2017衆院選か2019参院選だったか、質問に答えていけば投票すべき党が分かるWebサイトを大学生有志がつくった、と、どこかのWebメディアが取り上げていて、記事の中で代表者が「このサイトさえ見れば○○分で選挙が分かる、みたいなサイト作りました」のようなことを言っていて、とても危なっかしいと思った。
確かこのブログかツイートで同じ様なことを言った記憶があるのだが、少し記憶が曖昧で、それを見つけることができなかった為、詳細には記憶違いもあるかもしれない。
このサイトさえ見れば選挙が分かる、なんてのがなぜ危なっかしいのかと言えば、物事の評価は決して1つでなく、視点や立場が変われば評価も変わる、からだ。勿論、そのサイトを作った人たちは充分に情報がフェアになるように留意してはいたんだろうが、それでもそこには誰かのの主観が少なからず投影される。例えば、人となりもよく知る人物で、日頃から共感するところの多い人物の主観であれば、それを主に参考にすることもよいのだろうが、厳しく言えばどこの誰かもよく分からない見知らぬ人の主観を、鵜呑みにしてしまうのは危険ではないだろうか。最悪騙された、なんてことにもなりかねない。
つまり、「このサイトさえ見れば○○分で選挙が分かる、みたいなサイト作りました」のようなことを言うと、最悪誰かを騙すことにもなりかねない。選挙における投票先を1つのサイトを十数分見ただけで決める、なんてのは非常に危うい。複数の情報ソースに当たることは最低限必要だ。
これさえ見れば大丈夫!
みたいなものは選挙に限らずとても危うい。NHKは、2015年4月から2021年3月まで、「これでわかった!世界のいま」という、世界情勢を分かりやすさ重視で解説する番組を放送していた。その番組が、警察官が黒人に対して不当な暴力を振るい殺してしまうケースが起き続ける状況への抗議活動・Black
Lives
Matter、所謂BLMに関連して、黒人やデモ参加者は暴力的と強く示唆する表現のアニメーションを放送し、強く批判されたのは、2020年6月のことだった。
- これでわかった! 世界のいま#問題を指摘された事項 - Wikipedia
- NHK(日本偏見協会)(2020年6/10の投稿)
この番組だけを見て、世界情勢や社会問題を分かったつもりになっている人がいたら、そんな言い方は少し極端だが、この番組を、世界情勢や社会問題を知る主な情報ソースにしていた人も少なからずいるだろうか、そのような人の中には、BLM=暴力的
のような認識を持ってしまった人もいるだろう。
番組は翌週の放送で当該表現について謝罪したようだが、当該放送を見た人が全員翌週の放送を見るとは限らないし、その影響は完全には消すことは出来ない。
NHKのこの番組以外にも、情報番組なんてのはどこも似たり寄ったりで、ワイドショーや時事問題バラエティー番組は、どれも危なっかしい感じが漂っている。何事においても、分かりやすさをウリにするものにはある種の警戒感をもって接するべきだ。勿論、公正公平・フェアな噛み砕き方で分かりやすく物事を伝えている人・メディアも確実にいる/あるが、分かりやすさをアピールして注目を集め、恣意的な見解や主張を広めようとする人・メディアも確実にいる/ある。
分かりやすさの裏には短絡的な思考が隠れている恐れが常にある。銀座に店を構えるロシア食品販売店が、こんなツイートをしていた。
当店をご利用のお客様へ pic.twitter.com/zWzxGFOLlu
— ロシア食品専門店 “VictoriaShop” (@victoriashop_ru) March 2, 2022
もしかしたら、実際はこの看板が壊されたのは、ロシアのウクライナ侵攻とは関係ないかもしれない。しかし、日本にも少なからず在日朝鮮人や在日中国人、東南アジアからの実習生や留学生、黒人などに偏見の目を向ける、外国人差別・民族差別・国籍差別を厭わない者がいて、国会議員の中にすらそんなのがいるのを考えると、彼らの懸念は決して邪推とも思えない。
やはり、ロシアのウクライナ侵攻に関連して、ロシア人・ロシア文化に関わる者というだけで嫌悪する人が少なからずいるんだろう。そんなのは短絡的な思考であって、分かりやすさに毒された愚かな人としか言いようがない。
ウクライナから避難のアフリカ人留学生ら差別か 列後回し、越境拒否 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル
これは、ウクライナから国外へ避難しようとするアフリカ人が、行列の後ろに回されたり越境を拒否されたりしたとの報道が相次いでおり、アフリカ各国から懸念の声が上がっている、という朝日新聞の記事だ。
果たしてこのようなことは、日本にとって対岸の火事だろうか。前段で書いたような、国籍や民族性に対する短絡的な思考、偏見、蔑視があり、そして、SNS上にも外国人差別や蔑視を厭わないバカ共が少なからずいる。また、入管では収容所に対する暴力が行われ死者まで出ている。警察官も、特に警視庁管内では、見た目が大和民族でないというだけで、職務質問や持ち物検査の強要を平然と行う。さらには、2019年には台東区で、大雨が降る中、区民でないという理由で、路上生活者を避難所から締め出すということも起きている。そんなことから考えれば、このようなことが日本でも起きてしまう恐れは確実にある。
【お詫び】3/21(月)開催予定の第30回定期演奏会にて演奏する予定だったチャイコフスキー/序曲「1812年」は現在の世情を踏まえて演奏中止となりました。楽しみにしていただいていたお客様には大変申し訳ありませんがご理解の程、よろしくお願いいたします。 pic.twitter.com/5PVYHk1TMj
— 明石フィルハーモニー管弦楽団 (@tac0phi1_akash1) March 1, 2022
この明石の管弦楽団のツイートに対して、ロシアの音楽だから排除するのは妥当なのか?という意見が多く寄せられていた。
昨今、芸能人や音楽アーティストの不倫や薬物事案などが発覚すると、予定していた公演がキャンセルされたり、放送予定だった番組が変更されたり、楽曲の公開が停止されたり、CDが店頭から撤去されたりする。そのようなことには少なからず異論があり、自分も、CM契約が解除されるとか何かのキャンペーンが中止されるなどは仕方ないにしても、関わった作品を全て人目につかないようにするのはやりすぎだ、と思っている。
だから、このツイートについても、演奏を中止する必要はないだろう?
と思った。しかし、この判断の背景をこのように推測し解説する人もいて、もしそれが事実なら、演奏中止の判断も仕方がないか?とも思えた。
ロシアの曲だからという理由で演奏を控えることには強い違和感がありますが、この曲はロシア帝国と西欧との「戦争叙事詩」であり、砲声をとどろかせる演出もあるため(もちろん普段はドラムで代用)、その点で演奏をはばかったということであれば理解できます。 https://t.co/jfsWDl2lyB
— 向川まさひで (@muka_jcptakada) March 2, 2022
ただ、「現在の世情を踏まえて演奏中止」 とだけ説明したら、ゆるふわで流された、かのように見えてしまうのも仕方がない部分はある。なぜその曲を演奏中止にすべきという判断に至ったのか、をもう少し詳しく解説しないと、管弦楽団や音楽関係者にとって、その曲がどんな曲でどんな背景を持っているのかは説明不要でも、それ以外の人にとってそれは一般常識とまでは言えないからだ。
この投稿の趣旨は、分かりやすさを謳うものには注意が必要、ではあるが、誤解を生まぬように、ある程度分かりやすく解説することもまた重要だ。
トップ画像には、仕事完了のイラスト – イラストストック「時短だ」を使用した。