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くすぶる火種、完全消火の重要性と新型ウイルス

 炭に一旦火をつけるとなかなか完全には鎮火しない。水をかけて消すという手もある。一番確実であり、自宅でならそれでもいいが、ドロドロの灰を始末しなくてはならなくなるので、出先ではあまりよい方法でない。火消壺などで酸素を遮断して消火するのが賢い。


 火をしっかり消さないまま放置すると思わぬ火災につながる。2014年に兵庫県赤穂市で起きた山火事の原因はバーベキューで使った炭火の不始末だった。男性が火は消えたと思って山に捨てた木炭が火元となり、鎮火までにおよそ1日を要し、近隣住民60人以上が一時避難、山陽自動車道や播磨自動車道が7時間半も通行止めになる山火事に発展した。消火活動には消防車60台、消防隊員や消防団員ら約700人が動員され、更には防災ヘリ/自衛隊ヘリによる消火活動も行われた。当然男性は罪に問われた。

兵庫・赤穂で山林火災 - YouTube

 更にもっと小さい火が原因の山火事も起きている。2015年4月に長野県岡谷市で起きた山火事は、鎮火までに42時間を要し、247世帯578人に対して避難準備情報が出された。この山火事でも、地上での消化活動だけでなく防災ヘリや自衛隊による消火活動も行われた。この山火事の原因は、墓参りの際の線香の不始末と見られている。

長野・岡谷市の山林火災 鎮火を確認|日テレNEWS24

 一度にどれくらいの線香に火がつけられ、そこに放置されたのかはわからないし、もしかしたら線香の火ではなく、いたずら、線香の不始末を装った放火の恐れもなくはない。しかし線香程度の火であっても、強風に煽られれば火の勢いは増すし、空気が乾燥していたり周囲に枯れ葉などが多くあれば、その火は瞬く間に燃え広がる。
 火おこしを体験したことがある人なら、摩擦によって生じた小さな種火に息を吹いて酸素を送り込むことで、火が大きくなって焚火や炊事用などに使えるようになる、ということを知っているだろう。つまり逆に言えば、どんなに小さな火でも放置すれば火事につながる恐れがある、ということである。


 自治体等の発表によれば、現在は、7月から8月にかけて起きた新型コロナウイルスの感染爆発に比べると、1日当たりの新規感染者は減少傾向にある。東京都で言えば、ピーク時のおよそ1/5程度にまで新規感染者数は減っている。


 もうずっと指摘しているように、日本では広範で積極的な検査が行われておらず、しかも都は濃厚接触者の定義も国のそれよりも狭めており、また感染者数の減少傾向の裏には検査数の減少もあり、そもそも発表されている数字の信頼性は著しく低い。
 そのようなことを度外視して、この減少傾向が事実だと仮定しても、決して減少傾向であるだけで満足してはならない。感染者が多く検出され、入院、自宅隔離されればその影響で感染者は減少に転じることは説明できる。また、これまでの10倍以上の新規感染者が出ているとアナウンスされれば、少なからず市民の防疫意識もそれまで以上に高まるはずで、それも感染者が減少に転じる要因だろう。しかし無症状の感染者がいることは既知であり、広範で積極的な検査をしなければ、市中からウイルスは完全に排除できない。

 感染者が減少傾向にあるが、市中からウイルスを完全に排除できていない状態、無症状の感染者がいる状態は、赤さが見えなくなった炭火とよく似ている。感染者の減少傾向を楽観視することや減少傾向を以て対応を緩めることは、炭火が消えたと勝手に思い込んで、まだくすぶっている炭を山へ捨てるようなものだ。その炭に風が吹きつければ炎はまた姿を現し、周りのものにも燃え広がる。減少傾向を楽観的に捉え、市中からウイルスを完全に排除せずに対応を緩めれば、それと同じことが起きる。それは、これまで頑なに積極的な検査を避け続け、GOTOキャンペーンや聖火リレーに合わせただけ宣言解除をやったこと、そしてオリンピック強行とその結果を見れば明らかだ。
 7-8月に起きた規模の感染爆発に対応できず、必要な医療を受けられずに命を落とした人が複数いる。新たな変異も生じ、ワクチンの効果が続く期間にも限度はあるようだし、そのような状況が将来的に再び生じる恐れは決して低くないんだろう。急激な感染増加への準備は間違いなく今後も必要だ。

 炭火でなく線香の火ですら山火事につながるので少しの火種も残してはいけないのと同様に、ニュージーランドや台湾などでは、数人の市中感染が見つかっただけで行動制限を伴う厳正な対処を行う。勿論補償も込みで。だからそれらの地域はこれまで概ね新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んできた。ワクチン頼みの国がどうなっているかは9/10の投稿で書いた通りだ。
 手本にすべきはどこか、それは誰の目にも明らかだ。



 トップ画像には、火災 赤 石炭 - Pixabayの無料写真 を使用した。

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