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ドラクエI のダンジョンをたいまつだけで進む状態

 ドラゴンクエストは日本を代表するゲームの1つだ。海外での人気はそれ程でないものの、国内では絶大な人気を誇った。全盛期は既に過ぎたシリーズである感は否めないものの、それでも全盛期を知る層を中心に、いまも続編が多くの人に遊ばれている。その知名度は未だに高く、恐らく日本人であれば7割かそれ以上がドラクエを認知しているのではないか。

 ドラクエの第1作はファミコンでリリースされた。主人公キャラの大きさを1マス単位として構成されたマップが用いられていた。その上を歩いて移動し、新しい街へ向かうなどして冒険を進める方式だった。歩いていると何歩かごとにモンスターに遭遇し、コマンド入力式の戦闘シーンに突入する。このドラクエ方式とも言えるRPGの様式は、ファミコン時代に多くのゲームが採用して、つまり多くのドラクエフォロワーを生み、隆盛を誇った。
 ドラクエIが、同じくファミコン用として発売されたIIからIVと大きく異なるのは、ドラクエタイプのRPGでは欠かせない要素の、洞窟・ダンジョンの表現である。II以降は、ダンジョンに入ると自キャラの周囲がある程度表示されるが、Iのダンジョンでは、自キャラ以外は真っ暗だった。たいまつというアイテムを使うと、自キャラを中心とした周囲3*3の9マスが見えるようになる。レベルを上げることで習得するレミーラという呪文を唱えると、5*5の25マスが見えるようになる、という方式だった。
 多分、評判が悪かったからII以降では方式が変更されたのだろう。自分も小学生の頃始めてプレイした際に「自分だけしか見えないのにどうやってやるんだよ」と思ったし、たいまつで3*3だけ見えるようになっても「焼け石に水だよ」と思った。レミーラを覚えたらダンジョンも普通にプレイできた気がするが、ゲームを普通に進めれば、レミーラを覚える前に攻略しないといけないダンジョンがあって、そのダンジョンはそこまで複雑な構造ではないのだけど、手探り感が嫌な感じだった。


 今の日本はまさにこの、ドラクエI のダンジョンをたいまつだけで進む状態、だ。というのも、9/7の投稿で指摘したように、日本の新型ウイルスに関する検査数は、他国に比べて異常な程少ないからだ。
 日本の首相や政府などは、今後ワクチン接種が進めば状況は改善する、と思っているようだが、その認識の周回遅れさ加減については、世界で最もワクチン接種が進んでいる、アメリカ・イギリス・イスラエルなどの現状を見れば明らかだ。現在でもアメリカとイギリスは1日当たりの新規感染者数が世界のトップ3に入っている。イスラエルも、感染も死者も明らかに減っていない。

世界における新型コロナウイルスの感染状況・グラフ・地図

 このように、ワクチン接種が進んでもそれだけでは事態は好転しないことは明らかなのに、今の政府が言うことは、ワクチン接種進めば状況が好転する、という周回遅れの見立てを基にした話ばかりである。

 台湾やニュージーランドなどは、検査と隔離を徹底した結果、昨年の春から概ね市中感染を抑え込み、人が集まるイベントも開催できるなど、それ以前とそれ程大きく変わらない生活を実現している。両国は共に島国であり水際対策の実施向いていた。そして徹底した対策を講じた結果、市中感染を概ね抑え込んできた。勿論国外との接触を全く絶つことはできず、度々市中で感染が確認されてきたが、その度に積極的検査と行動制限/補償をして拡大を防いだ。
 ニュージーランドは9/7時点でワクチン1回接種した人が54.1%、2回接種した人が27.9%、台湾は1回接種が44.8%、2回接種は何と4.3%(Coronavirus (COVID-19) Vaccinations - Statistics and Research - Our World in Data 調べ)と、どちらも接種率は決して高いとは言えない。つまり、感染を抑え込むには、検査と隔離の徹底しか、今のところ有効な手段はない。にもかかわらず、日本では相変わらず他国に比べて異常な程少ない検査しか行わなれていない。
 だから、今の検査件数が異常に少ない日本の状態を、ドラクエI のダンジョンをたいまつだけで進む状態、と表現した。自分達が置かれた状況を正確に把握できないまま手探りで進んでいる、のが検査件数が異常に少ない今の日本である。しかも、そのダンジョンは敵とのエンカウント率も高く、またいたるところに、歩くとダメージを受けるトラップ床や毒の沼があるのに。


