1/8に緊急事態宣言が再びなされたが、前回とは違い実質的には飲食店に営業時間短縮を促したに過ぎない骨抜きの宣言である、ということを1/6の投稿で指摘・批判した。前回の緊急事態宣言とは比べ物にならないくらいに新規感染者数も重症化も死者も増えているのに、なぜそれへの対応内容が前回よりも薄いのか。本当に理解に苦しむ。
緊急事態宣言に伴い、官邸は「新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~」というページを更新した。リンク先はWebアーカイブにしておいたので、このページは2020年1/26に公開され、それから何度か更新されてきたことが分かるだろう。このページに書かれている、他の人と充分に距離をとる、こまめな換気をする、マスクを着用する、適切に手を洗うなどは、新型ウイルスに限らず基本的な感染症対策で、確かに重要なことだ。しかし今、このような個人の努力と飲食店の営業時間短縮だけで、果たして深刻な状況を改善できるだろうか。
緊急事態宣言の検討が始まったのは2021年になってからで、それまで首相の菅や周辺は「今はまだそれが必要な状況にない」と言い張っていた。しかし先月・2020年12月の時点で既に新規感染者数は増加の一途を辿っていた。ほぼ毎日のようにそれまでの最高を更新していた。菅や周辺がそれを認めたがらなかったのは、それまで推進してきた旅行や外食促進キャンペーンの失敗を認めたくなかったからだろう。
12/28の新型コロナウイルス感染症対策本部で菅は、
令和2年12月28日 新型コロナウイルス感染症対策本部(第50回) 令和2年 総理の一日 ニュース 首相官邸ホームページ
国民の皆さんには、これまで以上に、マスク、手洗い、感染対策を徹底し、会合を控え、静かな年末年始をお過ごしいただきたいと思います。
と述べていた。そんなことはお願いされるまでもなく、殆どの国民が既にもう約1年以上もやってきたことだ。そのしわ寄せで飲食店や観光業などが苦難にあえいでいたから、感染拡大に繋がるという批判を無視してまで政府は促進策を強行したのではないのか。
この流れを見ていて、
太平洋戦争を始めた失敗を認めたくがない為に降伏できず、本土空襲に備えて竹やり訓練をやった、言い換えれば空襲に竹やりで応戦しようとした戦中ニッポンの再来
としか思えなかった。マスクや手洗いが竹やり同様に全く無力とは言わない。しかしもうそれだけで対応できるような状況にない。何故なら、そんなことはもう約1年も前からやっていることだからだ。つまり状況を改善する為にはもっと別の抜本的な変化を起こす対策が必要だと、少し考えれば分かるだろう。
マスクや手洗いの推奨、多人数での会食回避は意味があるか無いかで言えば、無いとは言えないが、だからと言ってもそれを黙って聞いている必要はない。一体いつからそればかり言い続けているのか、今はそんな心掛けだけでは対処できない状況だ、と批判しなければならない。声を上げなければ、毅然とした態度を示さなければ、菅やその周辺は今後も戦中の標語やポスターのようなことを繰り返し言い続けるだろう。彼らは「空襲に竹槍で応戦しろ」と言っているにも等しいのだから、行儀よく従う必要なんてない。
具体的な対策をせずに「マスクをしろ、手洗いをやれ」としか言わない首相は、感染拡大の責任を国民に擦り付けようとしていると言わざるを得ない。それはトップ画像にも載せた「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」のような話だし、充分な支援や補助がないのは「欲しがりません勝つまでは」だ。決してそんなことは言わないだろうが、具体策のないまま時間が進んでいるので「進め一億火の玉だ」を目指している、と言っても過言ではないだろう。
既に国内の死者は4000人を超えた。最初の死者の確認から1000人までは158日間、1000人から2000人までは125日間を要した。2000人から3000人に到達するまでは1カ月かかったが、そこから4000人まではわずか18日間だった(新型コロナ、国内の死者4000人超える 3000人からわずか18日間で - 毎日新聞)。そして昨年来多くの事業主が廃業を余儀なくされ、この状況で多くの人、特に非正規労働者が職を失っている。しかし日本のコロナ危機対応は先進国で最低という調査結果が複数示されている。
- 企業支援評価、日本が最低 失業懸念は最多―民間6カ国調査:時事ドットコム
- 安倍首相のコロナ対応、日米欧6カ国で「最低」 国際世論調査、経済支援策に不満大きく:東京新聞 TOKYO Web
- 政府の「次の感染拡大」への備え、日本が最低評価―トップはドイツ・6カ国調査 nippon.com
つまり、支援の少ない日本でコロナウイルスによって命を落とした人、廃業や失業を強いられた人達は、「散ってかひある命なりせば」のように、お国の為に犠牲にされたと言っても過言ではないだろう。
「戦前・戦中スローガン集」には、そのタイトルの通り戦中の標語が複数紹介されている。特に A.国民国家精神総動員タイプ の項目で挙げられている標語は、今の政府の姿勢にとてもよく似ているものばかりだ。過去を省みないと再び同種の失敗を繰り返すことになる。
先週末にTBSが行った世論調査では、支持率が41.0%、不支持率が55.9%だった。何故この状況で支持できるのか、自分には全く理解できない。しかし理解出来なくて当然なのだ。なぜなら支持理由のトップは「特に理由はない」(41.6%)で、つまり現政権の支持者の半分弱は、何故支持しているのか本人たちもよく分かっていないのだから。
この調査に不備がないなら、国民のおよそ4割が過去の失敗を省みない人達であることになりそうだ。そんな国がこんな状況に陥るのはある意味必然だろう。