スキップしてメイン コンテンツに移動
 

日本のおわり。

 日本の終わりはもう始まっているんだな、と、昨日強く感じた。週末に行われた共同通信、日経/テレビ東京合同の2つの世論調査で、安倍内閣の支持率が50%台に回復したというのだ。両者とも約1か月ぶりの調査だが、この1か月の間に一体どんなポジティブな要素があっただろうか。全く思い当たらない。


次の首相、石破氏1位34% 共同通信世論調査、菅氏14%、河野氏13%:東京新聞 TOKYO Web

内閣支持率は56.9%で、8月22、23両日の調査より20.9ポイント増だった。

「総理の辞任は妥当」9割 世論調査 支持率は回復【Newsモーニングサテライト(モーサテ)】|テレビ東京ビジネスオンデマンド【BOD】

安倍内閣の支持率は前回7月の調査から12ポイント回復し、55%で前回から支持不支持が逆転し、支持が高くなりました。

 この1か月の間に首相が行ったこと、政権の大きな変化と言えば、8/28に安倍が辞意を表明したことくらいしかない。そして共同の調査では、辞意表明の時期は妥当か、日経/テレ東合同調査では、辞意表明は妥当か、とも聞いており、記事には

  • 退陣表明の時期については「適切だった」が58.6%。「遅過ぎた」は25.3%、「早過ぎた」12.7%だった。持病による辞任でやむを得ないとの見方があるためだとみられる。(東京新聞)
  •  安倍総理が持病の悪化を受けて辞任を表明したことについて聞いたところ「妥当だと思う」とした人が9割近くにのぼり「妥当だと思わない」は8%でした。(テレビ東京)

という記述がある。

 日本には、政権、そしてそれ以外の政治家だけでなく、メディア報道にも論理よりも情緒を重視する傾向がある、ということについては、昨日の投稿でも書いたし、それらだけでなく有権者/市民も同様だ、とも指摘した。この世論調査が適切に行われたのだとしたら、有権者/市民が論理よりも情緒を重視しているので、メディアや政治もそうなるべくしてそうなっている、としか言いようがない。

 首相が病気を理由に辞意表明しただけで、支持率が20%も上がる

そんな国は馬鹿にされて当然だ。 拉致被害者の帰国が実現しないのも、北方領土問題が進展しないのも、米国が日本にばかり米軍駐留負担を過剰に求めるのも、そうなるべくしてそうなっているとしか言いようがない。

 ダレノガレ明美さんのゆるフワ政権擁護ツイートについては8/18の投稿でも批判したが、安倍が辞意を表明した8/28にも、彼女は次のツイートをしている。

彼女は、誰についての話かを明確にしていないものの、ツイートしたタイミングと、この頃「安倍さんだって頑張っていて、病気で辞めるのにお疲れ様の言葉もかけられない人は、人としてどうかしている」という趣旨の主張が、SNSなどで散見されたので、安倍の辞意表明を念頭にしたツイートという解釈は間違っていないだろう。
 彼女は「頑張ってきた人/頑張っている人には」としているが、少なくとも首相は、選挙等で公約を掲げている以上、 頑張っているだけで評価されない、到底評価できない立場である。でなければ公約は単なる美辞麗句ということになる
 「頑張ったけど出来ませんでした」で許されるのは学生までだ。例えば、彼女が出資した企業の経営者が「頑張ったけど赤字になりました」と言ったら、彼女は「ありがとう!お疲れ様でした!」と言って感謝するのだろうか。もしそうだとしたら、この先彼女の周りには詐欺師が群がることになるだろう。もし彼女が特別な関係になった者との間で「浮気はしない」という約束をしたとする。しかし浮気が発覚し相手が「誘惑に負けて浮気しちゃいました。だけど浮気しないように極力頑張ってはいました」と言ったら、彼女は「ありがとう!お疲れ様でした!」と感謝するのだろうか。皮肉でそう言う可能性はあるだろうが、こ彼女のツイートが、皮肉で「ありがとう!お疲れ様でした!」と言える人になりたいという意味ではないことは、最後に「否定する人になりたくない!」としていることが示している。
 前述したように、社会的には頑張ったかどうかよりも結果の方が重要だし、また評価するにしても、「何を」頑張ったのかが非常に重要だ。彼女のようにゆるフワに漠然と頑張ってきた人/頑張ってる人とすれば、例えば痴漢勤しんでいる輩も痴漢行為を頑張っている人だし、ネットで彼女に対して誹謗中傷を繰り返す人も、中傷を頑張ってる人だ。そんな人に対しても彼女は否定せずに「ありがとう!お疲れ様でした!」と感謝する人でいるつもりだろうか。
 安倍が一体どのような政治的成果をあげたのか、を彼女は考えた上でこんなツイートをしているのだろうか。ゆるフワに漠然とツイートしているとしか思えない。何故なら安倍は保身と利益誘導を頑張ってきただけの人としか思えないからだ。7年半ずっとそうだったが、昨年11月に追求が始まった桜を見る会問題と、6月以降は最早政治的空白と言っても過言ではないコロナ対応だけを見ても明白だ。

