スクリーンショットによるツイート引用は著作権侵害、という判断を裁判所が示したそうだ。裁判所は2010年代になっても、PCは生活に必需とは言えず借りればいいので生活保護費での購入は妥当でない、という判断を示すような組織だから(2017年11/29の投稿)、この判断を示したのも、実状をよく分かってない裁判官なんだろう。
スクリーンショットによるツイート引用は著作権侵害との判決(栗原潔) - 個人 - Yahoo!ニュース
この記事によると、判断が示されたのは、著作権侵害訴訟ではなく発信者情報開示請求訴訟の要件の一つとして著作権侵害が判断されたものだそうで、さわりだけ説明すると、
- ツイッターには、ツイッター上のコンテンツの複製・修正、これに基づく二次的著作物の作成・配信等をする場合には、ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない、という規約があり、
- 他人の投稿を引用する方法として引用リツイート機能が用意されているので、スクリーンショットによる他人の投稿の引用は正規の手順に則っているとは言えず、規約に反する行為と言えるから、
- スクリーンショットによる引用は著作権法上の正当な引用とは言えない。
- なのでスクリーンショットによる引用を行ったことを理由にした発信者情報開示請求を認めるのは妥当である、
という判断のようだ。
つまり、記事でも指摘しているように、スクリーンショットによる引用をすると、発信者情報開示が認められる恐れがある、ということである。著作権法上の正当な引用になる為の要件の1つである「公正な慣行に合致」というのがあるのだが、「ツイッターが用意した手順を使わない利用は公正な慣行に合致しない」ので、スクリーンショットによる引用は、正当な引用とは言えない、と裁判所が言っているのである。
しかし、これも記事で指摘されていることであるが、ツイッターのシステムを利用せずスクリーンショットによる引用が行われている背景には、
- 元ツイート主に引用されたことを覚られたくない
- サムネールなどもまとめて引用したい
- 元ツイートが消されても証拠が残るようにしたい
- ブロックされていて正規のRT機能を使用できない
などがある。勿論、これらの理由があれば全て適切な引用とは言い難い。たとえば、誹謗中傷を目的としているとか、スクリーンショットしたツイ―トとは全く関係ないことをツイ―トしている、なんてケースであれば、それは正当な引用にはならないだろう。しかし、これらの理由に正当性がある場合は確実にある。なのに、ツイッターが用意した方法に従わないなら適法とは言えない、なんて判断は明らかに乱暴だ。
記事で指摘されている理由に加えて、ツイッターが用意した引用システムで引用ツイートを行うと、ツイートしたアカウントが自らの意思でツイートを削除した場合だけでなく、ツイッターが当該アカウントを凍結した場合などにも元ツイ―トが消えてしまい、又は閲覧出来ない状態になってしまう為、その対策としてスクリーンショットによる引用がなされることだって当然ある。つまり、引用した側の都合を鑑みずにツイッターが元ツイ―トを閲覧できなくしてしまうケースが確実にあるのに、ツイッターの用意したシステムに従え、というのは、全く公平性を欠いた判断だ。
この判断が妥当なのであれば、それはツイッターに限らず、Web上におけるスクリーンショットによる引用全てに影響が出てくる。Webサイトのデータは、紙データと異なり、管理者がサーバーからデータを消極したり、非公開にすると、そのWebページは閲覧できなくなる。新聞で言えば、紙の新聞は発行者が発行した新聞全てを焼いたり廃棄することは困難だが、新聞社がWebで公開している記事は、新聞社の一存で記事を削除したり閲覧できなくすることが可能だ。
Web上のデータはスクリーンショットによる引用や、Wayback Machineのようなインターネットアーカイブサービスを利用しなければ、新聞社などが記事を削除したり閲覧できなくした場合に、引用した記事や文章が存在したことを証明できない。新聞社などメディア各社もツイッターやブログなどへの引用ボタンなどを設けているが、もし新聞社などが利用規約に「こちらが用意した方法以外での引用、スクリーンショットによる引用は認めない」などとした場合、それに従わなければ違法ということになったら、新聞社などメディア各社は、誤報や都合が悪くなった記事などを恣意的に消し去ることが出来るようになってしまうのではないか。
そんな観点で考えても、スクリーンショットによるツイート引用は著作権侵害に当たる、という裁判所の判断は、全く看過できるものではない。