 昨夜の DOMMUNE では、1年半前の感染拡大が始まったころから何かと槍玉にあげられ続けてきたライブハウスやクラブの関係者が、自分達の現状とこれからについて話す、というテーマでトークセッションをやっていた。

TOKYO DANCE MUSIC WEEK 2021 - DOMMUNE

 登壇者らは自分が置かれた現状と、政治への不満と期待などを思い思いに話していて、その中には、一部で囁かれている、11月頃を目途にした新型ウイルス対応の緩和に期待を寄せる声もあった。

 しかし、この話もワクチン接種だけに頼った話であり、11月に緩和するという話は時期尚早としか思えない。対応を緩和させるには、NZや台湾のように徹底した検査と隔離でウイルスを市中から排除することが必要だ。デルタの次の変異も起きてるし、検査数が少ない日本でも既にデルタ以外の変異株も検出され始めている。
 昨年7月に、感染者の検出が減ったことを理由にGOTO云々をやった結果どうなったか、2020-21の年末年始頃の感染拡大がようやく落ち着いてきた頃に、東京オリンピックを強行したらどうなったか。検査と隔離を怠ればまた同じことを繰り返すことになる、という懸念が確実にあるはずだ。
 ドラクエIのダンジョンをたいまつだけで進む状態では、そのダンジョンの全体像はつかめない。せめてレミーラを覚えないとまともな対処はできない。積極的検査がレミーラなら、ワクチン接種は、ドラクエI の呪文で言えばエンカウント率を下げるトヘロスで、いくらエンカウント率を下げても、自分がダンジョンのどこにいるかが分からなければ、ダンジョンから抜け出せずに、限りなく出現し続けるモンスターたちに削られつづけて、いつかHP/MPがゼロになる。
 積極的検査で状況を正確に把握しなければ、正確に把握した上で適切な対応をしなければ、収束には至らないことは、米英、そしてニュージーランドや台湾を見れば明らかだ。

 そして、政府やメディア、一部の市民は、音楽イベントや若者、そして飲食飲酒を槍玉にあげたがるが、それらよりも日常的且つ密度の高い状態である、満員電車がずっと放置状態なのだから、それらだけをスケープゴートにしたところで、それにほとんど意味はない。勿論今の状況では基本的に、どんなことでも人を集めることをすべきじゃない。しかし、ならばまず日常的に人が集まる公共交通機関をどうにかしないと話にならない。


 音楽関係者、そして音楽ファン、それらを含めた文化全般について、愛好する、関わる全ての人に言いたいのは、今後もライブハウスやクラブそして音楽、それらを含む文化全般が必要なら、自分で立候補しない人は、それを残す為の政治をやってくれる政治家・政党を選ぶ必要がある。その為には、あと1カ月程度、どこが、誰がそれを一番やってくれるのか、しっかりと見極めて選挙にいかないといけない。ということだ。
 アフガニスタンではタリバンが実権を握り、「イスラムでは音楽は禁止」と言っているという話もある。

これを対岸の火事と考えるのは大間違いだ。流石に日本で音楽全般禁止と言い出す政治家は当面出てこないだろうが、選挙でまともな政治家を選ばないと、新型ウイルス危機が今後数年収まらなければ、今後も満員電車など公共交通は一切放置したまま、ライブハウスやクラブ、飲食店等を槍玉にあげ続け、存続出来ないような状況に追い込んだり、最悪直接的に禁止する、なんて言い出す政治家が、国会議員になったり政府幹部になったりしかねない。


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