年以降もコしばしば新作が制作されており、2009年には同シリーズの一つ・ヤッターマンが実写映画にもなった(タイムボカンシリーズ - Wikipedia)。
今日のトップ画像に用いたのは、悪玉トリオが爆発してやられる際にほぼ必ず描かれる、明らかにキノコ雲を模した煙のカットである。なぜこれをトップ画像に使ったのかと言えば、ハフポストがこんな記事を掲載していたからだ。
Xiaomiのプロモーション動画に原爆を揶揄する表現?「配慮欠けていた」とおわびを掲載 | ハフポスト
記事によると、
中国のスマートフォンメーカー・Xiaomi(シャオミ)が公開したプロモーションビデオに、原爆を揶揄する表現が含まれているとして、一部のネットユーザーから批判の声が上がっているそうだ。記事にもあるように、シャオミは配慮に欠ける内容だったとする謝罪文を公表し、既に当該ムービーの公開を中止している。
弊社、最新製品のプロモーションビデオに関するコメントを掲載します。今後の再発防止に努めます。 pic.twitter.com/ZSXbSZElEi— Xiaomi Japan (@XiaomiJapan) May 6, 2020
だが、この件の是非を考える為には、どうしても当該ムービーを確認する必要がある。Youtubeで検索すると、簡単に転載された当該ムービーを見つけることができた。そのままその転載ムービーをこの投稿に埋め込もうかとも思ったが、当該アカウントが差別的な主張をしていたので、そのアカウントの動画の埋め込みは止めて更にこちらへ転載することにした。
次の動画が懸案になったムービーである。
ハフポストの記事には、
高速充電機能を紹介する部分で、白人男性が寿司のようなものを食べると体が風船のように膨らんでいき、屋根を突き破り空に浮かんでいく。とある。しかし率直に言って、このような話は難癖以外の何ものでもない、としか思えなかった。一部の人が「不快」と言っているカットのスクリーンショットがこれだ。
その後、男性が爆発するとアメコミのような画面に変わり、ヒョウが地面を駆け抜けると、キノコ雲のようなものが上がり「FAST CHARGE」と画面に表示される、というものだ。
こうした演出に対し、ネットでは一部のユーザーから、風船のように膨らんだ男性が「ファットマン(長崎に落とされた原爆)」の暗喩ではないかといった声や、キノコ雲を想起させる画面に不快感を呈するコメントもあがった。
もしこれがアウトであれば、タイムボカンシリーズ作品は金輪際一切再放送もソフト販売も配信もできなくなるのではないか。2019年6/30の投稿でも書いたように、それ以前に、中韓の一部の人達が、旭日旗に対して不快感を示していることを甘んじて受け入れ、自衛隊旗や朝日新聞の社旗、同様のモチーフを用いた大漁旗なども含めて使用を中止してタブー化せざるを得なくなる。
個人がこの映像に不快感を覚えるのは、思想信条、若しくは内心の自由の範疇だろうから、何か問題があるとは思えない。だが、「不快だから取り下げろ」というのは果たして妥当か。それは他者の表現を委縮させる、場合によっては権利の侵害にもなりかねない危険性を孕んだ行為でもあるのではないか。
この件に関して言えば、個人的には、テレビでカレーを食べている人の映像を見て、下痢便を食べているように見えて不快だから放送するな、とクレームを付けるのと、そんなに変わらないように思える。この映像が不快なら、YoutubeやSNSの機能を使って自分の目の届く範囲にこのムービーが表示されないようにする、シャオミの機器を使わない、買わないようにする、程度の対応が妥当なのではないだろうか。
このような事は、「法律には違反していないけれど、けしからん。許せない」という、所謂「不謹慎罪」「けしからん罪」に該当する。昨今一部の市民と行政、そしてメディアが寄ってたかって、自粛要請に応じずに営業を続けるパチンコ店等を糾弾しているのもその一種だろうし、パチンコ屋以外も標的とした所謂「自粛警察」も同様だ。
東京新聞:<新型コロナ>忍び寄る「自粛警察」 飲食店に匿名嫌がらせ:社会(TOKYO Web)
この東京新聞の自粛警察に関する記事の最後に、戦中の歌謡曲/軍歌等によるプロパガンダ等に詳しい近現代史研究者の、辻田 真佐憲さんのコメントがある。
『自粛警察』といった私的制裁は、地域や家族を守るためと善意でやっている可能性があり、手に負えない。驚くほど陰湿な相互監視社会だシャオミのムービーに対する難癖も同様で、あれを取り下げさせてしまえば、前述のように、タイムボカンシリーズはOKなのか?という矛盾が生じるし、不快だから取り下げろが認められるならば、旭日旗も一切タブー化せざるを得なくなってしまう。つまり、その影響をよく考えもしない合理性の低い難癖は、将来的に自分達の自由も奪うことになりかねない。自分達だけは別基準というわけにはいかない。
自分や周囲にも差別が降りかかってくるかもしれないとの想像力を持つしかない
にも関わらず、ハフポストの記事が、
過去にも失策のあったXiaomi、日本でのブランドイメージ回復は急務だという準見出しを付けているのはとても残念だ。この件で明らかにシャオミに落ち度があるのなら話は変わるだろうが、過去に失敗があったことと、当該ムービーに難癖が付けられていることは関係がない。直接的にそんな表現は記事にないが、つまりは「過去に失敗したんだから難癖を受け入れろ」と言っているも同然で、そんなのは、分別のある人の言う事ではない。