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まだ使えるのに切り捨てられるハードウェア

 7年ぶりに Windows がメジャーバージョンアップすると、6/25に発表があった。現行版の Window10 は、なぜか8から9を飛ばして10になったが、今回は順当に10から11になるそうだ。正式版のリリースは2021年内が予定されている。現行版の10は2025年までにサポートを終了する予定らしい。

新機能・新UI搭載の「Windows 11」をMicrosoftが発表 - GIGAZINE


   現在自分の下で、Window10で稼働している一番古いPCは、テレビにつないで主にメディアプレイヤーとして使っているノートPCだ。現在のCore iシリーズプロセッサの前身・Core2世代のPCで、購入時のOSはVistaだった。それから7,8を経て、現在はWindow10にOSをアップデートして、今も現役で動いている。購入時はアプリケーションの64bit対応がまだまだ進んでいなかった為、32bit版OSを選択したが、32bit版で使える容量を超える、当時最大の4GBメモリをオプションで入れたことで、64bitが主流になった今でも、エントリークラスPC程度のパフォーマンスは維持できている。

 そのPCでWindows11を利用できるのか、Win11がインストールできる条件を調べてみたところ、トラステッド プラットフォーム モジュール(TPM)2.0以上であること、という条件を満たせず、どうやら引退の時期がそろそろ近づいてきたようだ。TMPとは、ざっくりと言えば、Windowsのセキュリティに関わる技術だ(【特集】Windows 11で必須になった「TPM 2.0」って何?TPMの役割や確認方法を紹介 - PC Watch)。Intel CPUで言えば、マザーボード等の仕様などにもよるらしいが、Core i シリーズ Haswell世代以降であれば概ね対応するそうだ。分かりやすく言えば、2013年6月以前のPCは、Win11では基本的にサポートされない、切り捨て対象になるということらしい。

 その、うちの最古参PCは、CPUの処理性能もメモリ容量も、TPM以外は条件を満たしている。だが、それによってWin11を入れて使うことが出来ない。購入したのは2008年で、もうかれこれ13年使っているし、ハードウェア的な故障がなければ、恐らくWin10サポート終了の2025年まで、いや、サポート終了と同時に即普通に使えなくなるわけではないので、2028年頃までは、つまり購入から20年程度は使えるだろうから、それで充分だろう。これから8年の間に多分PCを1台は買うだろうから、今使っている別のPCと置き換えればいい。


 しかし、3/3の投稿で、2012年にリリースされた Apple TV(第3世代)のYoutube閲覧機能が、サポート終了によって2021年3月から使えなくなったことに触れた際にも書いたが、まだ使えるハードウェアが切り捨てられることは、持続可能性を重視する企業や社会のあり方に反する気がしてならない。
 リリースから10年未満の危機を平然と切り捨てるアップルに比べれば、マイクロソフトはハードウェアの切り捨てが遅い。AndroidをリリースするGoogleよりも古いハードウェアを切り捨てない傾向が強い。だから2008年に購入したVista世代のPCでも、Win10にアップデートすることができ、最前線でとはいかないが、今も一応現役で使えている。Win11によって切り捨てられるのは、2013年以前のPCで、Win10のサポートは2025年までということなので、最低でも10年程度は切り捨てられない、ということになる。

 自分がアップルを見限ったのは、2012年11月に発売された第4世代のiPad(Lightning端子を採用した最初のモデル)のサポートが、2018年にたった6年足らずでサポート終了になったからだった。一応今も使えてはいるものの、新OSがインストールできないことで、ブラウザやアプリも最新のものが使えなくなり、動画サービスなどによっては利用できないものも結構ある。ハードウェア的には全く問題ないのに、10年未満で切り捨てられるのは、環境云々を別にしても納得がいかない
 日本では、景品表示法に基づいて定められ、消費者庁や公正取引引委員会の認定を受けたメーカーらの自主運営ルールによって、補修用部品保有期間が製品ごとに決められている。製造終了からの一定期間、メーカーは補修用部品を提供できるようにしなければならず、テレビやオーディオ機器は8年間となっている。これは最低限の数字であり、それを過ぎたら途端に部品が提供されなくなるわけではない。

 自分の買った第4世代のiPadも、不便はあれどまだ使えてはいるわけだから、同じ様な状況と捉えることも出来るが、新しいサービスや機能への対応がなされないことに不満があるのではなく、それまで使えていた機能が、ハードウェア的な故障があるわけでもないのに使えなくされることが不満なわけで、やはり発売から6年足らずでのOSのサポート終了は納得がいかない。


 2001年にリリースされた Windows XPは、世界中で広く使われていたこともあって、マイクロソフトの「家庭用は次のバージョンのWindows発売から2年後まで」「業務用は家庭用サポート終了後5年後まで」という方針を変えさせた。XPの次のVistaがリリースされた2007年1月の段階で、マイクロソフトは家庭用向けXPのサポート期限だった2009年を撤回、2014年4月までサポートが延長された。そのサポート期間はおよそ12年にも及び、PC用OSとして異例の長さだった。2007年にリリースされたXPの次のバージョン・Vistaも、2017年までサポートされ、それ以降 Windows では、およそ10年程度というサポート期間が定着している。
 Windowsの普及は3.1及び95から始まったが、黎明期を抜け一定の完成度に到達した最初のバージョンがXPだった。だから世界的に広く利用されたとも言えるだろう。個人的な感覚ではあるが、それ以降は、主に外観が変わるだけで、必要不可欠な新機能が増えている気がしない。勿論、セキュリティ等内部の向上はなされているんだろうが、個人的には、今でもXPが現役なら、それで必要十分だと思っている。ソフトウェア産業は新しいバージョンをリリースしないと商売にならないんだろうが、その為に古いハードが強制的に切り捨てられるのはなんだかもやもやする。

 自動車は50年以上前の車でも、機能的には到底現行車種に及ばないが、一応今も走らせて目的地に行くことができる。しかしPCは、たった15年前の機種でさえ、まともなブラウジングすら危うくなる。テレビはデジタル化によって、アナログチューナー機が単体では使えなくなったが、デジタルチューナーを繋げば一応使うことが出来る。Windowsのサポート期間は、その種の業界では長い方だが、その他のジャンルの製品に比べれば、使えなくなる状況が間違いなく早く訪れる。
 持続可能性を重視する社会を目指すなら、簡単に古いハードウェアが切り捨てられる傾向は何とかするべきだ。そのジャンルの製品の黎明期なら、ある程度はハードウェアの短期間での更新も必要かもしれないが、PCやスマートフォンなどは最早黎明期を過ぎているのだから。


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