今日で2021年8月も終わる。8/1から8/29までに、東京と周辺の1都3県だけで少なくとも31人が、新型ウイルスに感染したが充分な診療・治療を受けられずに、自宅で亡くなったそうだ。亡くなった人の約半数は発熱やせきなどの軽症だったが、容体が急変し死に至ったとのことだ。
家族と同居していた例もあるそうだが、中には人知れず死に至り、死亡から数日後に発見された例もあるし、容体急変後、搬送先が見つからずに死亡した例もある。
<新型コロナ>首都圏1都3県で自宅療養中の死亡増加 8月のみで計31人:東京新聞 TOKYO Web
しかも、8/29の時点で、充分な診療や治療が受けられない、政府や自治体等が自宅療養者と呼ぶ、実際には自宅で診療待ちをしている人達、厳しく言えば自宅に放置された患者が、日本全国で12万人もいる。つまり今も、容体急変によって死んでしまう人が出かねない状況は変わっていない。
そんな状況が眼前に広がっているにもかかわらず、首相の菅は8/25の会見で、
他国と死者の数などを比べると明らかではないか
と、日本の死者数は少ないと言い、更に、ワクチン接種が進んでいるとして、それを根拠に
明かりははっきりと見え始めている
とも言い放った。
緊急宣言拡大なのに首相「明かりはっきり」と楽観:東京新聞 TOKYO Web
菅にとって、死者数は数字でしかないんだろう。でなければ、対応策が機能しているかを問われたのに対して、死者数は少ない、なんて返答ができるはずがない。死亡してしまった人の数を数字としてしか捉えられないなら、その人は人の心を失っている。死者数は単なる数字ではなく、その一人一人はそれぞれ人間だし、その周りには家族や友人らがいる。菅は死んでしまった人の家族や友人らを前に、日本の死者数は少ないと政府対応を誇ることが出来るのか。菅に質問したのは記者だが、その向こう側には死んでしまった人達の家族がいる。つまり菅は、死んでしまった人の家族や友人らに対して、日本の死者数は少ないとして政府の対応を自賛したのだ。
日本ではこのような人間のことを”人でなし”と呼ぶ。
今までの対応の不備と真摯に向き合い、その至らなさを認め、更に明らかに状況が改善に向かっているなら、「明かりははっきりと見え始めている」という発言にも合理性はあるのだが、前アベ政権から一貫して、現自民政権は自分たちの間違いを認めずに誤魔化し、失敗に向き合うことなく、都合のよい事ばかりを強調し、失敗と向き合わない結果さらなるに失敗を重ねてきた。そしてワクチン接種を受けたくても受けられない人が、若年層を中心にまだ大勢いるのに、高齢者層で接種が進んだことだけを強調し、「明かりははっきりと見え始めている」なんて言っているのだから、猛批判を受けるのも当然だ。
この姿勢は菅に限らず、現政権の閣僚全般に当てはまる。官房長官の加藤も8/30の定例会見で、記者に、総理が『明かりがはっきり見え始めている』と会見で述べたことに、国民の認識と違うとの声が上がっているが、どう考えるか?
と問われ、『明かりが見え始めてる』と言ったことにはいろいろ議論があると承知しているが、7月末までに高齢者の2回接種が終わっていたということは大変効果があったという認識、と返答している。
記者「総理が『明かりがはっきり見え始めてる』と述べたことに、国民の認識と違うとの声が上がっているが?」
— 国会ウォッチャー@総選挙まで安倍・菅政権振り返り中 (@kokkaiwatcher1) August 30, 2021
加藤官房長官「『明かりが見え始めてる』と言ったことにはいろいろ議論があると承知しているが、7月末までに高齢者の2回接種が終わっていたということは大変効果があったと認識している」 pic.twitter.com/tY36tZ1hWR
菅やこの加藤だけでなく、厚労大臣の田村も、新型ウイルス担当大臣の西村も、そしてワクチン担当大臣の河野も、揃いも揃って都合の悪い事は無視、都合のよいことばかり強調する傾向は変わらない。今日のトップ画像は、「明かりが見え始めた」などと、幻覚を見ているかのようなことを菅が言ったことについて、幻覚効果や多幸感を醸す効能があるとされるLSDを、菅が嗜んでいる様子を表現した風刺だ。しかし菅のみならず、官邸で閣僚らが揃って幻覚作用や多幸感・高揚感を高める効果のあるドラッグに興じていて、その所為で楽観的なことばかり言っているのではないか、という懸念も感じる。これは当然皮肉、揶揄の類なのだが、そんな恐れは一切ない、とまで断言できない程に、彼らは現実を無視したことばかり言っている、或いは、やっている。
新型ウイルス対応担当大臣の西村は、8/3にこう言っていた。
記者「重症以外は自宅療養という方針、厚労省のリスクコミュニケーションが不適切で丁寧さを欠いてるのでは?」
— 国会ウォッチャー@総選挙まで安倍・菅政権振り返り中 (@kokkaiwatcher1) August 30, 2021
西村大臣「20代30代は無症状だったり軽症だったりするケースが多くほとんど。東京は一人暮らしも多いので、家庭内で感染リスクがなければ自宅で療養していただくということであります」 pic.twitter.com/aXLm4QK0au
当時から既に、一人暮らしの人が自宅で急変したら助けを求めることも出来ずに死んでしまう、という指摘がなされていた。つまり、西村の発言は、一人暮らしの人は容体が悪化したらそのまま死んでください、をオブラートに包んだだけのものでしかない。そしてそんな最悪の事態がこの1カ月で複数発生している。
その西村は、昨日TBSのワイドショーに出演し、
私も毎日のように会見をしてますし、また尾身先生も会見をされています。菅総理も節目節目で会見して、私どものコロナへの対応を丁寧に説明してきてはいるんですが、政府の強い姿勢というか何としても抑えるという覚悟がまだ国民の皆さんに伝わっていないのかなあというところで、よりしっかりと丁寧に説明しなきゃいけないんだろうと感じています
と悠長なことを言っていたらしい。
こんな人達が舵取りをやっている限り、日本の状況が好転するのはかなり先だろう。
なにせワクチンの効果は半年程度とも言われていて、更に新たな変異株が次々に確認されているのだから。昨日の投稿でも触れたように、ワクチンによって新型ウイルスに対する集団免疫は得られない、というのが世界的な共通認識になりつつある。その信憑性は、ワクチン接種が世界で最も進んだ国の1つであるイギリスやアメリカの新規感染者数が、今も世界トップレベルに多いことが物語っている。