ボクシング 井岡 一翔選手の刺青問題、JBCが設ける「刺青など観客に不快の念を与える風体の者は試合に出場できない」という規則が如何に差別的か、ということについて1/10の投稿で書いた。それについて一部の著名人の示した見解が、昭和で止まってしまっているということについても触れたが、そこへ新たに元サッカー日本代表 内田 篤人が加わった。
しかも内田が示した主張は、1/10の投稿で触れたどの著名人の主張よりも低レベルだった。内田は1/17のフジテレビ ワイドナショーにゲストコメンテーターとして出演し、同事案を扱ったコーナーで
本当に必要なら、生まれてくる時に(タトゥーが)入ってるんじゃないですか?(だから)多分タトゥーはいらないんじゃないですかね
と発言した。次の映像はそのコーナーの一部始終である。内田の発言はコーナーの序盤にある。
「生まれてくる時に入ってないからタトゥーは必要ない」と言うなら、生まれてくる時にないものはタトゥー以外も全て必要ないのではないか。犬や猫、それ以外も、ラッコや類人猿などほんの一部を除いて、大半の動物は道具を使わない。彼らは家も服も、そして食料を過熱することも必要とせずに生きている。内田はなぜ「生まれてくる時にないものは必要ない」と言いながら、生まれてきた時には着ていなかった服を着て、カメラの前でそう言っているのか。彼が常に全裸で屋外生活し、一切の道具を使わずに素手のみで食料を調達し、火も使わずに生食するという、かなり原始的な生活を実践した上で「生まれてくる時にないものは必要ない」と言うなら、それなりに説得力もある。しかしそんな事実は一切なく、彼の言葉には全く説得力がない。
付け加えれば、なぜ共演者たちは誰もそう指摘しないのか。内田がそう述べた後に大橋 美歩が「おちゃめな方ですね(笑)」と発言したが、見識を疑う。もしかしたら彼女は皮肉を込めたつもりかもしれない。しかしそんな風には全く見えなかった。
内田は当該発言の前にこんなことを言っている。
(ドイツ時代の)僕のチームは30人前後いましたけど、タトゥーしてないのが2、3名。 なので、僕の中ではそんな違和感はないんですけども、まぁ日本ってタトゥーはちょっと良くないなって感じあるじゃないですか。(反社みたいなイメージに)繋がる感じが。 それが分かっていて入れるなら、そうやって言われるのをしょうがないじゃん(と)、それが分かってるなら入れてもいいけど、言われて何か言い返すってのはよくないなぁとは思います。
「自分にとって刺青は違和感がない」と言っている内田は、ドイツのチーム在籍時に、タトゥーを入れた同僚を前に「生まれてくる時に入ってないからタトゥーは必要ない」と言えただろうか。もし言えたなら、チーム内で相当嫌われたのではないか。
「反社のイメージがあるのに刺青を入れたんだから、反社っぽいって言われるのは仕方ない。つべこべ言うな」というのも本当に酷い。反社会的勢力の定義に刺青を入れているという定義があるのか。そんなレッテル貼りが許されるか。「日本では」なんてのは今のご時世通用しない。多様性の否定・偏見以外の何ものでもない。外国人と日本人で認識や対応を変える、つまり出自を理由に認識や対応を変えるのは、一部の例外を除いて差別である。物分かりのよい振りをして偏見を撒き散らすのは本当に性質が悪い。
更にその後も内田は、
でもこれタトゥーしてる人が増えないとルール変わらないじゃないですか。今はあーだこーだって言えないですよね。(タトゥーを入れること自体は)問題ないですけども、それのルールに関してあーだこーだって言うのは間違ってるとは思います
とも言っている。もうハッキリ言ってアホとしか言いようがない。何故ならこの部分だけで大きな矛盾があるからだ。刺青を入れる人が増えないとルールが変わらないと言いつつ、ルールに関してつべこべ言うなと言っている。理不尽なルールや偏見があるから日本人の多くは入れたくても刺青を入れることを躊躇する。だから入れる人が他地域ほどには増えない。そしてルールに異論を呈す人がいなければ、どうやってもルールは変わらない。
つまり理不尽でもルールに従えと言っている。多分内田は、自分が何を言っているのかもよく分かっていない、「募ったが募集はしてない」などと言ってしまうような人と同じ様なタイプなのだろう。何故フジテレビは、そんな者をゲストコメンテーターに起用したのか。そして収録番組にも関わらず、何の注釈もなく放送したのか。本当に理解に苦しむ。
端的に言って、スポーツ選手は脳筋って言われるようなことを言うなよ、という感しかない。そして、せめてスパイクを使わない素足のプロサッカー選手になってから、「生まれてくる時にないものは…」と言えとしか言いようがない。