民主制は決して多数決ではないから、多数派にばかり有利で少数派をないがしろにした政治は決して許されない。多数派が少数派をないがしろにすることは数の暴力だ。そのようなことがないように、現代的な民主制/自由主義国家では、万人の法の下の平等、基本的人権の尊重を法で定めている。
民主制では少数派の意見にも配慮しなくてはならないのは確かだ。だがしかし、無視しても不適切とは言えない少数派の意見もある。その意見や主張が多数派なのか少数派なのか以前に、その意見に妥当性・合理性があるのかがまず重要であって、妥当性や合理性を欠く意見であれば、それが多数派だろうが少数派だろうが配慮する必要はない。もし妥当性・合理性が欠けている意見にも配慮しなければならないなら、議論が一向に進まないという状況に陥る。
こじつけや言いがかりのような、妥当性・合理性が欠けているから少数派である意見というのは山のように存在する。たとえば、戦前の日本では当然だった家父長制/父権制を背景にして、未だに「妻は夫に無条件に従うべきだ」みたいなことを言う者も少なからずいるが、万人の法の下の平等・男女同権の観点で言えば、そのような意見は明らかに妥当性・合理性を欠いており、そんな他人の権利を不当に制限しろという意見は、少数意見だろうが多数派の主張だろうが配慮する必要はどこにもない。
昨日の投稿でも書いたように、国民民主党代表・玉木の「まずは外国人の人権について憲法上どうするのか議論すべきで、そういう議論がなく拙速に外国人にさまざまな権利を認めるのは、極めて慎重であるべきだ」なんて話は、まさにその典型的な例だ。外国人の人権を憲法上どうするのか、そんなのは尊重すべきというよりほかない。尊重しなくてよいなんて意見があったとしても、そんなものに配慮する必要はない。玉木は「100%これが正しい、これが間違っているというものではありません」とも言っているが、外国人の人権も日本人の人権同様に尊重すべき、が100%正しく、それ以外は間違いである。
2021年7月の東京都議選期間中に無免許運転で人身事故を起こし、それを隠して再選した後にそれが発覚し、都議会の長期欠席を続けていた、都民ファーストの会・木下 富美子は、都議会による議員辞職勧告決議に抗い続けた。結局は11/22に辞職したのだが、11/9に取材に応じた際には、
厳しい声の一方、ぜひ続けてほしい、力を貸してほしいという声があるのも事実
と発言した。しかし、どのくらいそんな声があるのかは明示しなかった。つまり誰か1人、たとえば家族や親族かもしれないし、木下が議員の立場を失うと共に職を失うことになる関係者がそんなことを言っているだけかもしれない。果たして、そんな場合にそれは議員を続けるべき妥当な理由になるだろうか。
○○という声もある、という場合、その実態はこのようなケースも確実にある。
「『続けてほしい』との声もある」無免許運転の木下都議一問一答 - 産経ニュース
自民党も、同じ論法で同性婚制度や選択的夫婦別姓制度の創設を否定し続けている。10/11の衆院本会議にて、自民党総裁であり首相である岸田も、選択的別姓制度に関して、
国民の間に様々な意見がある。引き続きしっかりと議論すべき問題だ
と述べた。しかし、衆院選公示の前日に行われた10/18の日本記者クラブ主催の党首討論会で、選択的夫婦別姓制度の法案提出について、岸田は9党首の中で唯一、賛成の挙手をしなかった。国連の機関が「差別的」として何度も是正を勧告しているにもかかわらず。
選択的別姓は、その名の通り夫婦別姓も夫婦同姓も選択できる、選択肢を増やすだけの制度であり、これまで通り夫婦同姓がよい人はそれを選択すればいいだけの話だし、選択的別姓制度を否定する人達の意見に、妥当性や合理性のある意見は一切ない。全くない。ゼロだ。なのに、様々な意見がある、と言って、いつまでも選択的別姓制度創設を拒み続けることは適当か。
朝日新聞の「慎重な言いぶり」という表現にも腹が立つ。同性婚制度や選択的別姓に否定的な態度の何が慎重なものか。慎重という表現には、多くの人が肯定的ニュアンスを感じるだろう。朝日新聞に限らず、多くのメディアが同性婚制度や選択的別姓に否定的な、政府や自民党の態度を、慎重な姿勢と言い換えて、その妥当性・合理性のなさを矮小化する。これの一体どこが公正で公平な報道だろうか。
この件に限らず、おかしな話を権力側がしていても、「」さえつければ、無批判に、誤りの指摘もせずに報じても、それで妥当だと思っているメディア・メディア関係者があまりにも多すぎる。 そのような記事は、記事内容を吟味しない人、見出ししか読まない人に対して、適切な話であるかのように感じさせる権力の印象操作に加担している。最早フェイクニュースの類と言っても過言ではない。
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