スキップしてメイン コンテンツに移動
 

万単位の観客動員は、赤旗中断すべき

 昨夜はMotoGPの英国ラウンドが開催されていた。今シーズンのMotoGPは、6月にまず日本開催中止が発表され、7月に入るとオーストラリア、タイの中止も発表された。そして8/19には最後の1つだったマレーシア戦の中止も決まり、昨シーズンに続いて今年も、アジアラウンドは全て中止になった。

 一応、他の中止になったイベントの代替開催として、インドネシア開催の可能性は残されているものの、インドネシアの感染状況に鑑みれば、当局が開催を許すとは思えないし、そしてインドネシア開催だけの為にMotoGP一行がアジアへ移動してくるとも考え難く、開催の可能性は限りなくゼロに近い。
 1月に延期が発表されたアメリカとアルゼンチンのうち、アメリカだけは10月の開催が決まっているが、アルゼンチンは未だ開催時期が発表されていない。他のラウンドの開催予定とスケジュールの空きから考えると、恐らくこのまま開催中止になるだろう。つまり今年も、第1戦カタール除けば、昨年同様ヨーロッパだけで開催さることになった、ということだ。唯一ヨーロッパ外で開催予定のアメリカを除いて。


 昨年と違うのは、昨年は全ての開催が無観客だったが、今年は観客を入れたイベントをやり始めているという点だ。しかも、8/15に開催されたオーストリアでは、観客数に制限をかけずに客を入れていた。昨日開催されたイギリスも、6万人以上の観客を動員したそうだ。ヨーロッパ諸国は、世界中で最もワクチン接種率が高い状況にあり、それを理由に、これまで課されていた感染防止のための規制が緩めらた国も少なくない。だからいくつかの国では観客を動員した開催が実現しているんだろう。
 MotoGPに参加する選手やチーム関係者らは、今も基本的にマスクをしているものの、中継映像に映る観客は、どの国も殆どマスクをしていない。マスクをしている人を探す方が大変なレベルだ。6/27に開催されたオランダでも観客を入れていたが、そのほとんどがマスクををしていなかった。だがその2週間後、オランダでは再び新規感染が急増し、首相がワクチン接種を根拠にした規制緩和は時期尚早だったと謝罪するはめになった。

オランダ首相が謝罪、コロナ対策緩和は判断ミス 新規感染者急増で 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

 6万人以上を動員して昨日開催したイギリスも、ワクチン接種率は高いとはいえ、新規感染者数は、感染爆発が深刻視されている日本よりも多い

イギリス 感染拡大 - Google 検索

 積極的な検査がなされていない日本の新規感染者数はあまり当てにならず、潜在的にはその2-10倍程度の数字があるとも言われている。しかしそれでも、日本もイギリスも新規感染が決して少なくないことに違いはない。

 ワクチン接種率の高さを理由に規制を緩めたイギリスでは、新たな変異株を生み出してしまう懸念も指摘されている。また、7月後半に開催された野外音楽フェスでは、ワクチン接種と陰性証明が求めらてたにもかかわらず集団感染が発生した、とも報じられている。2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中 伸弥も、ワクチン接種と過去の感染によって、イギリス国民の大多数が新型コロナウイルスに対する抗体を獲得していると考えられるが、それでも、イギリスの感染者数や死者数は日本を上回る状態が続いていて、デルタ変異ウイルスの手強さを物語っている、と指摘している。


 このような現状認識があったので、昨晩MotoGPのイギリス開催を中継で観戦していて、無頓着に興じていてよいものか、という疑問を感じた。自分はこれまで、オリンピック/パラリンピック開催に関して、日本人選手に限らず、参加する全ての選手を含めて嫌悪する姿勢を示してきた。それは、開催による感染拡大がかなり前から指摘されていて、案の定日本ではオリンピック開催中に感染爆発が起きて、診療や治療が必要なのに放置されている人が万単位で発生しているからだ。そして、オリンピックやパラリンピックは更なる感染拡大を招く恐れが強いイベントであり、それに無頓着に参加するのは加害行為でもある、という考えだからだ。
 オリンピックやパラリンピックに限らず、同じく多数の人を集めるという意味で、感染拡大させてしまいかねず、その結果医療現場に負担をかけることにもなりかねない、そして医療現場が限界に達することで診療や治療を受けられずに、最悪死に至る人を生み出しかねないので、フジロックフェスティバルの開催にも強い懸念と反対を示してきた(8/20の投稿)。

 日本で開催されたオリンピックやパラリンピックの開催に反対する自分のように、恐らく英国にも、6万人もの人を動員したMotoGPの開催に、同じ様な理由で反対していた人がいただろう。自分の住んでいる国や地域のことには強い関心と懸念を示すのに、同じことが他の国や地域で起きても他人事、というのは全く誠実とは言えない。イベント自体の開催中止とまではいかなくとも、少なからず観客動員に関しては反対、懸念を感じないとおかしい。無頓着に興じるだけでは、オリンピックやパラリンピックには反対したのに、同じく多数の人を集めることになるフジロックには出演したアーティスト、と同じレベルになってしまう。


 ワクチンによって新型ウイルスに対する集団免疫は得られない、という指摘は、少なくとも5月の時点でされていた。Gigazineの「終息しない新型コロナウイルスのパンデミックに対し社会はどう変わっていくのか? - GIGAZINE」はアメリカの月刊誌・アトランティックの記事を基にした8/24の記事だが、5/7にも「「新型コロナワクチン接種で集団免疫は達成できない」と専門家は考え方を変えつつある - GIGAZINE」というニューヨークタイムズの記事を基にした記事を掲載している。
 日本では、未だ積極的検査がなされず、感染実態が正確に把握できていないことに加えて、ワクチン接種も世界レベルで考えてかなり遅い状況なのに、厳格な対応もせずにオリンピックやパラリンピックを開催したことの直接的、間接的な影響によって、これまでで最悪の感染爆発が起きた。しかし、ワクチン接種を理由に規制を緩めたイギリスやアメリカを始めとした欧米諸国も、実際には日本に毛が生えたレベルの対応に成り下がってしまった、というのが実状ではないだろうか。
 日本政府関係者らの認識は、他の国に比べてもう2周くらい周回遅れであり、全く目も当てられない状況なのだが、では先進的と言われている諸外国が皆適切な対応を続けているかと言えば、決してそうとは言えない状況であり、このままでは収束までにはまだ数年単位を要するのではないか、という懸念を強く感じてしまう。


このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。