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コロナ対策でギャンブルするの?

 今後1~2週間が瀬戸際、という話が話題になったのは今年の2月のことだった。今は分科会と呼ばれている国のコロナ対策における専門家会議が、「新型コロナウイルス感染拡大のスピードを抑えられるかどうかは今後1-2週間で決まる」のようなニュアンスで、2/24に「この1~2週間の動向が国内で急速に感染が拡大するかどうかの瀬戸際」と表現した。

「1~2週間が瀬戸際」 専門家会議が見解 - YouTube

「今後1~2週間が瀬戸際」国の専門家会議が見解示す | NHKニュース

 因みに、NHKの記事には「▽医療機関で感染を広げるリスクを減らすために、かぜや発熱などの軽い症状の場合は外出せず自宅で療養すること、▽かぜの症状や37度5分以上の発熱が4日以上続く場合、強いだるさや息苦しさがある場合は、都道府県に設置されている「帰国者・接触者相談センター」に相談するよう(国の専門家会議は)呼びかけています。」ともある。だが5月に当時厚労大臣だった現官房長官の加藤は国会審議の中で、37.5度以上の発熱があっても4日は病院に行かずに自宅で待機、というのは「目安ということがですね、何か相談とか受診の一つの基準のように、われわれから見れば誤解ですけれども」と発言した(厚労相「誤解」発言に批判相次ぐ 混乱は国民や保健所のせい?:東京新聞 TOKYO Web)。全く無責任な男が今官房長官を務めているのが日本の現状だ。
 更に付け加えると、インターネットアーカイブを見れば分かるように、NHKはこの記事を一度削除・又は非公開にした。加藤の答弁に合わせて、関連記事を削除・非公開にしていた懸念がある。

 この時示された2週間というのは、何か根拠があって示されたものではなく、かなり曖昧なものだったと言わざるを得ない。朝日新聞の記事

感染防止「瀬戸際」いつまで 専門家会議9日まで?首相は18日まで? 新型コロナ:朝日新聞デジタル

の表を見ても分かるように、専門家会議が1-2週間が瀬戸際としたのは2/24、そして安倍が1-2週間が瀬戸際と言ったのはそれから9日後の3/4である。これだけでも既に1週間以上のズレが生じているし、大規模イベント自粛要請期間、全国一斉休校の期間を見ても全く期間がばらばらだ。「ど素人でも論理的に考えてどうしても解せない新型コロナウイルス感染症対策専門家会議による見解|岡部 健|note」というブログ投稿でも指摘されているように、安倍は3/4だけでなく、3/2にも1-2週間が瀬戸際、3/5に今が正念場と言っている。
 因みに当時官房長官だった現首相の菅は、「厳格に日付を踏まえたものではなく、幅広にとった」と言っていたことからも、1-2週間というのがいい加減な話だたことは明白だ。

瀬戸際2週間「幅広にとった」/菅官房長官 定例会見 【2020年3月4日午後】 - YouTube

 瀬戸際とは、成功か失敗かの分かれめ。安危・生命など、運命がきまる重大な分岐点、を指す表現である(瀬戸際とは - コトバンク)。また、緊張を煽ることにより交渉相手に譲歩を迫る政治手法のことを瀬戸際政策と呼び(瀬戸際政策 - Wikipedia)、そのような手法を多様する北朝鮮の外交は瀬戸際外交と呼ばれている。
 専門家会議や安倍らが瀬戸際だと言った2週間が過ぎても、日本での感染拡大は収まらなかった。4/3になるとコロナ対策担当大臣の西村が、

“瀬戸際の瀬戸際の状況” 新型コロナで 西村経済再生相 NHKニュース

少しでも気を緩めれば、いつ感染拡大してもおかしくない、瀬戸際の瀬戸際が続いている状況

と、今度は「瀬戸際の瀬戸際」などと言いだした。これは緊急事態宣言を行うかどうかについて問われた際に示した見解で、ギリギリ持ちこたえている瀬戸際の瀬戸際だから緊急事態宣言は今のところ必要ないというニュアンスだった。

 しかし結局、その4日後の4/7に政府は緊急事態宣言を出した(新型コロナで緊急事態宣言、7都府県に5月6日まで-安倍首相 - Bloomberg)。それから2週間後の4/21、NHKが

専門家「これから2週間ほどが大きな分かれ道」新型コロナ NHKニュース

という記事を掲載しており、「今後、2週間ほどの推移が、緊急事態宣言に伴ってわたしたちがきちんと行動変容できたのか、対策の評価が下る重要な期間となるだろう」と東北医科薬科大学の賀来 満夫特任教授が述べたことを以て、そのような見出しを付けている。
 この頃になると、一体いつまで瀬戸際の2週間が続くんだ?という揶揄がかなり広まっていた。確かに4/25日前後をピークに新規感染者数は一度減り始めたが、6月下旬には再び上昇に転じ、その後は少ない時期でも4月のピークと同水準の新規感染者数が続いている為(新型コロナウイルス感染症まとめ - Yahoo! JAPAN)、どう考えても政府の当時の瀬戸際政策は失敗に終わったと見るのが妥当だろう。

 前述のコロナウイルス感染症まとめのページを見ても分かるように、2020年11月現在、明らかにこれまでで最大の波が日本を覆っている。これに関して、国の専門家会議改め分科会や、担当大臣の西村が今度は「勝負の3週間」などと言いだした。

分科会「3週間強い対策を」|NHK 首都圏のニュース

西村経済再生相「この3週間が勝負だ」新型コロナ対策強化 新型コロナウイルス NHKニュース

この3週間がまさに正念場であり、勝負だ。それぞれの地域で対策を強化していただいており、この期間で、感染拡大を抑制していきたい

  一体あなた達は過去最大に新規感染者数が増えるまで勝負せずに一体何をしてきた?7月に新規感染者数が再び増加に転じたのに「旅行で感染は増えない」などとして旅行促進政策を始め、その後8月中旬以降一旦減少には転じたものの、4月のピークと同程度の水準を割らなくても、そして10月下旬に再び上昇に転じても旅行促進政策を止めず、具体的な対策も行ってこなかったくせに(11/23の投稿)、今更今後3週間が勝負だ?強い対策が必要だ?よくもそんなことを平然と言えるものだ。無責任にも程がある。
 瀬戸際と再び言えば揶揄されると思って、「勝負・成否などの分かれ目」と説明されることもある瀬戸際の代わりに勝負という表現を用いたのだろうが、一か八かで感染症対策をやっている、と言っていることにもなることを分かっているのだろうか。つまり今の分科会なる組織や政府の感染症対策はギャンブルだと言っているも同然だろう。そして何かにつけ(国民の気が)緩んでいる、自治体に・国民に対策強化をお願いするなど、人任せ、人の所為な感覚が滲み出ている。

 こんな調子でよくも「東京オリンピックをコロナに打ち勝った証に」などと言えたものだ(首相 五輪・パラ「コロナに打ち勝った証」|日テレNEWS24)。首相や政府関係者が行き当たりばったりでしかなく、願望に基づいてのみ意思決定を行っていて、中期的な見通しさえないことがよく分かる。

 トップ画像は Photo by DEAR on Unsplash を加工して使用した。

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