作業をする時のBGMにはTechnoやボーカルのないHouseが最適だ。ラジオを聴きながら作業をやるという人もいるだろうし、一般的な歌モノの曲を聴きながら、という人もいるだろう。単純作業の場合は自分もそれでもいいのだが、文章を書いたり絵を描いたり、構成を考えつつ動画編集をするなど、思考が必要な作業の場合は、あまり意識をもっていかれないインストゥルメンタルが自分には合っている。
昨日の投稿でも書いたように、新型コロナウイルスの感染拡大以降はDJミックスが選びたい放題、聞きたい放題な状況になっている。昨日は領収書の整理など事務仕事をしながらこのミックスを聞いていた。
Welcome To The 90's | Techno Classics & Remixes - YouTube
Mix のタイトルは Welcome To The 90's | Techno Classics & Remixes だが、00年代に流行った曲も含まれている。Acid House/Techno 成分多め、そして90年代に流行した Bigbeet の要素を少々、と言った選曲だ。Youtubeの詳細欄にもあるように、曲目は
01. Robert Babicz - Welcome To The 90's
02. AWEX - It's Our Future (Carl
Cox's Ultimate Mix)
03. Equus - Lava Flow
04. Der Dritte Raum - Hale
Bopp (Mirco Niemeier Remix)
05. Green Velvet - The Red
Light
06. Renato Cohen vs. Tim Deluxe - Just Kick! (Carl Cox
Mix)
07. Emmanuel Top - Acid Phase
08. Speedy J -
Electric Deluxe
09. Daft Punk - Rollin' and Scratchin'
10.
Josh Wink - Higher State Of Consciousness (Adana Twins Remix Two)
11.
Confusion - New Order (Blade Soundtrack Bloodbath Remix)
12. Green
Velvet - Destination Unknown
13. DJ Misjah & DJ Tim -
Access
14. Da Hool - Meet Her At The Love Parade (Nalin & Kane
Mix)
15. Emmanuel Top - Turkish Bazar (Monomood Remix)
16.
WINX - Don't Laugh (Original Live Raw Mix)
17. Wassermann - W.I.R.
(Sven Väth Mix)
18. The Future Sound of London - We Have
Explosive
19. Armand Van Helden - Koochy
20. Hypetraxx -
The Darkside
21. Azzido Da Bass vs Fatboy Slim - Dooms Night Da
Fuck (KM Bootleg)
22. Westbam - Crash Course
23. Daft
Punk - Burnin'
24. Quench - Dreams 2021 (Extended Mix)
25.
B.B.E - Seven Days And One Week (Yotto Extended Mix)
26. Faithless
- Insomnia 2021 (Maceo Plex Epic Mix)
という内容だ。
結果から言うと、このミックスに含まれている曲はほとんどがインストゥルメンタルだったが、自分にとって事務仕事には向かなかった。何故かと言うと、自分にとって思い出深い大ネタが多数含まれていて、そのような曲がかかる度に、意識を音の方にもっていかれてしまったからだ。90年代以前からTechno/Houseを聞いてきた人なら自分と同じ様に、懐かしい大ネタ連発のMixだ、と感じるのではないだろうか。
しかし、Techno/Houseという音楽のジャンルは、少なくとも日本では所謂マイナーな存在で、テクノポップがチャートに入ってくることはあっても、純粋なTechno/Houseの楽曲がチャートに入ってくることはほとんどない。そんなニッチなジャンルなので、この世代ではない人にとっては、懐かしさを感じられないのは当然のこと、大ネタ連発とすら感じられないかもしれない。それは、自分が50年代の映画を見たら、それがどんなに有名作品でも、主演以外俳優の大半を誰だか知らないのと同じ様なものだろう。
約2カ月前の7/21、その日のDOMMUNEの企画は、DJ SODEYAMAの別名義・The
People In Fog による8年ぶりのアルバム『1977』のリリースに関連した「ハウスミュージック解体新書」だった。1977とは、ハウスミュージック発祥の地とされるシカゴのクラブ・WAREHOUSE
が誕生した年である。
アルバムをリリースしたDJ SODEYAMAやDOMMUNEの代表である宇川
直宏らが、ハウスミュージックの歴史を振り返る内容だった。多分本来は現在までの歴史を振り返るつもりだったんだろうが、推し進行はDOMMUNEの常であり、80-90年代までで殆ど時間を使い果たし、00年代は駆け足、10年代には届かなかったように記憶している。
番組配信時にハッシュタグ
#DOMMUNE のタイムラインに、
HOUSE がテーマになると、Youtubeのチャット欄が昔、Yellow行ってた自分語りオジサンオバサン祭りになるの、なんなんだろか... #dommune
