今年は11月下旬なのに、まだまだ暖かいどころか暑い日がある。小春日和とは秋の終わりから冬の始めの、春?と錯覚っさせるような晴天の温かい日を指す表現だが、今年のそれは小春日和ではなく小夏日和の様相だ。それでも北の地域では既に朝夕は季節相応に冷え込むようで、そろそろ日本の冬の風物詩・こたつの季節になってきているのも事実である。
冬になると朝布団からでるのが億劫になるものだが、こたつも同様に、一度入ると出るのが億劫になるものだ。自分などは、家のトイレに空調がないのでトイレに行くのも我慢してしまう。だからこたつに入る前にはトイレを済ませ、つまむものや飲み物も充分に用意し、万全の準備を整えてからこたつに入る。大学の同級生に、こたつから出ずにオンラインRPGをやる為に、こたつの上にモニターとキーボードを常設していた友達がいた。彼は生活の半分をこたつで過ごしていたと言っても過言ではない。彼はさながらヤドカリ人間のようだった。
実体験もなく取材や調査もせず、有名人や芸能人のテレビやラジオ、ネット配信などでの発言を文字起こししただけで考察も指摘もない記事は、コタツに入ったままでもお手軽に書ける内容の乏しい記事、という意味で、コタツ記事と呼ばれている。トレンドブログやまとめサイトと言われるようなWebサイトや、スポーツ紙の記事でしばしばみられる手法の記事である。
政治系ライターの平河 エリさんがこんな風にツイートをしていた。
政治系記事、読まれる(バズる)かどうかはタイトルとタイミングにほぼ比例するのでクオリティに関係しないんですが、
— 平河エリ | Eri Hirakawa (@yomu_kokkai) November 21, 2020
バズると読まれてしまうので、クオリティが低いとバレるという結構厄介な構造。
とにかく機械的にタイミングとタイトルだけでPVを稼ぐまとめメディア的構造はものすごく合理的なんですよね。別に炎上しても商業的にマイナスにならないし。
— 平河エリ | Eri Hirakawa (@yomu_kokkai) November 21, 2020
なぜなら、再度断言してもいいですが、政治記事にとってバズるかどうかはクオリティに関係ないからです。
平河さんの分析が全面的に肯定できるかどうかは定かでないのものの、見出しかタイトルだけしか読まない人は決して少なくないし、昨今SNSで記事を読まずにシェアする人も多く、平河さんの主張は不自然・強引・不誠実とは言い難い。また平河さんはこたつ記事について言及しているわけではないが、芸能やスポーツ関連だけでなく、政治関連の記事でもこたつ記事というのは間違いなくある。つまり、こたつ記事でも見出し・タイトルさえ上手くつければそれなりに読まれる状況が広がっていると言えるだろう。
8/21の投稿で指摘したように、近年は所謂ゴシップ系のメディアにとどまらず、大手メディアにもこたつ記事が増えている。
このブログの各投稿のトップ画像は、その大半がクリエイティブコモンズライセンス等の転載・改変が許された画像が元になっている。だが、場合によってはその類ではない画像を元に加工する場合もある。厳密にはアウトなのかもしれないが、個人的には引用や風刺として許される範囲だと考えており、風刺にすら値しないような用い方や無加工での転載は基本的にしないし、止む終えずする場合は最低限出典を明記するようにしている。
「厳密にはアウトなのかもしれないが」と書いたのは、引用と転載の線引きの問題などがあるからだ。引用とは合法的な無断転載のことであるが、全ての無断転載が引用に当たるわけではなく、一定の条件を満たすと引用として認められる。その定義については 引用 - Wikipedia などで解説されている。その要件の一つに
- 引用するには目的(必然性)が必要であり、それに必要な量しか引用してはならない。
- 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
というのがあり、つまり引用部分の分量がオリジナルな主張の分量を超え、引用部分が主体になってしまうような場合は引用が認められず、無断転載と判断されかねない、ということだ。
こたつ記事は、有名人や芸能人のテレビやラジオ、ネット配信などでの発言を文字起こしするものであり、一応文字起こしという作業が発生している為、そのような行為が無断転載に該当するのかと言えば、必ずしもそうとは言えないかもしれない。しかし更に酷く、有名人や芸能人がブログやSNSでああ言っていますこう言っていますと、他者のネット投稿をほとんどコピー&ペーストして書くだけの記事は、コピペ記事と呼ばれる。コピペ記事はコピー&ペーストした部分の方がその記事のオリジナルな部分よりも多く、基本的に引用ではなく、その出典を明記していたとしても無断転載に当たる。
コピペ記事はこたつ記事同様に、昨今はトレンドブログやまとめサイト、そしてスポーツ紙の記事などでしばしば目に付く。SNSやブログ投稿を紙メディアの記録として残すのなら全く無意味とはいえないし、本人が消す恐れのある投稿をアーカイブとして残すという風に考えれば、全く言語同断とは言えないと自分は考えるが、それでも現在の法律上は正当な行為とは言い難いし、アーカイブではなくメディア・報道を自称するなら、少なくとも考察か検証を添えることが必要になるだろう。
前述のように、8/21の投稿で近年は所謂ゴシップ系のメディアにとどまらず、大手メディアにもこたつ記事が増えていると指摘したが、昨日話題になっていた毎日新聞の
霞が関の20代、大量離職 河野氏「4倍」に危機感 - 毎日新聞
という記事は、こたつ記事どころかコピペ記事だった。しかもスクリーンショットからもわかるように、毎日新聞はこの記事を有料記事にしている。無料記事ならまだしも有料記事ということは、端的に言って、
毎日新聞はコピペ記事で金を稼いでいる、他人の褌で相撲を取っている
と言っても過言ではない。記事の全文を引用することは果たして引用に当たるのか、という話もあるだろうが、この記事がコピペ記事かどうかは全文を見なければ判断できないので、全文転載でも引用に該当するという考えに基づいて全文転載することにする。
河野太郎国家公務員制度担当相は18日付の自身のブログで、中央省庁の幹部候補で「キャリア」と呼ばれる20代の国家公務員総合職87人が昨年度に自己都合退職したと明らかにし、「6年前より4倍以上に増えている」として危機感を示した。「国家公務員の働き方改革を進め、霞が関をホワイト化して、優秀な人材が来てくれるような努力をしっかりと続ける」などと強調した。
河野氏は自己都合退職した20代の総合職の人数は、2013年度21人▽14年度31人▽15年度34人▽16年度41人▽17年度38人▽18年度64人--と説明。内閣人事局のアンケート結果を引用して「30歳未満の国家公務員で『辞めたい』と考えている者が男性で15%、女性で10%に達している」と紹介。「もっと自己成長できる魅力的な仕事につきたい」「長時間労働で仕事と家庭の両立が難しい」などが辞めたい理由に挙がっているとした。【田辺佑介】
見れば分かるように、河野のブログの記述からの転載が記事の大半をしめており、それに対する考察もなければ、示されていたブログの数字の検証もない。これをコピペ記事と言わずして一体何をコピペ記事と言おうか。
昨今メディアが考察も検証もなく、政治家がああ言いましたこう言いました、野党が追及しました、与党が反論しました、等としか書かない記事があまりにも多く、最早報道機関の体裁をなしていない。考察も検証もない記事は単なる権力の広報の側面が強く、それをするのは報道機関ではなく広報機関である。
毎日新聞はこのところ、少しずつ政府の振舞いに疑問を呈す記事が増えているようにも思えるが、それでも今もこんな記事が掲載されるのが現状だ。
トップ画像は、File:こたつ (3251928073).jpg - Wikimedia Commons を加工して使用した。