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女性だから○○が妥当でないのと同時に、男性だから○○も妥当ではない

 英語で男性は male 又は man だが、女性は female 又は woman だ。スペイン語では hombre / mujer、フランス語だと homme / femme、ドイツ語は mann / frau などであることを考えると、英語における男女の表現は、女性が男性側に従属している印象が強い。因みに日本語も 男 /女 と表現するが、一方で 夫 / 夫人 のように英語のように女性だ男性に従属している印象の表現もある。


 一応断っておくが「だからそのような表現は好ましくない」とまでは、自分は思わない。「好まない人が別の表現を使えばよい」と考えている。表現が変われば意識も変わる、という考えは否定しないが賛成もしない。そう考える理由は、

これらの投稿で書いているので割愛する。

 こんなツイートが昨夜タイムラインに流れてきた。ロックバンド・ソウルフラワーユニオンの公式アカウントのリツイートだった。このアカウントは、スタッフがツイ―トすることもあるようだが、眺めている限り、バンドのフロントマンでボーカルの中川 敬さんによるツイートがその大半を占めている。中川さんが当該ツイ―トをどんな風に受け止めてリツイートとしたのかは分からないが、とても興味深いものを感じた。

 このツイートを評価するには、引用されているツイート、そのツイートの前提にある事象を把握する必要がある。 このWADAさんというアカウントは行政への開示請求を積極的に行っていることで知られており、彼の開示請求によって広く知られることになったことも決して少なくない。

このツイートの「この人」が誰を指しているのかは定かでないが、元防衛大臣の自民 稲田が次のようにツイートしたことへの評価について、であることは明白だ。

 このツイートのリプライを見ると、#検察庁法改正案に抗議します というハッシュタグを盛り上げた笛美さんというアカウントが、しきりに稲田を擁護している。彼女が稲田の支持者なのかは分からないが、これまでの彼女のツイ―トなどから判断すると、稲田云々以前に自民党の支持者ではなさそうだ。
 彼女は恐らく #わきまえない女 という森の女性蔑視発言へのカウンター行動を推す中で、稲田のこのツイートを是々非々のような感覚で擁護しているのだろう。彼女が反論しているツイ―トの中には、確かに森の女性蔑視発言と大差ないようなものもあって、彼女の反論は決しておかしくはない。

 このツイートのように笛美さん以外にも同様の見解を示す者が散見されるが、稲田のこのツイートを以て、彼女を #わきまえない女 の一人としていいのか? に自分は強い疑問を感じる。

 何故なら、稲田は防衛大臣当時に、自衛隊日報問題について、政府の意向に迎合して隠蔽を認めなかったり、発覚を誤魔化そうとした人物だし、「武力衝突であって戦闘はなかった」という言葉遊びをやり続けた者でもある。それの一体どこが「わきまえない女」なのか。わきまえる女の典型ではないか。
 更には、これも防衛大臣当時、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議での演説の中で、出席していたオーストラリアとフランスの国防担当大臣も女性であったことを前提に「見たら分かるように、(私たち3人には)共通点がある。同じ性別で、同じ世代で、全員がグッドルッキング(容姿が良い/美しい)」と発言し、フランスのルモンド紙の女性記者に「大臣の容姿の善しあしなんて誰も気にしていない。女性である大臣自身が、女性差別的な発言をしたのに驚いた」と指摘されている。 国際的な会議で容姿や年齢に触れることは、あってはならないことだ(稲田朋美防衛相「私たちは容姿が美しい」スピーチは笑えない | ハフポスト)。
 しかも稲田はこれに懲りておらず、2019年4月にも福島県内での集会にて、「自分と森さん(森雅子法相)の共通点は2人とも美人ということ」と発言している(政治家のジェンダー差別発言ワーストは? 麻生太郎氏ら8人がノミネート | ハフポスト)。そんな人物がフェミニズムや女性の権利向上を口にしたとして、一体どこに説得力があるだろう

 確かに稲田は、昨年あたりから選択的別姓に理解を示すなど(身内からの「変節」批判 自民・稲田氏が語った理念とは:朝日新聞デジタル)、これまでの、教育勅語を賛美するなど((社説)教育勅語肯定 稲田大臣の資質を問う:朝日新聞デジタル)伝統的家族観を信奉していた姿勢から変化しているようにも見える。だがしかし、憲法14条が、人種、信条、性別、社会的身分、門地によって差別されないとし、24条では両性の本質的平等を明記しているのに、「女性の政治家の割合が極めて低い現状をみると、憲法14条を改正してクオータ制を入れることも考えるべきではないか」と主張するなど、女性の地位向上を改憲の道具にしようとしている感も強い(「女性議員増やすため14条改憲」稲田氏発言が波紋 「クオータ制」自民党内も否定的 - 毎日新聞)。
 つまり、これらのことから考えて、稲田が「わきまえない女」を自称したところで、それは単に風見鶏的に自称したに過ぎない、と評価されても仕方ない側面が多いにある。言い換えれば、WADAさんのツイートの評価を「あなたのこのツイートはムラ社会そのもの」とか、「ベテランの革新系/リベラルの"男性"のおごり」のように批判するのには、あまり妥当性を感じられない。男性/女性という属性にばかり注目した感情的な批判のように思える。

 しかし一方で、WADAさんもWADAさんで、

のようなツイートもしており、言いたいことは分からないでもないものの、言葉が強すぎるきらいがあり、だから話の本質が、稲田が「わきまえない女」を自称したこと、から男と女という属性ばかりに注目した別のポイントへどんどんズレていってしまっているとも思う。

 これは、白人と非白人の間における論争などでもしばしば見かける。ヒートアップすると人は本質よりも属性を重視しがちなのかもしれない。特にツイッターでは、それぞれの主張が144文字かそれ以下に小間切れになるので、話が脱線しやすいし、話をワザとすり替えるのもしやすいので、そういうことがしばしば起きる。この話題に関わる全ての人がもっと冷静にならないと、余計に分断を煽ることになりかねない。
 こういうのを見ていると、森の問題は森だけの問題ではなく、そして男性だけの問題でもなく、全ての人の心に森が潜んでいることがよく分かる。女性だから○○が妥当でないのと同時に、男性だから○○も妥当ではない、ということを肝に銘じておかないと木乃伊取りが木乃伊になる。


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