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輪廻と阻止すべきリバイバル

 回転寿司はレーンが大きな一つの輪になっているので、一度とり逃した皿も回りまわってまた戻ってくる。一種類のネタが大抵何皿か連なっているので、皿数限定の希少ネタとか、一連のネタが1周する前に取りつくされる程に混雑した店でもない限り、その皿はまた回ってくる。


 自分は基本的に宗教を信用しておらず、寺や神社を参拝することはない。美術的価値を見て回ることはあっても、神頼みするようなことはない、という意味で。かと言って宗教の類は一切嘘とまで言うつもりもない。幾つかの宗教にある食べ物に関する戒律など、合理性がないと感じる部分もあるが、一方で、あながち間違いではない、ものの考え方として考慮する価値がある、と思える教えなどもある。
 今日のトップ画像は、あながち間違いではないと思える、仏教的なものの考え方の1つ・輪廻 を回転寿司とミックスして表現した。


 日本のWeb動画配信メディアの草分け的存在である DOMMUNE で、昨年・2020年12月から毎月第2火曜日に配信している「PRIVATE VINYL LESSON」という番組がある。デジタル配信全盛の現在において、あえてアナログレコードをテーマにしている番組だ。
 番組は基本的に毎回3部構成である。最初の2時間・19:00-21:00は、DJ業界にもデジタル化の波が押し寄せたことによって、日本のダンスミュージックの中心・渋谷でも数々のレコードショップが廃業・閉店してきた中で、今もダンスミュージック系レコードを売り続けるショップ・Technigue の代表・佐藤 吉春が新譜をプレゼンし、出演者や観覧者は欲しければそれをその場で買う、紹介されるレコードは Technique の取り扱い商品なので、視聴者もサイトで購入可能という、レコードに特化した通販番組的なコーナーだ。
 次の1時間・21:00-22:00は、毎回特定のアーティスト、もしくはレーベルを紹介する特集コーナーだ。昨日・7/13の配信では、2人の日本人が2014年にオランダで設立したレーベル・Sound of Vast の特集だった。

 DOMMUNE公式サイトでは、1部が19:00-20:00、2部が20:00-21:00ということになっているが、DOMMUNEはどんな番組でも基本的に押し進行がデフォルトであり、その通りに収まっている回はこれまで皆無で、ここで示したタイムテーブルの方が実態に即している。更にそれ以上に押す回も多く、昨日も2部が終わったのは22:20頃だった。
 そして3部・22:00-Lastは、番組レギュラーDJの Licaxxx とその回のゲストDJによるDJプレイだ。アナログレコードに特化した番組なので、DJプレイで使用するメディアもレコード限定であり、更に、DJは1部で購入したレコードを使う、レギュラー出演者である DOMMUNE のボス・宇川 直宏の購入分も、2人のうちどちらかが使う、という縛りもある。


 昨日、この PRIVATE VINYL LESSON を見ていて感じたことがある。いや、これまで毎回欠かさずに見てきたが、ほぼ毎回感じていること、と言った方が正しいかもしれない。何を感じているのかと言えば、それはトップ画像にもした「輪廻」だ。
 アナログレコードと言えば回転であるが、だから輪廻を感じるわけではない。輪廻とは、ざっくりと言えば、回りまわって巡ることであり、トップ画像にもあしらった回転寿司、1日でまた元の位置に戻ってくる地球の時点、1年で元に戻ってくる地球の軌道のようなイメージだ。しかしレコードは基本的に、回転しても元へは戻らない。レコードに掘られた溝は蚊取り線香のような渦巻き状だからだ。渦巻きではなく円状に溝が掘られ、同じフレーズを何度も繰り返す特殊なレコードもあるが、普通のレコードはどんどん内側に向かって進んでいくので、元の場所には戻らない。だから輪廻とは似て非なるイメージだ。どんな楽曲でも任意の部分をループすることが出来るデジタルDJの方が、むしろレコードよりも輪廻的側面を持っている。
 ではこの番組のどこに輪廻を感じたのか。それは、番組で紹介される楽曲が、自分がハウスやテクノなどダンスミュージックを聞き始めた頃のテイストを多分に含んでいるからだ。ダンスミュージックに限らず音楽全般、音楽だけに限らずアーティスティックな分野のほぼ全てに言えることだが、流行はある一定の周期で繰り返される。現在のテクノ・ハウスシーンでは90sテイストが流行しているし、音楽業界全般では、日本で言えばシティポップなどの80sテイストが流行している。当時を知る世代にはどこか懐かしく感じられるし、当時を知らない自分達よりも下の世代には新鮮に感じられるんだろう。

