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報道機関のふりをしている日本のメディア

 トランプの酷い中継を止めたNBCに比べると日本のメディアとか、在阪の維新べったりとかはメディア面した別物だって思った。というツイートがタイムラインに流れてきて、まさにその通りだと思った。因みにトップ画像は、1990年公開の映画・トータルリコールの1シーンである。


 トータルリコールは、個人的にはそれ程面白い映画ではないと記憶しているのだが、何故かとても記憶に残っている映画ではある。アーノルド・シュワルツェネッガー - Wikipedia によると、

1990年の『トータル・リコール』は当時における史上最高額の制作費が投入された映画であり、その多くは特殊効果を含む美術面と、この時点で1000万ドルを突破した彼の出演料に費やされた。

だそうだ。その翌年公開されたターミネーター2と並ぶシュワルツェネッガー最盛期の、当時の最先端VFXをふんだんに用いた超大作SFアクション作品だ。トップ画像で取り上げたのは、シュワルツェネッガー演じるクエイドが、中年女性になりすまして火星への入国審査を通過しようとしたが正体がバレてしまい、女性の顔が割れてシュワルツェネッガーが姿を現すシーンだ。つまりシュワルツェネッガーがおばさんの「ふりをしていた(Pretend)」シーンである。

 このシーンをトップ画像に選んだのは、日本のメディア、特にテレビが報道機関のふりをした別の何か、ゴシップ紙のようなもの、という印象を、もうかなり前から感じているからだ。今回の大統領選は、英語圏のメディアに比べ日本のメディア、特にテレビが如何に惨憺たる状況かを如実に露わにした。日本の選挙や政治に関しては主に日本のメディア・テレビしか扱わないので、日本メディアがどれだけ腐ってるか分かり難い面もある。だが大統領選に関する報道については、英語圏のメディアと日本メディア、特にテレビ局のレベルの差があまりにも分かりやすく表れている。
 例えば、昨日の投稿でも取り上げた、米主要局が根拠不明の事実と異なる主張を繰り返したとして途中で放送を打ち切った、トランプのホワイトハウスでの会見について、こんなツイートがあった。

放送中に「根拠不明、事実とは乖離している恐れがある」と米テレビ局が注釈を入れ、しかも大半が放送を途中で打ち切ったにも関わらず、TBSが【速報】として、全く注釈もせずにその映像に通訳をつけて報じているという話だ。
 流石に今はもうページ自体を削除しているか、米テレビ局同様に注釈を入れているだろうと思いつつもTBSのサイトを当たってみると、信じられないことに未だに注釈も入れずにそのままページが残っていた。リンク先は今(11/7)の時点のWEBアーカイブ、動画は同サイトに掲載されたものだ。

【速報】トランプ氏が緊急会見「選挙妨害起きている」|TBS NEWS

 TBSは「「不正が行われている」トランプ氏 根拠示さず主張|TBS NEWS」という記事も掲載し、一応「トランプ氏は会見で「明らかに不正が行われた」などと主張しましたが、根拠については明らかにしませんでした」「トランプ氏は深夜にツイッターで、「選挙の立会人が仕事を許可されなかった。この間に受け付けられた票は違法に違いない。最高裁が判断を下すべきだ」と主張。ツイッター社は警告のラベルをつけました」などとしているものの、米三大ネットワークが途中で放送を打ち切る程酷い内容だった、ということは伝えていないし、速報とした記事しか見ない人だっているだろうから、そこへも最低限注釈をしておくのが誠実なメディアとしての、最低限のマナーだろう。しかし明らかにそれをやっていない。 これは、トランプによる事実と異なる主張の拡散をTBSが手助けしているとも言える状況であり、それは間違いなく報道機関のやることではない。
 今日はこんなツイートもタイムラインに流れてきたが、

 「人事のことなのでお答えは差し控える」という答弁を日本のメディアが伝える際に、殆どは首相が(若しくは政府関係者が)ーと述べましたと伝えるだけで、「人事のことなのでお答えは差し控える」という答弁の妥当性が如何に低いか、については軒並み触れない。
 主張などの妥当性に関して何も触れずに、ただただ「ーと述べました」などと伝えることは、嘘や事実と異なる話を拡散することになるケースが少なくない。つまり厳しく言えば、フェイクニュースの拡散に加担することにもなりかねない。なりかねないというか、日本のメディアの大半、特にテレビはほぼ全てが実際にその役割を担っている。

 大統領選報道に限ったことではないが、更に酷いのがフジテレビである。

なぜこんな差別や偏見を厭わない者を有識者かのように起用するのか、全く理解に苦しむ。

 大統領選ではなく日本学術会議の任命拒否問題に関してだが、NHKのこの記事も、NHKが政府や首相の腰ぎんちゃくかのように忖度する姿勢が如実に表れている。

学術会議任命見送り 人文・社会科学系学会220余が共同声明 | 日本学術会議 | NHKニュース

 この記事の要点は、

  • 人文社会系の学問は多様な意見を自由に闘わせる環境でのみ発展する。今回の事態は学問の生命線である『批判的議論』を封じ込め、そんたくする文化を学会にまで持ち込もうとするものであり、到底看過できない(本哲学系諸学会連合委員長/東北大学 野家啓一名誉教授)
  • 研究者だけでなく社会全体の問題で、思想、言論、表現の萎縮や自己規制を招くことになるのではないかと大変恐れている(日本近代文学会運営委員長/青山学院大学 佐藤泉教授)

などのコメントも示しているように、 政府に対して任命しない理由の説明や、6人の任命を強く求める声明に、哲学や文学、歴史学などの研究分野など226の学会が参加や賛同した、ということなのに、見出しには学会が首相や政府に対して強い懸念を示しているというニュアンスは一切盛り込まずに、「共同声明を発した」という体裁になっている。重要なのはどのような声明だったかなのに、それには触れずに声明を発したとしか見出しに書かないのは、NHKがどこを向いているかをよく表している。

 自分は昨年の夏から日本のテレビ報道は基本的に信用できなくなったので、大統領選以前から殆ど見ていない。だから大統領選についても日本のテレビは見ずに、テレビに映すのはYoutubeライブのabcニュースだ。自国メディアが軒並み信用出来ないなんて、なんだか中国人にでもなった気分だ。もっとも中国じゃ当局に都合の悪いニュースは検閲され映らないだろうから、もっと悪い状況だろうが。
 国外メディアの情報を自分で取りにいく人が日本人に少ないのは、英語力の低さがその理由だろう。日本語メディアさえ抑えておけば事足りるわけだから、他国に比べ、権力がプロパガンダがしやすい国であることは間違いなさそうだ。この投稿で示したように、日本のメディア、特にテレビは英語圏メディアに比べかなり体たらくで惨憺たる状況なのだから、日本のテレビしか見ていない人はいつまでも騙され続ける。
 自分が日本に住んでいなければ「ご愁傷様です」と他人事でいられるだろうが、日本に住んでいるとそうもいかない。この状況は何とかしないと、確実にとばっちりを食うことになる。いやもうかなりとんだとばっちりを食っているし、自分にはまだ子どもはいないが、ナチが政権の座に就くことを許してしまった当時のドイツの大人と同様に、自分達の子どもに当たる世代に申し訳が立たない。重いツケを背負わせることになってしまう。


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