スキップしてメイン コンテンツに移動
 

イライラは伝染する

 あるCSスポーツ番組のメインパーソナリティーを努める女性について調べたら、「なんであんな何も知らないバカ女に、○○(競技名)の番組をやらせるのか」みたいな個人ブログが出てきた、よくもそんな中傷としか言えない悪態を、誰でも見られるところに書きなぐることができたものだ、という話を一昨日の投稿で書いた。

 そのようなことをネットへ書き込んでいる人たちは、多分テレビの前でくだを巻いている、居酒屋などで友達などと勢いにまかせて悪態をついている、くらいの気分なんだろう。でも、テレビの前でくだを巻くのや内輪で悪態をつくことと、誰でも閲覧可能なネットへ同種のことを書き込むのは同じではない。前者は所謂オフレコだが、後者は明らかにオンレコだ。自らの発言を文章にして記録し、つまりログを残し、しかも情報開示請求があれば、どこの誰が発信したかもすぐに分かる。
 大抵の人は何の匿名化工作もしていないだろうし、ある程度匿名化していたとしても絶対にバレないなんてことはない。例えば、違法に漫画をアップロードして利益を上げていた男も結局捕まった。


 現代社会? いやいつの時代も人間の社会は理不尽なことだらけだ。しかも特に日本では、社会が理不尽なのは当然だからそれに合わせろ、耐えてこそ一人前だ、のようなことを子どもの頃からすり込まれる。だからみんな大きなストレスを抱えている。その結果、とげとげした人も多いし、精神を病む人も少なくない。
 勿論、他人に迷惑をかけるようなことは慎むべきだが、たとえば、少しの生活音でうるさい!と怒鳴りこんでくるような、迷惑だと過剰に言う人も少なくない。そしてこの国には我慢することこそが美徳かのような風潮があるので、そんなことでも更にストレスが溜まっていく。

 そんな風に溜まったストレスを他人にぶつける人は少なくない。所謂八つ当たりというやつだ。イライラを他人にぶつける人が周りにいると、ぶつけられた人もまたイライラしてしまい、そしてまたその人が別の誰かにそのイライラをぶつけたりする。つまりイライラは伝染する
 ツイッターを見ていると、それがかなりよく分かる。フォロワーの多い人、著名人などには当然数多くの反応があり、分母が大きければ、冒頭で触れたような対面では到底言えないような悪態を平気でつく人がやってくる確率も上がる。中にはそんな所謂アンチコメとばっかり戦っている人もいて、それはそれで個人の自由なのだが、そのようなタイプの人はイライラしているので、え?それは決して所謂アンチとは違うでしょう?みたいなコメントにもイライラをぶつけたりしているのをよく見る。
 勿論、アンチなんて放っておけ!全部無視すべきだ、なんて全く思わないが、イライラをぶつけられたとは言えイライラしている人を見ているのも結構辛いし、その人にとって少しでも気に食わない反応をしてしまうと、こちらにもイライラをぶつけられたりするので、あんまりにもアンチとばっかりやり合っている人は、フォローを外すなど距離を取るようにしている。

 個人的には、こんなコメントをしてきた奴をブロックしてやった、的なうさ晴らしをしている人もあまり見たくない。ブロックするのは構わないが、わざわざそれを誇示するのもどうか。それはある種のストレス軽減方法なんだろうが、ちょっと浅ましい気がする。
 日本の右傾化を嘆き、政治やメディアの異様さを指摘しているのに、所謂ネトウヨは即ブロックします、みたいなことをプロフィールに書いている人、またはその手のコメントをしてきたアカウントをブロックしてやったと誇示している人たちは、一体何がしたいんだろうか。勿論、イライラさせられる反応から距離を置きたいという気持ちはよく分かる。弱小アカウントの自分のところにだって、何でもかんでも当たり散らすイライラの塊がしばしばやってきて、その度に自分もイライラするし、嫌な気分になるしストレスが溜まる。
 でも、今の日本の状況は、確実に日本の有権者の半分以上が支えているわけで、あんまりにもおかしなことを言ってくる人たちは少数派だったとしても、大半はその手の人たち予備軍な状態だし、そんな状況で、同じ考えの人たちだけに向けて情報発信しても、状況を変えることはできないのではないか。別の言い方をすれば、アホみたいな反応をしてくる人にこそ、右傾化の異様さ、政治やメディアの惨状を伝えなればならないのではないか。なのにそのような人たちをブロックしてしまったら、状況は変わらないのではないか。
 だから自分は、ブロックするのは所謂スパムアカウントだけで、どんなにおかしなことを言ってくるアカウントも、ミュートしたり通報したりすることはあっても、基本的にブロックしないことにしている。

 イライラさせられるのは嫌なものだが、それに対してどんな措置を講じるか、はかなり重要だ。


 感情やイライラの伝染と言えば、昨日・2/11、アメリカ政府はロシアがウクライナへの空爆を開始する恐れがあるとして、ウクライナ国内にいる米国民に対して48時間以内の退避を勧告した。それと歩調を合わせたかのように、日本政府も同様に退避勧告を出している。

 もし本当に戦争が始まる恐れがあるんだとしたら、退避勧告を出す必要があるだろう。しかし、日米等がこのような退避勧告を出したことが、余計に緊張を高めてしまう恐れだってある。実際には戦争が今すぐに始まるような状況ではなかったのに、このようなことが引き寄せる恐れもあるのではないか。ロシアがウクライナ国境付近に軍を集めているという状況は事実のようだから、警戒を高める必要はあるんだろうが、48時間以内の退避勧告だなんて果たして妥当なんだろうか。そもそも、ウクライナの人たちはどこにも退避することなんてできないのに。

 この日米の退避勧告が紛争の引き金なるかは分からないし、実際に戦争が始まっても、それが引き金だったと絶対的に結論付けることもできない。しかしここから個人的に学びたいことは、イライラさせる人に対して、同じ様にイライラした対応をしていると、更にイライラさせる人を惹きつけかねないということだ。誰かに当たり散らしたい人の内の少なくない人たちは、確実に反応を求めている。イライラに対してイライラで返すことは、相手の望む反応を返しているとも言える。だから過剰反応せずに、冷静な対処を心掛けないと状況は改善しないだろう。

 そうは言っても、人間誰しも感情があるもので、当然笑いもすれば怒りもするし悲しくもなる。感情を過剰に抑え込もうとすれば、それもまた軋轢を生み最終的に破綻してしまうだろうから、バランスの感覚を忘れないようにしたい。



 トップ画像は、“怒” の検索結果 | ちょうどいいイラスト を使用した。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。