 例えば、ダンスミュージックシーンでは数年前からアシッドリバイバルと呼ばれる流行がある。アシッドとはLSDの隠語で、ドラッグのような意味だが、この場合のアシッドとはアシッドハウスを指している。アシッドハウスとは、ローランドのアナログシンセの名機・TB-303 の、特徴的なグニョグニョ/ブニョブニョとした音色を用いた曲を指すハウスのサブジャンルで、最初の流行は1980年代末だった。
 実は1990年代に1度目のアシッドリバイバルがあり、現在のアシッドリバイバルは、もう既に何度目かのアシッドリバイバルである。

PHUTURE - ACID TRACKS (1987) VINYL - YouTube

 このように、数年から10数年の周期で巡ってくるダンスミュージックシーンのトレンドを見ていると、そこに輪廻を感じる。

 ただ厳密には、過去と全く同じトレンドが舞い戻ってくるわけではなく、リバイバル毎に新しい要素が少なからず足され、古臭い印象を醸す部分は引かれるのが常であり、レコードが輪廻と似て非なるように、流行の繰り返しもまた、輪廻とは似て非なるものとも言えるだろう。


 しかしそれでも、同じ様なことが繰り返される、という輪廻の要素がそこには確実にあり、別の言い方をすれば、人間は劇的に進化しない、ということを感じずにはいられない。
 1900年代・20世紀は激動の時代だったとよく言われ、特に日本における戦後50年の変化はあまりにも大きかった、という話もよく耳にする。戦前、というか戦後10年間程度までは、炊事や湯沸かしを薪で行うことも珍しくなく、ラジオもまだまだ高価な貴重品で、都市の一部は近代化していたものの、少なくとも戦前まで日本の大半は、江戸時代に毛が生えた程度の社会だったと言っても決して過言ではなかった。それから電気製品や自動車の普及が劇的に進み、上下水道の整備・通信網・道路網・交通機関も飛躍的に発展、50年後には誰もが携帯電話を持つような状況になった。それを考えれば、戦後50年の変化はあまりにも大きかった、飛躍的な発展を遂げた、とも言えるだろう。
 しかしそんな日本社会にも輪廻を感じる部分がある。それは今の政治と社会だ。太平洋戦争に至った過ちを糧に、戦後日本は再出発を果たし、前段で示したような劇的な発展を遂げたわけだが、一方で今の日本の政治は、明らかに戦前回帰の傾向にあると言える。そして、戦前の過ちを糧に再出発したはずなのに、有権者の大半がそれを忘れ、戦前回帰傾向のある政治を凡そ10年も容認、優しく言っても黙認してしまっている。そこに輪廻を感じずにはいられない。


 音楽等、芸術分野におけるリバイバルを肯定的に受け止めることはできても、過去の失敗を政治や社会がリバイバルしかけていることは、どうやっても肯定的には受け止められない。というか、そんなリバイバルは断じて阻止しなくてはならない。
 昨日の投稿でも指摘したように、今日本の政治は嘘に塗れ、堕ちるところまで堕ちている。戦前リバイバルを阻止できるのは今のうちだ。放っておけば、あるタイミングで阻止できなくなってしまい、香港やミャンマーの二の舞になってしまうだろう。



 トップ画像には、ソーラーシステム 惑星 惑星系 - Pixabayの無料画像 と 回転寿司イラスト - No: 1655488/無料イラストなら「イラストAC」を使用した。

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