お金を稼ぐことは決して悪いことじゃない。前時代的な資本主義と共産主義の対立では、労働者が資本家を一括りにして嫌悪する風潮があったようだし、日本には少なからずお金儲けを嫌悪する風潮があり、00年代には嫌儲という偏った考え方も存在した。その名残は今も残っている。
日本におけるお金儲けを単純に嫌悪する人たちの背景にあるのは、極端な共産主義的な思考ではなく概ね嫉妬だろう。俺が稼げないのにあいつは稼いでいる、なにかあこぎなことをしているに違いない、のような感覚が大半を占めているのではないか。何かにつけて○○の原価は…と言い出す、所謂原価厨と呼ばれる人達が一部に存在しているが、それも稼ぐことへの嫉妬や嫌悪の発露だろう。これだけしか原価がかかっていないのに、あいつは不当に利益を得ている、みたいな発想が根底にあるんだと思う。
原価はいくらだと騒ぎ立てたり、お金を稼ぐことを嫌悪する人達も、確実に何かしらの原価に利益を乗せてお金を稼ぎ、それで生活しているはずなのに、他人が金を稼ぐことに対して過剰に嫌悪してしまうのは、自分は思うように稼げていない、自分の儲けは不当に少ないなどの思いがあって、それが高じて、俺が稼げないのにあいつは稼いでいる、なにかあこぎなことをしているに違いない、のような感覚に陥るんだろう。
しかし一方で、世の中にはあこぎな話が少なくはないことも事実で、だからお金を儲けること全般を嫌悪する感覚に陥ってしまう人の気持ちも全く分からなくないわけではない。以前にも書いたことがあるが、アパレル業界では常識である、シーズン終盤に70%OFFで処分しても赤字にならないような標準小売価格設定には、強い違和を感じる。詐欺的な情報商材に高額な価格を設定したり、不安を過剰に煽って保険や健康食品などを売ろうとする手法も、それが妥当だとは到底思えない。
だが、だからと言って、それを理由にお金儲け全般を嫌悪するのは極端で、そんな極端な思考をすると、かえって誰かにつけこまれたり騙されたりしやすくなってしまう、とも思う。何が合理的で何が非合理的か、自分の頭でよく考えるクセをつけておかないと、結局足をすくわれてしまう。
しかし一方で、この30年で日本がかなり貧しくなり、その結果あこぎな商売も増えている気がしてならないのも事実だ。何度も書いているが、BS/CSチャンネルのTVCMはもう10年くらい前から、テレビの主なユーザー層であり、お金を持っている高齢者層をターゲットにした、過剰に不安を煽るタイプの保険CMや健康食品等の通販CMが蔓延していて、そこには所謂有名な企業も乗り出している。更に近年は、地上波も日中はそんなCMばかりが目に付く。
以前はパチンコ雑誌などの後ろの方くらいでしか見なかった、開運財布のようなものの通販CMまでTVで流れていて、そんなアコギなCMに出ているタレントは当然嫌悪の対象になるし、そんなCMで成り立っている番組、TV局も嫌悪の対象になるのはごく自然な感覚なのではないだろうか。
少し前に、大手新聞社がヘイト本の類の広告を掲載しているのはどうなのか、という話が話題になった。そのようなことが話題になって以降、あからさまなヘイト本は流石に広告を見なくなったが、それでも未だに極端なタイトル、ヘイトを匂わせる本の広告などは見かける。
TVや新聞もWebに押されるなど資金繰りが苦しいのだろうが、そのような低俗な商品、アコギな販売手法の広告を放送・掲載すると、そのメディア自体の信憑性も疑わしくなってくる。そうでなくても政府や与党に忖度傾向があって信頼性が揺らいでいるのに、それに加えて広告も低俗では、更に信頼性は期待できないと思われても仕方がない。
それと同じようなことは当然Web広告にも感じる。デマや過度に性的要素を含んでいたり、差別や偏見の懸念があったり、不安を煽ったりするなど、怪しい広告が沢山表示されるWebサイトは利用したいと思わない。Webサイトがその広告を選んでいるのではなく、Googleアドセンスの広告などとして、その種の広告が表示されていることもあるが、そのような場合はそのWebサイトだけでなくGoogleの信頼性も揺らぐ。
最近よく触れるのはYoutubeでの動画広告で、年々Youtubeではコンテンツ動画に対するレギュレーションが厳しくなっているのに、Youtubeの広告動画には怪しいものが少なくない状態で、そんな状況を見ると、金を払う側は大目に見られているのではないか、という気がする。大手Web企業は儲け第一の拝金主義的な部分が大抵あって、いつまで経ってもAmazonからあこぎな商品はなくならないし、TwitterやFacebookなども数年前まで、自分たちはあくまでもプラットフォームでしかないという姿勢で、不適切な投稿に対する規制に消極的だった。今は一応、以前に比べれば積極的に対応しているが、それでも生ぬるく、利益最優先で利益のためなら不適切な投稿等を野放しにしても構わない感は今もある。
また、11/1の投稿でも書いたように、日本では同性婚・選択的別姓を認めない党が再び与党に選ばれた。その党は何かにつけ経済経済と言い、経済界も概ねその党支持だ。つまり日本では、人権よりも経済や利権が優先されていると言っても過言ではない状態で、それだって一種の拝金主義だ。
お金を稼ぐこと、お金儲け、そして資本主義を全否定するつもりはないが、何よりも金、カネ、かね、の拝金主義は、間違いなく社会に悪影響を及ぼす。
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