ご飯とは米を炊いた状態を示す言葉だが、日本の主食は米でありご飯であることから、食事のくだけた言い方でも”ご飯”という表現が広く使われている。つまり、ご飯には、元々の炊いた米の意だけでなく、食事全般の意もある。
一般的な家庭では食事の用意が出来た際に「ご飯できたよ!」と言う。家族間で「食事ができました」のようなことは殆ど言わない。炊いた米を含まない食事、たとえばパンが主食の朝食、朝食に限らずそばやうどん、中華麺やスパゲッティなどの麺類、もち、ピザ、タコス、ご飯でなくナンやチャパティで食べるカレーなど、とにかく食事は全般的に、炊いた米を含まなくても”ご飯”だ。
法政大学教授 上西 充子は2018年5月にこんなツイートをした。
Q「朝ごはんは食べなかったんですか?」
— 上西充子 (@mu0283) May 6, 2018
A「ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておきます)」
Q「何も食べなかったんですね?」
A「何も、と聞かれましても、どこまでを食事の範囲に入れるかは、必ずしも明確ではありませんので・・」
そんなやりとり。加藤大臣は。
Q「では、何か食べたんですか?」
— 上西充子 (@mu0283) May 6, 2018
A「お尋ねの趣旨が必ずしもわかりませんが、一般論で申し上げますと、朝食を摂る、というのは健康のために大切であります」
Q「いや、一般論を伺っているんじゃないんです。あなたが昨日、朝ごはんを食べたかどうかが、問題なんですよ」
A「ですから・・」
Q「じゃあ、聞き方を変えましょう。ご飯、白米ですね、それは食べましたか」
— 上西充子 (@mu0283) May 6, 2018
A「そのように一つ一つのお尋ねにこたえていくことになりますと、私の食生活をすべて開示しなければならないことになりますので、それはさすがに、そこまでお答えすることは、大臣としての業務に支障をきたしますので」
言葉尻を捕らえて話の趣旨を故意に歪曲し、聞かれたことに答えないこのような手法は、”ご飯”には炊いた米の意と、炊いた米がない場合も含めた食事全般の意があることを用いて、上西がこれを説明したことから、ご飯論法と呼ばれるようになった。
最初のツイートにもあるように、これは当時厚労大臣だった加藤
勝信の国会答弁を評したものだ。しかし、聞かれたことに答えずはぐらかすこのような論法を用いるのは加藤だけではなかった。
- ご飯論法 - Wikipedia
- 隠された不都合な事実に目を向けるための「ご飯論法」という読み解き | ハーバー・ビジネス・オンライン
- 流行語候補:おさらい「ご飯論法」って? 「パンは食べたが黙っておく」すりかえ答弁を可視化 | 毎日新聞
2012年末から2020年9月まで続いた安倍自民政権、そしてそれをそのまま引き継いだ2021年9月までの菅自民政権下での国会における政府関係者の答弁、大臣などの会見などでは、ご飯論法のようなはぐらかしが横行した。
また、2020年1月、政府首相主催の桜を見る会が、首相をはじめとした与党関係者による支持者らの接待の場として利用されていた問題に関連して、共産党 宮本 徹が、安倍の地元事務所が申込書を使って参加者を募っていたことを指摘し、「幅広く募っている、募集していることをいつから知っていたのか」と安倍に質問したところ、安倍は、
私は幅広く募っているという認識でした。募集しているという認識ではなかった
と発言した。募ると募集は同じ意味なので、「募ったが募集していない」はご飯論法の劣化版としか言いようがない話で、首相が自らこんなことを言い、そして会見でそのことを聞かれた当時の官房長官で、安倍の次の党総裁/首相になった菅が、「安倍総理大臣は『事務所が今までの経緯の中で、ふさわしい方々に声をかけているという意味で募ると申し上げた』と答弁しており、そのとおりだと思う」なんて言っていたのだから、この件からも、自民政権のはぐらかし体質、いや誤魔化し体質がよくか分かる。
- 首相答弁でツイッター大喜利状態 「募る」と「募集」の違いをまじめに考えた:東京新聞 TOKYO Web
- 「募ったが『募集』でない」首相発言「そのとおり」菅官房長官 | 注目の発言集 | NHK政治マガジン
そんなことが横行していた、いや今の岸田政権でも同じ様に横行している所為で、そして公選法違反や収賄などを指摘されるとどの大臣も議員もとりあえず否定するが、大抵否定できない状態に追い込まれるというケースが頻繁に起こることなどから、自民政権や与党関係者のどんな言葉も信用に値しないという印象しかない。
「Dappi」関与疑惑のウェブ会社に昨年も自民都連が78万円支出 ツイート指示は否定:東京新聞 TOKYO Web
これは、政府や与党への忖度なのか贔屓か、何故かテレビはほとんど取り上げず、新聞や通信社もほんの一部しか触れていない、自民党に近しい企業が匿名ツイッターアカウントを使って野党などを中傷するデマをまき散らしていた、所謂Dappiの問題(10/20の投稿)について、東京新聞が昨日・11/17に出した続報記事だ。
この記事によると、当該ウェブ関連会社には昨年・2020年も、自民党東京都支部連合会から政治活動費計78万円の支出があったそうだ。自民党都連はこれに関する取材に対して、
党としてツイートに関与したことは一切無い
と言っているそうだ。
ご飯論法を自民党関係者が多用し、質問をはぐらかし聞かれたことに答えないことが常態化していることを考えると、「党としてツイートに関与したことは一切無い」は、党としての関与はなかったとは言ったが、関係者個人の関与がなかったとは言っていない、という意味としか思えない。そういうことにして言い逃れようとしている気がしてならない。
このようなことが明るみに出たら、誠実な政党であれば、もし党として関与していなかったとしても、関係者による関与があったかどうか調べるはずだ。そしてその結果関与はなかったという結論が出ていたら、党としての関与も党関係者の個人的な関与もない、とするのではないか。調査中であれば、党として関与はしていないが、関係者の関与がなかったかどうかは現在調査中、とするのではないか。
信頼があればそんな風に疑ったりはしないが、そう疑いたくなる前歴が幾つも積み重なっている為、言葉の裏側に何があるのかを考えるのは当然だ。党として関与はないと言い訳しているということは、若手議員か秘書など関係者か支持者か、誰か個人が勝手にやったことにして責任を全て負わせて、トカゲのしっぽを切りするつもりなんじゃないだろうか? ヤクザの鉄砲玉と一緒で、出所したら(比喩であり、この場合はほとぼりが冷めたら)幹部待遇とか栄転させるとか、金握らせるとかして。
トップ画像には、cooked food photo – Free Food Image on Unsplash を使用した。