しらけ鳥音頭という曲が1978年に流行ったそうである。小松 政夫の曲で、テレビ番組でのコントから生じたブームだったそうだ。自分はリアルタイム世代ではないが、なぜかこの曲を知っていた。以前にも書いたが(2020年5/9の投稿)、小学生の頃に仲間内で植木 等ブームが起きて、その関連で、誰かが親だか親戚だかのレコードからダビングしたカセットテープを持ってきたからだった。
しらけ、と言えば、1950年代生まれの世代をしらけ世代と呼ぶ。しらけ世代にはいくつかの定義があって、一概に、1950年生まれ=しらけ世代、とは言えないようだが、概ね、1960年代に活発だった学生運動の後の、政治に無関心な世代の若者を指す。または、政治への関心に限らず、何かに熱中することを格好悪いと捉え、斜に構える若者のことを指す場合もあるようだ。
ちなみに、しらけ世代は決して日本だけの傾向ではなく、アメリカでもベトナム戦争終結後に思春期を過ごした若者たちをジェネレーションXと呼び、その世代もまた、政治や社会問題に対して冷めた態度を示す傾向が強かったそうだ。
しらけ世代は、2020年にはおよそ50-60代である。彼らが10代後半から20代を過ごしたのは、1970年から80年代前半にかけてだ。当時の衆院選の年代別投票率では、30代以上ではおよそ70%、戦争を経験した世代だった40代以上では80%越えが当然で、世代によっては90%届きそうな投票率を記録することもあった。1970年代当時は、投票率60%は政治への関心が薄い世代、ということだったんだろう。
2017年衆院選の投票率は、50代で63%、60代で72%だった。つまり、その世代の2010年代の投票率も、彼らがしらけ世代と呼ばれた1970年代と変わっていない。厳密には、彼らの世代の投票率も、リクルート事件や佐川急便事件などによる、1990年代の、2010年代以前の日本において最も酷い政治不信が生じる以前は、上昇傾向にあったが、1990年代の政治不信で50%台に落ち、00年代後半に自民政権への不信が高まった際に再び上昇するなど、一定していたわけではないが、+-10%程度の範囲では推移している。
彼らの後の世代は、そのしらけ世代よりも軒並み更に投票率が低い。つまり、今考えると、1970年代にしらけ世代と呼ばれた人達の政治への関心は、決して低くなかった、とも言える。勿論何と比べるかで話は変わる。当時は他の世代が70%以上の投票率を記録する中で、全世代の中で20代だけが60%台であり、投票率が低い傾向が顕著だったのだから、政治への関心が低い世代と認識されて当然だった。だが、1990年代以降の20代の投票率は20%台にも落ち込みそうな勢いで、しらけ世代の投票率は彼らが50-60代になった今もほぼ変わっていないのだから、”今考えれば、しらけ世代は決してしらけ世代ではない” と言える。
しらけ世代以外の世代でも、歳を重ねてもその世代の投票率は大きくは変わらない。この傾向から考えると、今の20-30代の投票率には、彼らが歳を重ねても大きくは変わらないのではないか、という懸念がある。そして、彼らよりも更に下の世代が、これまでの傾向と同様に、上の世代の投票率を下回る、ということであれば、日本の投票率はこのままどんどん下がっていく、ということにもなりかねない。最悪の場合、30年後には全体の投票率が本当に30%台まで下がるかもしれない。
勿論例外もあって、2005年・2009年の衆院選では、どの年代でも大きく投票率が上昇し、特に20-30代では、2003年と2009年の投票率を比べると、2倍弱にまで増えた。つまり、各世代の投票率は彼らが歳を重ねても大きく変化しない、と断定することはできない。また、今の10代以下の世代が、これまでの傾向を踏襲して、上の世代の投票率を必ず下回るとは限らず、将来的に必ず日本の投票率は30%台にまで下がる、とも言えない。
衆院選の投票率がガクッと下がった1990年代以降、別の言い方をすれば、55年体制の崩壊以降、「政治など誰がやっても、どこが与党でも一緒」というような話がまことしやかにささやかれてきた。その頃以降の日本で、低投票率で得をしてきたのは誰か、国民が政治に無関心になると得してきたのは誰か。それは間違いなく自民党である。
では一体誰が「政治など誰がやっても、どこが与党でも一緒」と言っているんだろうか。そう言うことで誰が得するだろうか。そんなことは考えるまでもない。誰の目にも明らかだ。人によって様々な見方があるだろうが、低投票率、国民の政治的無関心で得をしている党は、中国共産党やナチに倣ったような政策を進めている。今はまだ確立していないが、独裁を目指していると言っても過言ではないだろう。
しらけ世代以上に政治的にしらけた世代が今後も広がれば、しらけ鳥音頭の歌詞のように、「みじめ、みじめ」な社会が現実になりかねない。