どうやら日本政府は、新型コロナウイルスの感染者数が再び増加に転じているのに、オリンピック・聖火リレーやりたさで緊急事態宣言を解除するようだ。朝日新聞は「菅首相、21日宣言解除を表明 5本柱で「再拡大防ぐ」」などと報じているが、5つの柱とやらには目新しさも具体性も感じられない。
テレビを殆ど見なくなったので、TVCMがどうなのかは定かでないが、WEB広告を見ている限り、オリンピックスポンサーであることを謳う広告を、少なくとも2021年に入ってから殆ど見かけない。もしTVCMも同じだとしたら、もう企業も「オリンピックは出来ない、やっても仕方ない」と思っているということだろう。では一体誰の為に、何の為にそこまでしてオリンピックをやりたいのか。全く理解に苦しむ。
7/15-18に、つまりオリンピックと同じ様なタイミングでの開催が予定されていた、鈴鹿8時間耐久ロードレースの、11月への開催延期が発表された(2021年鈴鹿8耐の延期を鈴鹿サーキットが発表。11月7日にEWC最終戦として開催 | MotoGP | autosport web)。鈴鹿8耐はEWC:バイク耐久世界選手権の1戦に位置付けられている。つまり延期の背景には、7月頃に状況の改善が見込めず、海外選手が来日する、日本が海外選手を受け入れることは困難である、という判断が確実にある。
EWCや鈴鹿サーキットの判断が絶対的に正しいとは言えない。しかし日本で国際的なレースを開催できる状況になく、それが7月頃も変わっていないという予想を立てることは何もおかしくないし、延期や中止はきるだけ早く決めるべきなのは間違いない。鈴鹿8耐の延期は暫定的なもので、昨年の対応に鑑みれば、状況が改善しなければ11月の開催が中止される恐れもある。
東京オリンピックが歓迎されないものになっているのは、決して新型コロナウイルスの所為だけではない。2月にあった組織委会長の女性蔑視発言とその後の対応のまずさ、そして、日本が多様性を無視する国であることが世界に知れ渡ったこともその理由だ(2/26の投稿)。
東京の次の北京大会について、ウイグルや香港などへの中国当局の非人道的行為を理由にボイコット運動が高まる懸念があるが、日本でも、入管が収容者に適切な医療を行わずに死なせる、環境の悪さ、不当な扱いなどによって収容者が自死する事案が相次いでおり、中国と日本の人権意識の低さには、直接的な暴力を振るう虐待を行うか、じわじわと陰険に苦しめる虐待か、程度の差しかない。
「渡辺直美をブタ=オリンピッグに」東京五輪開会式「責任者」が差別的演出プラン | 文春オンライン
3/17に週刊文春がこんな記事を公開した。この件も、森の女性蔑視と同様に複数の海外メディアが取り上げている。日本の人権軽視に拍車がかかった格好だ。最早日本は人権侵害先進国としての不動の地位を築き上げてしまったと言っても過言ではない。
この件に関して、森の後釜として組織委会長になった橋本 聖子は、
(記事の)見出しを拝見し、ショックを受けておりました。容姿を侮辱するような発言や企画の提案は絶対にあってはならないと思います
と述べたそうだ(橋本聖子会長「ショックを受けた」。佐々木宏氏の辞任に謝罪、容姿を侮辱する発言や企画「あってはならない」 | ハフポスト)。だが個人的には「橋本は自分のことを棚に上げるな」としか思えなかった。その理由は次のとおりだ。
- 橋本聖子氏が「浅田真央選手に安倍首相とのハグ強要」と報道されたシーン、政府の動画に残っていた | ハフポスト
- 橋本聖子・新五輪組織委会長 “キス&ハグ”過去は許されるのか 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
- 健全なる精神は健全なる身体に宿るか(2019年9/13の投稿)
女性蔑視発言の後釜がセクハラ政治家というのは筋が悪いが、誰にでも間違いはある。寛大な目で見れば、それらはもう6-7年も前のことで、その行為について今更ながら過ちを認めている。だがしかし、今や排外主義や差別・人種民族主義者が好む象徴になってしまっており、そのような事実を差し引いても、そもそも自衛隊旗という軍旗に当たる「旭日旗のオリンピック会場への持ち込みは問題ない」という、オリンピック担当大臣として行った発言に関しては、未だ撤回しておらず、当然間違いと認めてもいない。平和を希求するオリンピックに軍旗が相応しいはずがないのに。
「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証に東京五輪開催」なんて、そう言っている人達以外誰もそう思っていない。アスリートファーストという嘘、復興五輪という美辞麗句、全く杜撰な暑さ対策などもあって、東京オリンピックなど、日本の体たらくを世界中にアピールすることはあっても、開催して得られるメリットは何もない。それらに加えて人権侵害先進国であることもアピールすることになるのだから。