菅の活舌の悪さはあまりにも酷い、と書くと、活舌の良し悪しはある程度生来のものだから仕方がないじゃないか、という人もいるだろうが、活舌の悪さはある程度仕方がないとしても、それを補う為の努力は間違いなくできる。しかし菅は明らかにそれをしていない。
8/17の会見で菅は、中国新聞記者の、緊急時にどんな対策をとっているか、総理大臣の分かりやすいメッセージが必要なのに、原稿の棒読みばかりか、読み飛ばしすらしているが、どう思っているのか、という趣旨の質問に対して、
まず、災害などの緊急時における正確で速やかな情報発信は、国民の生命、財産を守るために極めて重要なものと認識しています。そのために必要な情報というものを適時、的確に、そして丁寧に分かりやすく発信することが大事だというふうに思っています。
例えば今回の大雨に伴って開設されています避難所、これについて、私、毎日コロナの状況というものも報告を受けております。そういう中で、具体的には分散避難というものも呼び掛けたり、あるいはホテルや旅館、こうしたことの活用も含めて、可能な限り多くの避難場所を確保する。そうした中で、避難所においてはやはり消毒、さらに衛生管理、密を避けるための十分なスペース、そうしたものを取っているとか、そうしたことを私、この大雨の中については報告を受けながら対応しております。そういう意味において、コロナが発生したという報告は、今まで全くありません。どこについても、避難所については、そういう運営を行っていると、そういうことです。
と述べた。本来は ”述べた” ではなく ”答えた” と書くべきなんだろうが、質問に一切答えておらず、答えた、とは全く言えず、そう書くことができない。
令和3年8月17日 新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見 | 令和3年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ
この質問について、共同通信は
菅義偉首相は17日の記者会見で、あらかじめ用意した原稿を棒読みしているとの記者の指摘に対し「正確で速やかな情報発信は、国民の生命・財産を守るために極めて重要だ」と反論した。
と書いている。原稿の棒読みばかりか、読み飛ばしすらしているが、どう思っているのか、という趣旨の質問に対して、前述のように述べれば、このように要約されるのも当然だろう。
共同通信の解釈を基に考えれば、菅は、原稿の棒読みは正確で速やかな情報発信である、と主張したことになる。そしてその解釈は決しておかしいとは言えない。そもそもの反応が曖昧なので、菅が何を言いたいかは定かでなく、その解釈が絶対的に正しいとは言えないものの、そう解釈する余地は多分にある。
菅は活舌の悪さもさることながら、中国新聞の記者が質問の中で指摘したように、原爆の日の式典の挨拶では原稿を読み飛ばし、そして読み間違い・言い間違いもしばしばする。また、端折り過ぎて意味が真逆になるようなことを言う、のも珍しくない。なのに、原稿棒読みは正確で速やかな情報発信だなんて、本当にどうかしている。
8/7の投稿でも指摘したように、広島の式典の件から、菅は原稿の下読みをしていないことが明らかだ。おかしなところで文章を切ること、読み間違い、意味が真逆になる表現は昨日・8/17の会見でも起きている。
説明不要かもしれないが一応注釈しておくと、そもそも菅は、前首相安倍と同様に、記者クラブ所属メディアの記者などからは事前に質問内容を知らされていて、その場で質問に応じているのではなく、事前に用意された原稿を読むことで、あたかもその場で質問に応じているかのようなフリをしている。
それは昨日・8/17の会見のWSJ記者の質問に対する応答で説明できる。
WSJの記者はアフガニスタンでタリバンが実権掌握したことについて質問していて、菅はその返答の中で、”タリバンの、首都カブールへの入域によってガニ政権は機能しなくなり” という文言を、”タリバンの首都・カブールへの入域によってガニ政権は機能しなくなり” と読んだ。
なぜ読んだと言えるのか。それは、前述の官邸Webサイトの当該ページに掲載されている会見の様子の動画を見れば、手元の原稿に目を落としていることは一目瞭然なのだが、もし菅がアフガニスタンの状況をしっかりと把握、理解し、質問にその場で応答しているのなら、カブールはアフガニスタンの首都ということは確実に頭に入っているはずで、タリバンという国の首都がカブールであるかのような発言は絶対にしない筈だからでもある。
アフガニスタンの現状に関する理解があやふやなだけでなく、用意された原稿の下読みすらしないから、”タリバンが、首都カブールへ入域したことで” というニュアンスを表現しなければならないところを、タリバンの首都・カブールへの入域によって” というおかしなところで文章を区切るようなことをしてしまう。動画で確認すると、タリバンの首都、(2秒の間)カブールへの入域、と言っており、また ”ガニ政権” も、カニ政権 と言っているようにしか聞こえないし、この直前では、アフガニ…(1秒の間)スタン という奇妙な発言もある
自分の頭の中にあることをその場で言っているなら、若しくは原稿を下読みしてしっかりと内容を理解していたら、こんなおかしな発言にはならない。
他にもおかしな発言はあって、産経新聞記者の質問への応答の中で「感染拡大を最優先にしながら」と言っている。
この質問への返答も、手元の原稿を見て読んでいることは、映像からも明らかだ。この産経新聞記者の質問までは、この会見の幹事社の質問であり、質問内容が事前に官邸側に伝えられているであろうことはほぼ間違いない。
感染拡大の防止を最優先に、という趣旨のことを何度も言っている内に、”の防止” がうっかり抜けることはあり得るが、首相の感染拡大対策に関する会見であること、また、原稿を棒読みすることは「正確で速やかな情報発信の為」と菅自らが言っていることを勘案すれば、この意味が真逆になる言い間違いも看過できない。
それは揚げ足取りだ、と言う人もいるだろう。菅が日頃から真摯に質問に応じ、言い間違い読み間違いもほぼなく、原稿読み飛ばしなんて絶対にしないような人物であるなら、弘法にも筆の誤り、どんなにその道に長けていても、間違いを犯すことはある、とも捉えられただろう。だが菅は、日常的に読み間違いもやれば言い間違いもやる、更には原稿を読み飛ばし、それを、部下の原稿の用意が悪く、糊で原稿がくっついていてめくれなかったからだ、と言い訳するような人物なのだから、ああまたやった、と捉えられ、指摘されるのも当然なのではないか。それは果たして揚げ足取りと言うべきか。そんな擁護は甘やかしすぎだ。
ちなみに、トップ画像の元ネタは映画 マトリックスの1シーンである。菅の演説・答弁能力の低さ、表現の不自由さ、要領を得ない話ばかりすることを表現したものである。