会話は言葉のキャッチボールなんて表現があるように、会話も議論も相手の主張を前提にした返答をしないと成り立たない。相手の言っていることを無視して、自分が言いたいだけのことを言う、言い合うのは、会話や議論とは似て非なるものだ。それは単に言葉を発している、発し合っているだけに過ぎず、会話や議論とは言い難い。
Twitterで議論は出来ない、という話をしばしば耳にするが、果たしてそれは妥当な見解だろうか。ツイッターでだって、言葉のやりとりの参加者にその気があれば充分に議論は成り立つ。確かに、ツイッターはそもそも個人が独り言をつぶやく為に作られたSNSなので、相手の主張があっても、それを考慮せず、時には意図的に無視して、言いたいことだけを言うだけの人も多いが、そのタイプの人は、ツイッター上でなくても大抵同じ様に、自分にとって都合のよいことばかり強調して、自分に都合の悪いことは無視するという振舞いをしているだろう。
つまりツイッターで議論は出来ないではなく、ツイッターにはしばしば議論出来ない奴がいて、言いたい事だけを言ってくる、と言った方がより正確だろう。
例えば、昨日のブログ投稿に関する自分のツイートに対して、こんな引用リツイートがあった。
かなり言葉足らずだが、自分が「7月開催予定だった、バイク耐久レース世界選手権の1戦でもある、鈴鹿8時間耐久レースは、3月の時点で11月への延期が決まった。スプリントレースのアジア選手権では、2019シーズンと比較して(2020はシーズン全体が中止)2021シーズンのカレンダーから日本開催だけが消えている」と指摘し、それが国外からの日本の評価であり、オリンピック開催など馬鹿げている、という風に書いたことに対して、
MotoGP2021シーズンの日本ラウンドは中止されていないが、それは都合が悪いから無視している。国外からの日本の評価を低く見積もり過ぎだ
と言いたいのだろうと察して、
MotoGPは最初からアジアをシーズン後半に配置してるだけ。シーズン頭の予定だったアメリカ/アルゼンチンは無期延期なので、日本だって中止になりかねん。 ARRC鈴鹿は例年6月、8耐は7月、オリンピックと時期重なるし、既に開催なし/延期が決まってるから取り上げたのであり、都合の問題ではないですよ。
と返答したところ、
と返ってきた。厳密に言えば、これは言葉が返ってきただけ、言いたいことを言っているだけで、殆ど返答になっていない。端的に言って、自分から話を振ってきたのに、それに関するこちらの反論を無視している。
まず「アメリカが中止されたから日本も同じになる!」なんてこちらは言っていない。暫定スケジュールがそのまま履行されるとは限らない、ということの根拠として、アメリカ/アルゼンチン戦が延期され、開催日がまだ決まっていないことを例に挙げた。同じ様な状況であれば、日本を含むアジア戦も昨年同様に中止される恐れがある、としただけだ。
そして、8耐延期/ARRC日本戦開催なしはオリンピックと開催時期が近かったので例に挙げましたよ、というこちらの主張は全く無視である。都合の悪い部分は無視し、しかも自分に都合よく歪曲した解釈も示している。
更に、急に出てきた要素に「ワクチンの存在」と「5/9のF1スペイン戦・観客1000人」があるが、それらは論点をスライドさせていることにほかならない。前述の、8耐延期/ARRC日本戦開催なしはオリンピックと開催時期が近かったので例に挙げましたよ、というこちらの主張を、ちゃんと処理した上で新しい要素を持ち出すのなら理解もできるが、それをせずに急に新しい要素を持ち出すのは、論点のすり替えと言われても仕方がないだろう。
一応つっこんでおくと、日本でどれ程ワクチン接種が進んでいるのか、今後どの程度のスピードで接種が進められそうか、それが世界でも最低レベルであることは、誰の目にも明白で、7月までに状況が激変するとは到底思えない。F1スペイン戦だって、オリンピック開催予定なのはスペインではなく日本なので、F1スペイン開催で観客1000人と言われても、だからどうしたとしか言いようがない。更に言えば、MotoGPもF1も、そしてその他多くのモータースポーツ世界選手権も、実質的に現在は開催地をヨーロッパに限定したシーズンになっている。それは極力人の移動とその範囲を制限する為だ。
F1の2021年日本ラウンドが観客も相応に入れ既に開催されており、それを根拠に持ち出すならまだ理解できる(その根拠に説得力があるかは別)が、F1のスペイン戦を急に例に出されても、だからどうした、としか言いようがないのである。
このように、人の話を無視して自分言いたいことだけを言う人とは、ツイッター上だろうが、その他のSNSだろうが、対面だろうが議論など成り立たない。だからそのようなツッコみを本人にぶつけても意味がないので、相手にするのを止めた。
もしツイッターで議論ができないという話に妥当性があるのなら、昨今の国会審議を前提にすれば、国会で議論はできない、ということにもなる。果たしてそんな話に妥当性はあるだろうか。あるはずがない。国会で議論が成り立っていないのは、首相を始めとした大臣や、官僚など政府関係者が、聞かれたことをはぐらかし、聞かれたことに答えず、その為に何度も同じ内容の質問が繰り返され、時間を浪費されてしまうからだ。昨年の通常国会では、当時の首相が100回以上も嘘を吐くという前代未聞の事態も起きた。
つまり、現在国会で概ね議論が成り立っていないのは、議論をしようとしない者が多く存在しているからだし、首相や大臣らの会見で質疑応答が成り立たないのも、聞かれたことに答えない大臣ばかりだからだ。国会という場の問題ではなく、参加する者の問題である。
本来なら、議会なら委員長や議長、会見なら仕切り役が、聞かれたことに答えない者を的確に指摘し、時間制限がある場であれば、聞かれたことに答えずにだらだらと喋る行為を止め、時間の浪費をやめさせなければならない。それらはスポーツで言えばジャッジを下す審判のような立場だが、委員長や議長、会見の仕切り役がフェアなジャッジを下さず、役割を果たさない状況になっている。なぜなら、委員長や議長は与党議員から選出されており、政府と一体化してしまっているし、会見の仕切り役も政府側から出されているので同様であるからだ。
基本的に独り言用のSNSで、議論が成立し難いのはある意味当然かもしれないが、国会で議論が成り立たないのは、民主主義の危機である。聞かれたことに答えないことに対して、委員長や議長は確実に指摘し、そのような振舞いを排除し、その分は時間配分から除かないといけない。それがなされなければ、極論念仏を唱えれば議論が成立したことになり、議会は形骸化する。
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