今年の5月にジョージ フロイドさんが警察官による暴力で不当に扱われ死亡したことによって。警察官の人種差別的な扱いの被害を受ける、場合によっては殺される黒人が余りにも多いことに対する抗議・#BlackLivesMatter が米国で盛り上がった。しかしそれでも、その後も同様の件が何度も報じられる。
10/7にまたしても、警察官の不当な暴力によって黒人男性が殺された、という報道があった。
DVを仲裁した黒人男性、射殺される。白人警察官を殺人罪で起訴 アメリカ・テキサス州 | ハフポスト
ニューヨーク・タイムズなどによると、警察官のショーン ルーカスは10/3に男女間トラブルの通報を受けて出動。現場にいたジョナサン プライスさんをルーカスが拘束しようとしたところ、プライスさんは抵抗しその場を去ろうとした。プライスさんは家庭内暴力の仲裁に入っていたとみられている。ルーカスはプライスさんに対しスタンガンを使用した後、発砲。プライスさんは搬送先の病院で死亡した。
プライスさん側の弁護士は記者会見で、プライスさんはガソリンスタンドで女性が男性から襲われているのを止めようと仲裁に入り、警察官が到着した時点で既にトラブルは解決していた、と主張している。プライスさんを射殺した警察官・ルーカスは既に殺人罪で起訴されているが、テキサス州警察当局は「調査の結果、ルーカス氏の行動が客観的に見て合理的ではなかった」という見解を示しているそうだ。
事件の詳細はまだ分からない。裁判はこれからだ。しかし、アメリカで全国的な抗議行動が盛り上がる程、白人警察官による黒人への暴力や殺人が慢性的に起きているのだから、殺されるかもしれないと感じた激しく抵抗したり、警察の立場から見て合理的でない行動を、疑われた黒人男性がとるのはそれ程不思議ではないのではないか。
9/15に毎日新聞は、日本語のSNS投稿の中には「BLMは極左暴力集団でテロリスト」「BLMは米国での差別横行を強調する中国共産党のプロパガンダ」「BLMはアジア人の差別については何も言わない」など、BLMへの激しい攻撃も少なくなく、「黒人優遇運動をテニスに持ち込んだ」「テロリスト支持のプロパガンダ」などとする、BLMの支持を明確に示した女子テニス・大坂選手への批判も少なくない、という記事を掲載した。
BLMたたく日本語SNS 大坂なおみ選手にも矛先 「権力者の言葉」あふれ - 毎日新聞
前述のジョナサン プライスさんが射殺された件について、ハフポストの記事を引用して「BLMを嘲笑う人にとってこんなことが何度起きようが、それは捏造や誇張の類で、警察に射殺されるには理由があった筈、という認識になるんだろう。その理由が何かは調べもせず。ない理由は見つかるはずもない」 とツイートしたところ、自分のところにも反BLMを示すリプライが2つ程あった。
警官は起訴され、法のもとに裁かれる。BLMを正当化する理由にはならない。
— 中野英二 (@Ednakano1958) October 7, 2020
警官は法の下に処罰を受けますが、BLMはそもそも無法者の集まりですしシンパも誰一人とて処罰しようとはしませんからね
— ゲドニー (@OGSpg2QOv09tGMW) October 8, 2020
嘲笑われて当然
確かに警察官は法で裁かれる。だが、今まで果たして妥当な裁判と判断が示されてきたと言えるか。自分には全くそうは思えない。また、もし今までも同種の事件全てで妥当な裁判と判断が示されてきたとしても、殺された人は返らない。しかも、何故同種の事件が何度も起きるのか、ということを全く度外視している。BLM支持者が不法な行為に及んでも誰も処罰しない/されない、とする根拠も全く分からない。
BLMは黒人差別への抗議である。勿論、抗議の中で暴力行為に及ぶ者もいるだろう。しかしそもそも抗議の大半は穏健だ。そしてもし抗議に一部暴力があったとしても、それでも差別は許されない。彼らはなぜそんなにしてまで黒人への差別や蔑視をないことにしたいんだろう。彼らがやっていることは、Whataboutism だ。日本語にすると、そっちこそどうなんだ主義 である。論点を自分に都合よくすり変えており、BLMに関する話をリプライしているが、厳密に言えば、自分がツイートした元ツイートとは関係のない、彼らが言いたいことを言っているに過ぎない(そっちこそどうなんだ主義 - Wikipedia)。
ハフポストは昨日こんな記事も掲載した。
バービー人形が、人種差別を語り合う「差別を目撃したら、黙っていてはダメ」 | ハフポスト
これは、2019年に60周年を迎えた、マテル社の世界一有名な着せ替え人形・バービーの公式Youtubeチャンネルに投稿された、「バービーとニッキ―が人種主義について話し合う」と題した動画の解説記事である。
Barbie and Nikki Discuss Racism | Barbie Vlogs | @Barbie
ハフポストの記事の冒頭でも取り上げられている、
誰かが差別されているのを目撃したら、その人のために声を上げよう。黙っていたら何も変わらない。みんなで力を合わせれば、大きな変化は起こせる
は、10/7の投稿でも再び取り上げた、 AC:公共広告機構のCM「知らんぷりより、ちょっとの勇気」が言っている、「いじめを傍観してはならない」と同じことだ。前段で取り上げたリプライのようにいい加減なことを触れ回るようなことをしてはならないのは当然で、傍観も実際には攻撃する側への加担になる、ということを決して忘れてはならない。
トップ画像は、Photo by Nick Fewings on Unsplash を使用した。