先週末はとても忙しかった。と言っても家からは殆ど出ていない。楽しみにしているバイクレースの世界選手権・MotoGPとWorldSBK、その両方の開催が重なり、日本ではドリフト競技・D1GPも開催され、更には、基本的には、土日は現場で楽しんで、をモットーに配信しないDOMMUNEも、土日両方ともDJプレイ配信をしていた。それを全部楽しもうとしたので忙しかったのだ。
スケジュール的には、土日の日中(厳密には金曜の午後も)はD1GPの中継、両日19時頃から24時頃までWorldSBK、アメリカ開催だったMotoGPは日付が変わる頃から翌6時頃までと、モータースポーツはうまいこと時間が概ね重ならなかった。DOMMUNEのDJ配信は土曜が18:00-20:30、日曜が15:00-20:00だった。映像付きの配信ではあるがDJ配信なので、耳はDOMMUNE・目はモータースポーツ、という風に2画面対応で楽しんだ。
土曜のDOMMUNEは屋外からの配信だったが、途中ゲリラ豪雨に見舞われるというハプニングがあってそれに目を奪われたり、DJプレイが良すぎてモータースポーツに集中できない場面もあったが、金曜は台風の影響で仕事がなくなって、ゆっくりできて体調を整えられたこともあって、なんとか予定の全てを消化した。
モータースポーツに限らず、スポーツを楽しむなら生中継で見たい。ネット配信が一般化した結果、昨今はスポーツ中継に限らず、音楽もライブを生中継するケースが増えている。どちらも、現場で楽しむのが一番、現場に行けないなら生中継、が体験の質を向上させる。現場感と即時性が重要、ということだ。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以来、人が密集するナイトクラブの営業が難しくなった。その代わりにDJプレイ配信は選り取り見取りな状況になった。その多くが配信後アーカイブを残すので、生配信では見きらない(聴ききらない)ものを後からチェックすることも出来る。だがやはり、アーカイブを見る(聴く)のと、ライブで生配信を楽しむのでは、DJプレイであっても後者の方が体験の質として上だ。
DOMMUNEを初めとして、DJプレイ配信メディアには、アーカイブを基本的に残さない方針のところもある。著作権の処理などもその方針の理由かもしれないが、ライブ感を重んじる、という方針でもあるように思う。
スポーツや、音楽や演劇などの公演、DJプレイなどを、現場で楽しみたいとは思わない人もいるかもしれないが、多くの人は出来れば現場でと感じるのではないだろうか。なぜそう感じるのか、キーワードは共有だと思う。
若い頃、週4-5ペースでクラブに入り浸っていた、という話は以前にも書いたが、何を求めていたのか、と言えば、誰かと申し合せずフラッと行っても誰か知り合いがいて、時間と場所を共有できるからだったんだと思う。行きつけの飲み屋に毎日のように通う酒飲みもいるが、それとも似た感覚だったんだろう。
人付き合いが苦手、煩わしいという人でも、ライブやクラブには行きたいという人もいる。つまり時間と場所の共有とは、必ずしも他者とのコミュニケーションを求めているわけではないんだと思う。他の客との時間と場所の共有を求めているのではなく、目当てのアーティスト・選手との時間と場所の共有を求めているというケースもあるだろう。
そんな風に時間と場所の共有をすること、できることが、スポーツや、音楽や演劇などの公演、DJプレイなどの鮮度なんだろう。とうもろこしは基本的に茹でて食べるものだが、収穫後すぐなら生で食べてもうまい。トマトなども収穫後すぐに食べると、小売店で売っているものよりも強く甘みを感じる。魚も獲ってすぐなら生食できるが、鮮度が下がると生食はできない。寄生虫対策の為に一度冷凍した方がよい、なんてケースもないわけではないが、食材は鮮度が重要だ。同じ様にエンターテインメントも鮮度は重要で、鮮度には即時性と現場感が強く関わってくる。
鮮度が重要なのは食材やエンターテインメントだけではない。報道だって鮮度がとても重要だ。たとえば選挙の後に、有権者の投票先選びを左右したであろう重要な報道を出せば、その報道は鮮度が低いということになる。鮮度の悪い食材を売る店、鮮度の低い食材ばかり使った飲食店は敬遠されるのと同じで、鮮度の低い報道ばかりをやるメディアは、信頼感が下がることになる。
一昨日・10/2の投稿でも取り上げた、広島の原爆に関する式典で菅が原稿を読み飛ばしたことについて、メディア各社は「事務方の用意が悪く糊で原稿がくっついていたのが原因」という政府関係者の話が嘘だった、という記事は、なぜ10/1まで出てこなかったのか。前提となる嘘を、メディア各社が報じたのは8/6で、それから約2カ月も経過している。この記事を書いた者がこのタイミングまで隠してきたとは言わない。なぜ政府関係者とやらの話を裏付けもとらずにそのまま報じたメディアは、事後的にでも裏付けをしなかったのか。大手メディアが積極的にやらなければならないことを、疑問を持った個人がやらないといけなかったから、このタイミングまでこの種の記事が出てこなかったんだろう。
衆院選よりも1カ月前にこの記事が出てきたことは、辛うじて鮮度を保っている状態で、本来は初報の後すぐに検証されなければならなかった。新鮮な報道とはそういうことだろう。
事例は他にもある。9/28になって、東京オリンピック組織委は、新型コロナウイルスに感染した選手・関係者の入院者数が、当初発表の5倍超だったと言い出した。
東京オリパラ 選手・関係者のコロナ入院者数は当初発表の5倍 組織委が修正:東京新聞 TOKYO Web
大前提として、このようにことを、後出しじゃんけんのように、開催終了から1カ月も経った後に言いだす組織委は全くどうかしている。こんな不誠実な組織は今すぐにでも解体すべきだ。札幌オリンピック招致でも、これまでと同じ様に不正や不誠実なことを繰り返すとしか思えない。
そして、政府や行政やその周辺の発表、言うことを、裏取りもせずにダラダラと垂れ流すだけの状況に、殆どの大手メディアが成り下がってしまっているから、こんな後出しじゃんけんのようなことが起きてしまう。政治と報道が実質的に一体化し、鮮度の低い情報を垂れ流している、としか言えない。
何事においても鮮度、つまり即時性と現場感が重要だ。エンターテインメントの場合は楽しさ、体験の質が下がるだけかもしれないが、鮮度の低い報道と政治によって、この夏、感染爆発と医療崩壊が引き起こされ、複数の人が治療や診療を受けられずに命を落とした。食材や報道・政治に関しては、鮮度の低さは最悪命に関わる。
トップ画像は、トマト 健康 生産 - Pixabayの無料写真 を使用した 。