 このように書くと、ダレノガレ明美さんだけがゆるフワ政治発言をしているように見えるかもしれないが、決してそんなことはない。ピコ太郎の中の人として知られ、官邸にもお呼ばれしていた古坂大魔王さんも

こんなツイートをしているし、このフラッシュの記事を見ても、

安倍首相辞任への芸能人コメント総まとめ「ロマンの在り方が同じ」 | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]

  • おやめになっても、すごい地球上の知識が入ってるわけですよ。(周囲に)いろいろアドバイスしてね。これからも体を治して、頑張ってもらって(西川きよし)
  • テレビでちょうど(会見を)見ていて泣いちゃった。切なくて。私の中ではプライベートでは同じ価値観を共有できる。同い年だし、ロマンの在り方が同じ。辞任されたから言えるけど、ご夫妻は仲良しです。もっと自由にご飯に行ったりできるかな(松任谷由実)
  • 本人が一番悔しい思いをしているんじゃないですかね。ご本人も同じことは繰り返したくはなかったでしょうし。僕らには考えられない責務をずっと担っているわけですから(中居正広)
  • ここ最近見る、総理の雰囲気からすると、すごくすがすがしい顔になっていた。ずっと悩んでいて、決心がついたからなのか、ご病気とはいえ、言葉は力強かったなという印象でした(劇団ひとり)
  • とにかく以前 “投げ出した” と言われたことがあって。また、というので総理は本当になんとかなさりたかったと思う。病院側がかなり説得なさったんじゃないでしょうか。(次期首相候補は)とにかくこういう世の中ですし、空白を作るのが一番まずいと思うんですよ。いろんな投票の仕方が話題になっているんですけど、僕は菅(義偉)さんにやっていただくのが一番すんなりと、その路線でつながっていくんじゃないかという気がします(石坂浩二)
  • 病院での2回目の診察の後、記者たちが体調を聞いたときに、政治家だと『元気です』と言うはずなのに、おっしゃらなかった。『そういうことを言えないくらい、正直だし、症状が悪いのかな。ひょっとして』とは思っていました。今回、総理大臣をやめることになった。一刻も早く病気の治療をしていただきたい。1人の人間として、とにかく早く治っていただきたい(池上彰)
  • 安倍さんは、加計とか森友とかいろんな問題を起こしてコロナで話題がうつって。安倍さんが持病で勇退するってことは、総理大臣として政治的な汚点を残さず、病気が原因でやめていくっていうのは、失礼な言い方だけど運がよかったなって思って。野党がちゃんとしてたら安倍さんはもっと早くやめてるはずなんだけどな(ビートたけし)
  • まずはやっぱり7年8カ月お疲れ様でした。アベノマスクを安倍さんが何週間前からやめたでしょ。あのぐらいからちょっと心が折れてんのかなという気がしましたね。国内ではいろいろあった人ですけど、外国においてはなかなか安倍さんに代わる人がそんなたくさんいないな、というのが少し不安ではありますよね(松本人志)
  • 純粋に体調が心配。批判が多かったけれど、じゃあこのまま続けて急に倒れて入院ということになると考えたら、本人は苦しい決断だと思う。(立憲民主党の石垣氏のりこ氏の「大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物」などの声に)人の痛みに気づけない人は悲しいですね(指原莉乃)
  • (長期政権で)日本の代表として顔が見える(存在だった)。そのなかで頼りがいはあるように見えた。若い人は首相って安倍さんしか知らない。(それが)いなくなるのはいろいろ考える。(ポスト安倍は)僕より若い人にやってほしい(石原良純)
  • 国民1人1人様々なご意見があるかと思いますが1番悔しいのは安倍総理大臣ご本人です 1国のリーダーであっても人間です ご自分の命が1番大事です 今は安倍総理大臣に『感謝の意』を表しましょうよ。『この1ヶ月 悩みに悩んだ』と仰いました【退く】…と言う事は【立ち上げる】…事より大変な【勇気】と【重圧】があります。どうかご自分の身体を健康を命を第一にお考え下さいます様、心からお疲れ様でした(小柳ルミ子)
  • 第1次政権の際から、当時は顔まねしかできず、しゃべり方までものまねできなかったのでありますが、第2次政権のおかげで私自身も、ものまね芸人として比較的成長することができた。収入ももちろん上がり、結婚もすることができた。これもひとえに、安倍総理が長く政権を行っていただいたからであります。どんな芸人よりもアベノミクスの影響を受けたと言われておりました。私自身、日本最長の総理大臣である安倍晋三さんのものまねを急にやめるということはありません(ビスケッティ佐竹)

