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ラリージャパン2020中止の先にあるのは…

 とうとうWRC 2020シーズンの日本戦・ラリージャパンも中止が決定した(FIA世界ラリー選手権「ラリージャパン 2020」開催を断念 - Car Watch)。2020年のラリージャパンは、2010年に北海道で開催して以来10年ぶりの開催予定だった。2008年にスバルがWRCから撤退して、1990年代から2000年代初頭にかけて、WRCで一時代を築いた日本の自動車メーカーが姿を消していたが、2017年にトヨタが18年のブランクを経てWRCに復帰し、やっと本拠地日本でのラリーイベントも2020年に復活する予定だった。


 中止の理由は勿論新型コロナウイルスの感染拡大の影響である。今シーズンはモータースポーツに限らずあらゆるスポーツ、そして人を集めるイベントがその影響を受け、延期/中止を余儀なくされている。プロスポーツの中には再開しているものも多いが、無観客か観客数をかなし絞って開催している競技/イベントが殆どだ。日本でもプロ野球/プロサッカーが再開されたが、再開以降選手の感染が発覚するケースも複数報じられている。それでも最早開催自粛してはいられないという台所事情もあるのだろうが。

 バイクの世界選手権・MotoGPの2020年シーズンの日本戦は6/1に中止が決まった。カーレースの最高峰・F1も6/12に中止が発表された。EWC、バイクの耐久レースの世界選手権の1戦である鈴鹿8時間耐久レースは、4/27に、予定していた7月開催から10月末への延期を発表していたのだが、EWC側が開催を断念した為、8/12に中止が正式に発表された。自動車の方の世界選手権・WECは、9月にシーズンが始まり翌年6月のルマン24時間レースで幕を閉じるのだが、2020年3月以降一旦2019-2020シーズンが中断し、今月やっと再開、6月開催から9月に延期されたルマン24時間レースでやっとシーズンが終わる見通しだ。2020-2021シーズンの日本戦は10月末に富士スピードウェイで開催される予定だったが、これも既に4月の時点で延期が決定している。

 つまり、モータースポーツの世界選手権で、2020年に日本で開催される予定だったレースは、WRC開催の中止が決まったことで、全て中止されることになった。WECだけはまだ延期という体裁だが、発表されたのは開催延期になったことだけで、現状では無期延期状態なこと、また11月後半にバーレーンでの8時間耐久レースが予定されていること、日本の冬はロードレースに適した気温ではないことを勘案すると、2020年内の開催はまず無理だ。

 バイクも自動車もモータースポーツの世界選手権はヨーロッパを中心に動いている。日本の自動車/バイクブランドが今でもモータースポーツの分野でかなり活躍しており、特にバイクでは、ほぼ毎回少なくとも1台は日本車が表彰台に上り、表彰台を独占することも珍しくはなく、かなり強い存在感を示しているものの、メーカー直系の所謂ファクトリーチームは軒並みヨーロッパを拠点としているし、独立系のインディペンデントチームも殆どがヨーロッパのチームだ。
 そんな背景があるので、2020年シーズン(若しくは2020年にかかるシーズン)は、どのシリーズでもヨーロッパでのコンパクトなシーズンになることが発表されている。例えばMotoGPでは、3-6月分の開催予定が全て中止/延期となった為、同じサーキットでの2週連続開催を複数回行うという異例の措置をとることで、移動にかかる時間の圧縮も図り2020年シーズンを成り立たせる方針だ。なので、決して日本戦だけが中止になったわけではなく、2020年のモータースポーツ世界選手権のヨーロッパ以外の開催は、そのほとんどが中止になっている

 だが、現在の日本政府のあまりにも杜撰な新型コロナウイルスへの対応を目の当たりにしていると、このままでは他国/他地域の政府、又は市民から警戒されてしまい、2021年の国際的なイベント開催も危ういのではないか?という気がしてならない。
 7/24の投稿で、オリンピックの開催延期について書き、組織委員会の遠藤会長代行が、開催の最終判断は「来年3月以降で間に合う」と言っているという事にも触れたが、開催ギリギリになってイベントが延期されれば、開催に向けて準備を進めるチームや選手、そして観客になる予定だった人、開催地周辺の自治体、住民なども含め、全ての関係者が振り回されることになる。大きなイベントになればなるほど、開催の中止や延期は出来る限り早く決める必要がある。中止や延期の決定が遅くなればなるほど影響は大きくなり、無駄になるコストも増える。
 無策どころか、感染再拡大が進む中で旅行促進政策を強行するような、余計なことをする政府をこのままのさばらせておくことの影響は、間違いなく経済にも影響する。万が一感染症対策の不備が理由で2021年シーズンも各種スポーツの国際的な大会、それ以外の大規模イベントが中止を余儀なくされたら、どれだけ大きな影響が出るかは明白だ。


 政府や組織委・都知事などは、2021年に東京オリンピックを開催する気満々のようだが、政府や都が今の路線の新型コロナウイルス対策を、今後もこのまま続けるなら、オリンピックは開催できなくなるのではないか。オリンピックが開催できない状況ならば、来年もモータースポーツなどの世界選手権、そしれそれ以外の大規模イベントも今年同様に中止せざるを得ないのではないだろうか。


 トップ画像は、Photo by Maxime Agnelli on Unsplash を使用した。

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