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日本のメディアのレベルの低さ

 東京オリンピック組織委会長・森 喜朗の女性蔑視発言に関しては昨日の投稿でも書いた。森は昨日、その発言に関する謝罪・釈明する体裁の会見を行った。昨日の投稿でも触れたように、一部のメディアは「謝罪会見」「発言を撤回し謝罪」などと報じていたが、果たしてそれは謝罪したと言える内容だったのか。


これを見て、果たして「謝罪会見」「陳謝した」と思える人がどれだけいるだろう。これを謝罪会見とか陳謝したとか伝えるのは忖度以外の何ものでもない。ハフポストはこの会見を「森喜朗会長、謝罪のはずが逆ギレ会見。「最近、女性の話は聞かないからあんまりわかりません」【問題発言リスト】 | ハフポスト」という見出しで伝えている。本文の中では

SNS上では森会長の会見を「謝罪会見ではなく逆ギレ会見」と批判する声が相次いでいる。

としており「SNSでは逆ギレ会見と言われているよ」という体裁で、森の謝罪する者の発言とは思えない発言を「気になる発言」と表現するなど、若干及び腰な傾向もあるものの、見出しでは「森喜朗会長、謝罪のはずが逆ギレ会見」などとその異様さを断定的に伝えている。少なくともそのような論調ですら書けないメディアに、メディアとしての価値はない。

 森はこの会見の後、BSフジのプライムニュースに出演し、「女性入る会議は時間かかる」という趣旨の発言を撤回した経緯について次のように述べた。

まあ、女性の方が増えると時間が長くなるそうですよと、山下さんにご注意申し上げたということで、しかしその話がまあ大きな話題になって、特に国際関係にまで影響してくるということであれば、これは私の話はそこまで細かく外国行って説明するわけにもいきませんからね。 だからこれは私は撤回したほうが早いということで。目の前の大事なオリンピックも近づいてることであるので。そんなことで話題がそちらの話に行ってしまってはいけないので、私はお詫びをして撤回すると。こう申し上げたわけです。

つまり、「女性入る会議は時間かかる」という発言に問題はない。しかし国内外で騒がれているので、いちいち釈明していられないから撤回して詫びてやった、と言っている。人によって受け取るニュアンスは微妙に違うだろうが、この受け取り方が全く見当違いとは言えないはずだ。
 世の中には、何かにつけて都合が悪くなると「切り取りだ!」という人が出てくるのだが、森の当該発言の前後はFNNプライムオンラインのサイトで確認できる。FNNのサイトが動画を削除する可能性が否めないので、当該パート部分の全部もアーカイブしておく。

『「東京五輪必ずやる」森会長に問う発言真意 感染抑止と観客動員は』【前編】


 この件を伝えるフジテレビのニュースがまた酷い。全く嘘を伝えているとは言えないが、明らかにこの森の発言のまずい印象を和らげようとしている。

森会長「大事な五輪も近づいているので」 謝罪に至った経緯説明

 フジテレビは、この森の発言を

森会長は、謝罪に至った経緯を「その話が大きな話題になって、国際関係にまで影響してくるということであれば、目の前の大事なオリンピックも近づいているので、話題がそっちにいくといけないので、わたしはおわびをして撤回すると申し上げた」と説明するとともに、発言については「女性を蔑視する意図で申し上げた訳ではない」とあらためて釈明した。

 としている。釈明とは「自分の立場や考えを説明して、誤解や非難を解き、理解を求めること」である(釈明とは - コトバンク)。確かに森自身は釈明したつもりになっているだろう。しかしこれは誤解や非難を解くに足る充分な説明だろうか。理解するに足る説明だろうか。そういう意味で言えば、これを釈明と表現するフジテレビは、森のこの説明をそれで充分だと考えている、ということだ。
 ならばフジテレビはメディアとしてレベルが低いと言わざるを得ない。

 レベルの低いメディアはフジテレビだけではない。NHKは「森会長発言「大会への反感心配」|NHK 首都圏のニュース」という記事で、

森会長は、さらに4日夜出演したフジテレビのBS番組「プライムニュース」で「女性を蔑視する意図はなかった」と改めて釈明しました。

としている。記事の趣旨はIOC:国際オリンピック委員会が「(森)自身の謝罪によって、この問題が収束したと考えている」と表明したことを伝える内容であり、当該部分はIOCがそう判断する材料という体裁で書かれている。しかしNHKはフジよりも森の当該発言内容を伝えずに「釈明した」とだけ書いており、フジよりも更にレベルが低いと言えるのではないだろうか。
 スポーツ新聞のデイリーも「森喜朗会長 女性蔑視発言の謝罪会見は「撤回した方が早い」/スポーツ/デイリースポーツ online」という、番組で○○と述べたとしか書かない所謂「コタツ記事」の中で、

問題について質問されると、「女性を蔑視するとか、そういうことを申し上げていたわけじゃない」と釈明。「目の前の大事な五輪も近づいてるので、話題がそっちにいってしまうといけない。おわびをして撤回すると申し上げた」と改めて説明した。

としており、NHKと同レベルか更にそれ以下と言ってもいいだろう。
 一方でハフポストは「森喜朗会長「撤回したほうが早い」 発言撤回の理由をテレビ番組で説明 | ハフポスト」という記事を掲載し、番組での発言内容を細かく掲載、そして最後に

同日に行われた謝罪・撤回の会見も「逆ギレ」「居直り」のような態度だったことに加え、その理由が「撤回したほうが早い」だったことは更なる失望や怒りを生んでいる。
Twitter上には「言葉だけの謝罪で反省も何もない」「お詫びと撤回の実質的否定」「もう本当に黙ってお辞めになって」「酷すぎて言葉もない」など、厳しい声が多く上がっている。

と記事を結んでいる。ハフポストの記事もデイリーの記事同様に記事の体裁は、取材をしていないコタツ記事ではあるが、釈明したとか謝罪したとか陳謝したという表現はなく、そして、説明に全くなっていない、ということも示唆している。個人的にはそれでもまだ論調が緩い気がするが、フジやNHKやデイリーに比べればまだマシだ。

 他にもまだ書きたいことはあったのだが、結構長くなりそうなので、それはまた明日に回すことにする。毎日毎日、こんなことを書いていて本当に嫌気が指している。「なら書かなければいいじゃんwww」という声もありそうだが、記録をしておかないと人は簡単に忘れる。だから嫌気が指そうが記録しておく必要がある。

 

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