その種の人が芸能関係者にウヨウヨしていることがわかる。この記事はテレビ番組やブログでの芸能関係者の発言をフラッシュが抜粋したコタツ/コピペ記事で、 前後の発言によってはそのニュアンスが変わる可能性もある、ということは一応確認しておく。
 自分のツイッターのタイムラインには、この種のゆるフワ政治発言をせず、冷静にこれまでの安倍と周辺の振舞いを加味した、芸能関係者/有名人のツイートも流れてくるので、芸能関係者/有名人が総じてこのような傾向とは言えないだろうが、世論調査の結果と合わせて考えると、ゆるフワ有権者/市民の多さを考えると、芸能関係者/有名人も同じ様な傾向なんだろうとしか思えない。

 ゆるフワと言えば、爆笑問題の太田 光さんもかなりゆるフワである。太田さんの相方の妻・山口もえさんの、コロナウイルス感染が発覚し、田中さんと太田さんもPCR検査を受けた結果、田中さんは陽性だったが太田さんは陰性だった。彼らが司会を務める番組に出演しているTBSのアナウンサー・山本 里菜も、濃厚接触者として検査を受けた結果、彼女は陽性だった。
 太田さんは7月にラジオ番組で、新型コロナウイルスの感染状況が報じられる際に「感染者数」という言葉が使われていることに対し「感染者っていう言い方はどうなの」と発言しており、PCR検査は100%の結果が得られないという考えを示している(爆問・太田 新型コロナ感染状況に関する報道に「感染者って言い方はどうなの」― スポニチ Sponichi Annex 芸能)。しかし太田さんは、田中さんと山本アナウンサーと、周辺から2名も感染者が出たにもかかわらず、PCR検査には偽陰性/偽陽性があると考えているはずなのに、結果が陰性だったというだけで自主隔離もせずに、その2人と一緒に出演していた生放送番組に昨日出演していた。

太田光さん「『番組に穴あけた』と考えるのは間違い」新型コロナ感染アナへ。相方の田中さんには… | ハフポスト

 彼が出演したのは、政治や社会問題、そして芸能ゴシップも扱う所謂ワイドショーである。誰がどんなことを主張しようがそれはそれぞれの自由で、止めろという権利は、例えば差別や偏見、誹謗中傷などでない限りは誰にもない。だが、彼が自主隔離を自分に課さないことと、昨日の出演の矛盾を指摘することも、同様に誰にも止められる筋合いはない。相方とレギュラー共演者が感染しているのだから、番組に穴をあけた云々などと言っている場合ではなく、感染抑止の為に自主隔離するのが筋だ。 というか出演させるTBSの感覚も疑う。

 この投稿のタイトルを「日本のおわり。」としたが、有権者/市民がこんなにもゆるフワなのだから、国が没落するべくして没落するのは当然で、絶望感に打ちひしがれている。
 バブル後の日本は「失われた20年」などと呼ばれ、更にリーマンショックと東日本大震災/原発事故を加味して「失われた30年」と言われることもある。そろそろ失われていない時期に戻っても良さそうだが、この感じでは今後も失われた40年、50年と、日本の停滞、というか衰退がまだまだ続きそうだ。

 トップ画像は、www_slon_picsによるPixabayからの画像 を加工して使用した。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。