一見別なように見えても、実は同類であることをたとえて、同じ穴の狢と言う。基本的に、まともに見えるがまともでなく、程度の悪い個体などと同じである、のような、否定的な意味合いで用いられる。
狢・むじな とは、狸のことで、日本ではたぬきは人を化かす存在と認識されていて、むじなと表現する場合は、そんな、人にわるさをするたぬき、というニュアンスなのだそうだ。穴とはたぬきの巣のことだ。たぬき同様に狐・きつねも、日本では人を化かすと言われており、コトバンクの解説によると、昔は同じ穴の狐という表現が一般的だったそうで、近代以降それが同じ穴の狢に変化していったのだそうだ。
これはあくまで勝手な推測でしかないが、キツネはお稲荷さんとして、神社で狛犬同様に神の使いとして扱われていることも多く、近代以降は国家神道が推進された為に狐を悪者として扱うことが一部で敬遠されたのかもしれない。そんなことも同じ穴の狐が同じ穴の狢へ変化した要因の一つなのかもしれない。
この数日、毎日戦争について考えている。他のことを考えようにも、目の前に深刻な事態と懸念がある以上、それを考えずにはいられない。一体何が ”同じ穴の狢” なのかと言えば、それはトップ画像で一目瞭然だろうが、平和維持活動と称してウクライナへ侵攻したロシアと、それに対して抗議・非難をしているアメリカと日本だ。
日米外相「侵略」と非難 ロシアのウクライナ攻撃に:東京新聞 TOKYO Web
2/26、日米外相が電話で会談し、ロシアのウクライナに対する武力攻撃を「侵略」と表現して強く非難した、という内容である。まず日本については、2/24の投稿でも示したように、平和維持活動と称したロシアのウクライナ侵攻を侵略と非難する一方で、現在国会で防衛大臣や首相が、敵基地攻撃能力の保持と称して、攻撃を受けるより前に相手国を爆撃することもやぶさかでない、って言っている。これは小学生にでもわかる明白で単純な矛盾だ。
これが、日本はロシアと違ってまともなようで実は同類である、つまり同じ穴の狢である、と言える根拠だ。
米国はどうかと言うと、イラクは大量破壊兵器を隠し持っている!と言って、2003年にイラクへ軍事介入した。しかしイラクの大量破壊兵器の保持に関する物証・決定的証拠が見つからなかった。これだけでも既にアメリカもロシアと同じ穴の狢と言えるだろう。
米国はロシアのウクライナ侵攻に関連して、ロシアの侵攻は「ウクライナの(親米欧の)ゼレンスキー政権転覆と傀儡かいらい政権樹立が目的だ」とも言っている。
ウクライナ侵攻「目的は傀儡政権の樹立」と米国防総省 ロシア軍が首都近郊の空港を占拠、チェルノブイリも掌握:東京新聞 TOKYO Web
今の状況を見る限り、ロシアはウクライナ領内の親ロシア派が多いとされる地域のみならず、他の地域でも軍事行動を行っているようで、平和維持活動とか、ロシア語話者・親ロシア派の保護なんてのは口実に過ぎず、実質的にウクライナ全土の支配を目論んでいるようにしか見えない。
つまり、米国の「ウクライナ侵攻の目的は傀儡政権の樹立」という話は、その通りなんだろう。しかし米国がそのようにロシアを非難したところで、米国もこれまでに世界中で、特にベトナムや南米では戦後も傀儡政権を立ててきたのだから、ロシアからしたら、というかプーチンにしてみれば「だから何?お前たちも散々やってきただろ?」でしかないのではないか。
ベトナム戦争などはまさにその典型的な例だ。フランスの植民地支配が1954年に終わると、ベトナムの共産化を防ぐことを目的にアメリカは傀儡政権(南ベトナム)を樹立して支援し、1960年代に北ベトナムとの間でベトナム戦争に発展すると、当然のように軍事介入した。結果論かもしれないし、決してアメリカだけがベトナムの状況を悪化させたわけではないかもしれないが、アメリカがベトナムに傀儡政権を樹立して、それが結果としてベトナム戦争を招き、親米派らの保護を目的とした米軍の積極的介入によって、同国内で甚大な被害が発生したことは否定できない。
やはり米国も結局は、現在ウクライナへ侵攻しているロシアと同じ穴の狢なのだ。
だからロシア、いやプーチンにしてみれば、アメリカや、イラク戦争やベトナム戦争に加担したイギリスやオーストラリア、そして日本などに非難されても「だから何?」と言えてしまうのだ。
プーチンはウクライナへ侵攻する前の宣戦布告とも言える演説の中で、そのようなことに触れ、アメリアの過去の行いなどを批判していて、それで自らの決断を正当化しようとしていたように見えたが、アメリカを批判するなら自分が同じことをしたらダメだろ?という感しかなかった。しかしそれはアメリカにも同じことが言える。
でも、だからと言ってロシアの現在の軍事行動は批判・否定できないということではないし、寧ろそれでも積極的にダメなことはダメだ、と言うべきだ。しかしその一方で、アメリカも日本もロシアを反面教師として、今後同種の振舞いは慎むべきだし、過去の間違いを棚上げせずに認め、今後は一切しないと明確に示すべきだろう。そのような態度が、ロシアへの批判・非難に説得力を生むことになる。
自国政府がロシアと同じ穴の狢ならば、有権者・国民はそれも同様に批判して正さないとならない。他人のことばかり注目して、自分の国のことには目を向けない、なんてのは愚の骨頂である。
現在報道やSNSなどで、ロシア国民が逮捕される覚悟で反戦デモをやり、ロシアのスポーツ選手や著名人などが、自身や家族の危険を承知の上で反戦を訴えている様子が伝えられている。日本人も、自国政府が他国に非常識な軍事行動をしかけぬように、敵基地攻撃能力の保持と称して先制攻撃を正当化しようとする自民政府を明確に否定し、早急に引きずり降ろさないと、いつかロシアの二の舞いになってしまうだろう。