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オリンピック同様に開催を強行してしまったフジロック

 オリンピック開催に反対するツイートに対して、「オリンピックに反対するのに、高校野球都大会にはなぜ反対しないんだ!」という、Whataboutismに満ちた言いがかりをつけられた。そういう奴は、オリンピックと都大会に反対を表明していたとしても、また別の何かを持ち出して同じ様に言うだろう。


 私は森羅万象を担当していると、まるで自分のことを神か何かのように言った愚かな首相もいたが、1人が世の中全てのことに目を配り、全てを把握し、全てを批判することなんて絶対に出来ない。勿論、明らかに取るに足らない小さな事ばかりに目をやり、大きな懸念から目を背ける者に対しては、○○は批判するのに××には目を向けないのか、という指摘・批判にも妥当性がある。しかし「オリンピックに反対するのに、高校野球都大会にはなぜ反対しないんだ!」は、明らかにそのケースではない。
 オリンピックの方が高校野球都大会より重大なことは明らかだ。自治体の境をまたぐどころか国をまたぐ移動が万単位で発生するし、参加者・関係者の人数も高校野球都大会の比でない。また、オリンピックを開催するなら高校野球都大会もやってOKという判断がなされることはあっても、高校野球都大会が開催されるからオリンピックやってもOKという判断には、一般的な思考ではなかなかならない(但し、酷暑の日本でのオリンピック開催に関して日本の関係者は、高校野球甲子園大会毎年やってるから問題ない、と思っているフシはある)。
 そのツイートに対しては、高校野球都大会への反対は表明していなが、フジロック開催には反対を示している旨をリプライしたところ、その後音沙汰はなかった。フジロックの今夏開催に関しては、7/2の投稿で、文化芸術分野は昨年の感染拡大当初やり玉に挙げられ、そして充分な支援もなく、2年連続の中止はイベンターやアーティストなどの存続にかかわるということも分からないでもないが、野外イベントとは言え、期間中に万単位の人が集まり、近隣のホテルや合宿所、宿に集中、またテント泊を予定する参加者も多く、フジロックでしか会わないような友達を持つ人も多く、そのような人が同じテントで3日間を過ごすことになれば、感染拡大に繋がる恐れは否めないし、もしフジロックで感染した後地元に帰れば、イベントだけの問題に留まらないから開催に反対する、と書いた。


 そのフジロックが今日ついに始まった。例年なら木曜日の前夜祭から始まるのだが、今年は前夜祭の開催はなかった。だが、キャンプサイトは例年通り昨日・木曜の12:00にオープンしているので、厳密には、金曜の今日は既に開催2日目とも言える。

BSN NEWS|BSN新潟放送動画ニュースサイト | フジロック開幕 ウイルス禍で出演辞退も

 この記事にもあるように、3日で4万8000人の動員が見込まれている。チケットは既に完売しているようだから、この動員予想はほぼ正しい数字だろう。だが、恐らく1日当たりの参加者を単純に足した数字だろうから、のべ、の数字であり、3日通しで参加する人が多いから、厳密にはその1/3-1/2程度の人数かもしれない。それでも、関係者も加味すれば少なくとも3万人程度が苗場に集まることになる。

  • 来場者を例年の半分以下に
  • 会場での飲酒禁止
  • 来場者へ事前の抗原検査を呼び掛け
などが対策に挙げられているが、前述の通り参加者は半分以下でも少なくとも3万人程度だ。会場では飲酒しなくても宿などでは間違いなく飲酒もするだろうし、お祭りムードで羽目を外す人も出るだろう。抗原検査はPCR検査よりも精度が低く、感染初期の検出が難しい。また、空港で無料PCR検査を実施したが、陽性が発覚すると旅行を中止せざるをえなくなる為、利用者が4%に満たなかったことを勘案すれば、イベント会場での抗原検査呼び掛けにも同様の懸念がある。このように、どれも決定的な対策にならないことは明白である。

 中でも一番の懸念は、やはり参加者の多さだ。SNS投稿やYoutube中継などを見ると、会場で観客は充分に距離を保っていることをアピールしているが、観客はステージの前に3日間ずっとじっとしているわけじゃない。ステージ間を移動もするし、宿やテントにも帰る。飲酒はしなくても会場内でも飲食はする。徹底して参加者の行動や感染の懸念をコントロールができるか?と言えば、それは難しい。今感染の主流になっているデルタ株は、マスクをしていても、すれ違っただけでも感染する程度にリスキーだという話もある。
 3万人超の参加者がいれば、開催中、若しくは開催後に、フジロックに参加した人の中から間違いなく感染者が出る。今の日本はそういう状況だ。フジロックに参加した人の中から間違いなく感染者が出るとは、フジロックで感染が起きる、という意味ではないが、事前に感染しフジロック開催中に体調を崩すなど現地で感染が発覚したら、他の参加者に感染させる恐れが確実ある。開催後に感染が発覚した場合、フジロックで感染したかどうか、間違いなく感染経路としてフジロックが疑われることになる。
 前者の恐れがある時点で既に、開催すべきでない、ということになるのだが、参加者が参加時点で全員感染していないと仮定しても、後者の懸念だけでも開催すべきでない。本来は疑わしきは罰せずであり、フジロックでの感染が特定されないならフジロックの所為にすべきではない。だが、現政権下ではオリンピック関係者で400人超の感染者が出ても集団感染・クラスター認定がなされていない。また、公共交通の職員から複数の感染者が出ても、集団感染・クラスター認定されずに感染経路不明とされるケースが複数ある。
 つまり、政府や自治体の発表に信頼感がなく、感染経路に関する発表全てに疑念が生じる為、3万にも参加者がいればフジロック参加者からも感染者が間違いなく出るし、実際の感染経路がどうであれ多くの人がフジロックが原因だと思うだろう。だから実際に集団感染が発生しなくても、感染経路として疑われるような、大規模イベントは今すべきでないのだ。

 そもそも、今は明らかに感染爆発が起きている状況であり、感染拡大につながる懸念のあることは、音楽イベントに限らず、そしてその規模にかかわらず総じてすべきでないのだ。選挙なども不特定多数の人を集めることだし、デモだってそうだ。それらも基本的にはこの状況下ですべきことではないのだが、今の為政者らのデタラメを野放しにすることは、更に状況を悪化させる懸念に満ちていて、命にかかわることでもある。そのようなやむを得ない理由があるならまだしも、音楽イベントはそういうものに該当しない。
 勿論、明日の糧の為に急を要する、音楽業界にとってイベント開催は必要だ、という考えも分かる。だから心苦しくも思うが、それでも、今は万単位で人を集めるようなことをやはりすべきでない。万単位で人を完全にコントロールし、感染が生じても経路を特定し完全な対処が出来る、とは到底思えない。それは強行されたオリンピックからも明らかだ。


 多分イベンターやアーティストの中には、政府のデタラメに対する反骨精神を示す為にフジロックは開催されねばならない、のように考えている人もいるだろう。その考えは否定しないが、感染爆発が起きていて、感染しても、そして新型コロナウイルス以外の病やケガでも、診療が受けられるか定かでない状況で、大勢の参加者の健康だけでなく、開催したイベントで感染が起きたら、そこで感染した人が参加者以外にも感染を広げてしまうリスクは絶対に無視できないし、医療現場に更なる負担をかけることにもなりかねない。

 だから政府のデタラメに対する反骨精神は別のかたちで示すべきだ。


 トップ画像には、レゴ おもちゃ 置物 - Pixabayの無料写真 を使用した。

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