宣誓!僕たち私たちは、スポーツマンシップに則り、正々堂々と戦うことを誓います! は、運動会における典型的な選手宣誓の文言である。大抵これに何らかの独自アレンジを加えた宣誓が行われるが、急に宣誓を命じられ事前に準備が出来なくても、とりあえずそう言っておけば格好はつく。
選手宣誓が日本の運動会で行われるようになったのは、いつのことなのだろうか。運動会で行われるようになったのがいつかは定かでないが、選手宣誓 - Wikipedia
によれば、高校野球では1930年頃から行われているそうだ。その10年前、1920年アントワープオリンピックで、オリンピック初の選手宣誓が行われ、それを真似て行われるようになったようで、つまり運動会の選手宣誓も、オリンピックがその元ネタなのだろう。
勿論中には苦手な人もいるだろうが、概ね、という意味で、中学生男子はエロ系下ネタが大好きな生き物だ。中学生の頃に、スポーツマンシップに則り、をもじった、スポーツマンヒップにもっこり、というネタが流行った。ネタのオリジナルに関しては諸説あるようだが、ボキャブラ天国がその流行の元だった。
今、東京オリンピックを目前に強く感じるのは、スポーツマンヒップにもっこり、ならぬ、
スポーツマンシップにがっかり
である。
6/17の投稿で触れたように、ソウルオリンピックの背泳ぎ金メダルリストで、前スポーツ庁長官の鈴木
大地は、東京オリンピックに関する感染症対策は、選手や関係者の性善性に頼り過ぎではないのか、という指摘に対して
選手はスポーツですのでルールは守ります、基本的に。ルール違反はしない人が多いです こういうルールでやりましょうと言ったら、みんなやりますよ。みなさん、信頼していただきたいと思います
と擁護した。しかし、ではなぜサッカーではあんなに頻繁にイエローカードが出るのか。イエローカードは故意が疑われる反則への警告であり、再び繰り返せばレッドカードとなり退場処分になる。またサッカーに限らず八百長行為などもしばしば起きる。自らが八百長行為に加担しなくても、競技外で違法な賭博に手を出すスポーツ選手、競技内外で暴行等に及ぶ選手も間違いなくいる。野球やアイスホッケーなどでよく見る乱闘騒ぎはその典型的な例だ。また近年の日本だけを見ても、複数競技団体においてパワハラ事案が起きており、鈴木の主張には説得力が全くないことを指摘した。
で、実際にオリンピック関係者の来日が始まってどうだったか。大会関係者が感染症対策のルールに反して都内のバーで飲酒し、更にコカイン使用容疑で7/2に逮捕された。大会関係者が滞在するホテル周辺で路上飲みをしている、という報道もされている。また、五輪会場で報道関係者向けに食事を提供するスタッフが、会場内で性的な暴行に及んだ容疑で逮捕されてもいる。つまり、スポーツ選手はルールを守る、なんてのは幻想に過ぎなかった。
これらは厳密には、選手が関わった事案ではないが、五輪関係者が関わっていることは事実である。鈴木が擁護した性善説に多様性感染症対策を選手が厳密に守っているか、と言えば、そうとは言えなさそうだし、そもそもルール自体がザル、というかザルにも満たない素通しであり、実行性は全く期待できない。
- コカイン使用容疑で逮捕の五輪関係者が六本木で飲酒 プレーブック違反、感染対策機能せず:東京新聞 TOKYO Web
- 来日中の五輪関係者が「路上飲み」 ホテル近くで「密」に:東京新聞 TOKYO Web
- 国立競技場内で日本人女性に乱暴か 五輪アルバイトのウズベキスタン人、強制性交疑いで逮捕:東京新聞 TOKYO Web
- クローズアップ:五輪開幕1週間前 選手団「バブル」穴だらけ | 毎日新聞
南アフリカのサッカー男子代表3人陽性、濃厚接触者は21人 22日に日本と対戦:東京新聞 TOKYO Web
南アフリカのサッカー男子代表3人が、選手村滞在中に新型コロナウイルス検査で陽性となった。チーム関係者ら21人が濃厚接触者となり、練習もできない状況だそうだ。
見出しにもあるように、南アは日本と対戦の予定だったが、練習も満足にできない状況におかれたチームに勝ったとして、日本代表はそれで喜べるのか。もし負けたら、それはそれで惨めだ。すでに選手村において複数の感染が出ていると報じられていて、行動制限は感染者だけではなく接触者にも及ぶ。つまり事前練習できずに大会に臨むことになる選手も少なからずいるということだ。
確かにどんな競技・大会も、全員が全くの同条件で競技に臨める環境の実現は無理だ。そういう意味では、このタイミングで感染してしまうことも運ではある。しかし、今の状況はそういうことが起きる確率が、平時よりも明らかに高い。そんな環境での大会、しかも感染症対策が杜撰な状況での大会開催が、果たしてフェアと言えるのか。
フェアじゃない試合、大会なんて禍根を残すだけじゃないのか。 選手だけでなく応援する側も含めて。
こんなことも報じられている。
パラリンピック選考大会にすら出られない途上国の選手たち 「格差なくして」:東京新聞 TOKYO Web
コロナ危機によって、オリンピック代表を先行する大会開催が延期/中止されているので、環境が悪い地域の選手ほど、そして社会的に立場の弱い障害者であるパラ選手ほど、不利な状況に置かれている、ということを指摘する記事だ。
これはパラ選手に限った話ではなく、オリンピックにも言えることだ。今の状況では、ワクチン接種が進んだ地域の選手程有利な状況で、ワクチン接種は概ね裕福な国で接種が進んでいる。感染症対策に関しても、そこに予算を避ける裕福な国の方が充実している状況で、裕福でない国・地域ほど事前大会を行うことが難しい。こんな状況で開かれる大会は、果たしてフェアと言えるか。自分には全くそうは思えない。
水泳の池江や体操の内村などが、自分達は開催決定すればそれに従う、温かく見守れ、のようなことを言っている。それはあまりにも自己中心的な考えではないのか。フェアとは言えない試合・大会に出場することをどう思っているのか。メダルを取ったとして、フェアとは言えない大会で勝って、メダルを取ってそれで嬉しいのか。それを誇ることができるのか。そのようなことを考えれば、そんなことを言う選手を温かい目で見守れるはずがない。
オリンピックに限らず、どんなスポーツでも、開催地・開催国の選手は、様々な面で有利だ。だが、今回のオリンピックはその度が過ぎる。多くの選手団が事前合宿を取りやめ、前述のように直前の事前練習すらできない選手もいる。開催直前、期間中も、選手村を使わなくてもよい状況にある日本選手は明らかに優遇される状況だ。また今オリンピックは、出場者選考の時点でフェアではなく、その点でも開催国は有利である。これらの理由からも、もし日本の選手が活躍しても素直に喜べない。称賛する気になれない。
やはり、フェアじゃない試合、大会なんて禍根を残すだけだ。 選手だけでなく見る側、応援する側も含めて。そういう意味で、東京オリンピック2020に関して「スポーツマンシップにがっかり」なのだ。
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