— Monk-E (@Monkeeeeeeeee) July 20, 2021
というツイートがあった。DOMMUNEで配信される企画の多くは、代表である宇川 直宏の趣味趣向が強く反映されていて、また出演者は30代以上がそのほとんどを占めており、確かにあまり若者向けではなく、自分ももう少し若返りを図った方が良いのではないか、とも思っている。また若い人は、00年代以前の話はそんなに興味も湧かなかったかもしれない。だが、ハウスの歴史に関する配信のコメント欄に、日本のハウスシーンにおいて最も重要なクラブの1つである、今はなきYellowの思い出に関する話が多いのはごく自然なことだろう。自分は、このツイートを引用して「羨ましいんだね!」とツイートした。
これも昨日の投稿で書いたことだが、クラブでの体験において、そこでかかっている曲が自分の好みに合っているか、も大事なことではあるが、好きな曲を聞きたいだけなら自分の部屋で好きな曲をかけるか、極端に言えばヘッドホンで一人で好みの音楽を聴いて入ればよい。それとクラブでの体験が明らかに違うのは、勿論音響設備もそうではあるが、アーティストやDJ、そして他の客と、時間と場所を共有する、という体験だ。
過去にYellowでの体験を共有したことがない人が、体験したことがある人達がその話で盛り上がっていても、純粋に面白くないだろうし、妬みのような意味でも面白くないのは仕方がないかもしれない。しかし、他の人が楽しそうにしているのを見て、それを腐すのは決して前向きじゃない。好きにコメントすればいいとも思うが、気に入らないならそれをわざわざ目に入れて、腐すコメントをする必要もない。自分なら、気に入らないならコメント欄をそっと閉じる。Youtubeにはその機能が備わっている。
わざわざああいうツイートをするということは、自分が楽しめない話で盛り上がってズルい!とか、自分も共感できる話をしろ!と言っているように見えたので、皮肉も込めて「羨ましいんだね!」と引用リツイートした。自分にとって大ネタ連発のミックスでも、世代が違う人にとってはそうではないこともある、という話から、そんなことを思い出した。あのMixが懐かしくも楽しくもないなら、そっと閉じればいい。自分も分かる楽しめる選曲にしろ、と言うのはそのDJを尊重していない。
その話から別のことも思いだした。9/29のDOMMUNEは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて公演を見合わせていたワハハ本舗が、10月末から公演を再開することにちなんだ内容の「いつまでもあると思うな!ワハハ本舗」だった。
ワハハ本舗の出し物は、一言で言えば何かのパロディが多い。例えば獅子舞の格好でマイケル ジャクソンのダンスをするとか、谷敬のギャグ・ガチョーンとインドネシアのケチャを掛け合わせり、小津 安二郎の世界観を京劇風にアレンジしたり。配信では、これまでの公演の映像を使ってそれらを紹介していて、クラブミュージックが好きな自分は、DOMMUNEでこの番組を配信していたこともあって、ワハハ本舗がやっていることの多くは、どれも何かのRemixだと感じた。
配信の中でワハハ本舗の主宰・喰 始が、若い人達が、私たちにも分かる曲(ネタ)をやってください、と言ってくることがあるが、それに対して、合わせる気はないから、楽しみたかったら勉強して、と応じると言っていて、まさにRemixと同じだな、と再確認した。
勿論それだけでも楽しめるかもしれないが、Remixも元の曲を知っていた方がより楽しめることは言うまでもない。Remixやサンプリングの元ネタを知らなければ、それがRemixであることも、サンプリングに元ネタがあることも分からない。つまりアレンジの面白さは理解できない。それはカバー曲も同じで、9/21の投稿で紹介したように、リンプビズキット版のフェイスだけでも曲は楽しめるが、それがジョージ マイケルの曲をカバーしていることを知っていれば、リンプビズキットがカバーしたフェイスの面白さは更に高まる。
カバー曲やRemixなどは、コラムやアルバムのライナーノーツなどで解説されることはあっても、ライブやクラブの現場でアーティストやDJがそれをわざわざ説明することは稀だ。知らない人にとっては解説があった方が親切なんだろうが、解説でライブやDJの流れを止めてしまうのは寧ろ野暮だ。
アーティストの中には売れることや対価を目的にカバーやRemixをやる人もいるだろうし、リクエストに応えてくれるDJもいるが、大抵のアーティストは自分がやりたいことをやる。勿論ファンの声に答えるケースもあるだろうが、基本的には、やりたくないことまでファンの声に応じるケースは少ない。自分が楽しめないからと言って、アーティストやDJに自分の好みの曲を演奏させよう、かけさせようというのは、だったら自分でやりなさい、という話になるだろう。
自分は勉強していたつもりはないが、クラブに行き始めた頃、知らない曲でみんなが盛り上がっていたら、どうにかしてそれが何か調べたものだ。自分が楽しいと感じるイベント、気にせずに楽しめる客層のイベント、クラブ、DJなどを、色んなイベントやクラブに行って探したものだ。
そんな風に楽しみを見つける、楽しめるように下地を作る、言い換えれば楽しむための努力をする、ということも確実に必要なことだ。個人的には、そのようなことを努力とは思わず、寧ろそれも楽しみのうちだと思っている。興味のあることを知る、は楽しみだ。
こんな風に余計な思考を巡らせるきっかけになってしまったから、そんな意味でもあのMixは、自分にとって娯楽としてはベストだったが、作業用BGM向きではなかった。
トップ画像は、イヤホン ヘッドホン モバイル - Pixabayの無料写真 を使用した。