責任は私にある、と言うだけで一切責任を取ろうとしない男を8年も首相にしていたんだから、厳密に言えば、その男をトップにする政党を与党に選び続けていたんだから、そして、その男が責任もとらずに政権を投げ出したにもかかわらず、それでもまだその党が与党に選ばれ続けているのだから、日本人は責任を軽視する国民性と言えそうだし、もしかしたら、責任の概念そのものをよく理解できていないのかもしれない。
トップ画像を見れば、この投稿で何を書こうとしているのかは一目瞭然だろう。そこでまず最初に問いたい。天皇は戦争指導者ではない!
とか、天皇に戦争責任はない!
と言う人たちの殆どは、天皇は素晴らしい人物である、と称賛していると思うのだが、昭和天皇が戦争指導者でなく責任もないなら、昭和天皇は何の力もない単なるお飾りだった、ということになるだろうし、それは、昭和天皇は何の力もない無能だった、と言うことにもなるが、彼らはそれでいいんだろか。
また昭和天皇に戦争責任がないなら、当時の軍幹部や政府首脳は天皇を言いくるめて戦争遂行のために利用した人たちということになるので、厳しく非難すべき存在ということになるだろう。しかし彼らの殆どからは、単なるお飾りだった昭和天皇に戦争責任はなく、戦争責任は昭和天皇を戦争に利用した当時の軍や政府首脳にある、のような主張や、当時の軍幹部や政府首脳を厳しく批判するような言説は聞こえてこない。
このようなことから考えると、昭和天皇の戦争責任を否定したい人たちは、責任の概念そのものをよく理解していないか、分かっているのに自己都合に合わせてねじ曲げている、と言えそうだ。
トップ画像の件には幾つかの要素がある。大雑把に説明すると2つの問題があり、1つは日本側のバカげた抗議であり、もう1つはウクライナ側の短絡的な対応だ。
ことの発端は、 Ukraine / Україна @Ukraine という、ウクライナ政府公式を名乗り、ツイッターの公式マークもついているツイッターアカウントが、トップ画像左を含む、ロシアのウクライナ侵攻に関する動画をツイートしたことにある。それを見た日本人の一部が「昭和天皇をヒトラーやムッソリーニと同類扱いするとは何事だ!」と言い出した。それを受けて、在日ウクライナ大使館や、在日ウクライナ大使のツイッターアカウントが、@Ukraine は歴史認識が足りない不適切なツイートをした、と言い出した。
セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使 @KorsunskySergiy
在日ウクライナ大使館のツイートの方はかなり不可解で、@Ukraine
は現在のウクライナ政府と関係がないツイッターアカウントだ、と言っているのに、その投稿についてなぜか、在日ウクライナ大使館のアカウントが謝罪している。政府と無関係なアカウントの行為を政府機関が謝罪する、というのには強い矛盾を覚える。
在日ウクライナ大使館のアカウントが ”当アカウントは” とツイートした後に、当アカウントとは自分のことではなく
@Ukraine
のことだ、と言い出しているのもよく分からない。一般的に日本語で当〇〇、例えば当社とか当校と言えば、それは自分たちのことを指す。ウクライナ大使館と言えど、在日大使館なので日本語に明るくないとは思えない。そこから推測すると、最後のツイートは後付けで、在日ウクライナ大使館は現在ではウクライナ政府とは関係がない、と言っているようにも見える。当該アカウントは、とタイプすべきところを、当アカウントは、とミスタイプしている可能性もあるが、ならば、当アカウントではなく当該アカウントの間違いで、@Ukraine
のことを言っている、と訂正するだろう。
しかも、在日ウクライナ大使館のアカウントは
@Ukraine
は今のウクライナ政府とは関係がない、と言っているが、ならばツイッターが公式マークをつけているのはおかしいし、それはツイッターの怠慢ということになるだろう。そしてウクライナ政府は公式マーク取り消しを要請するのではないだろうか。しかしそのような動きは一切見られず、@Ukraine
の公式マークは今でもついたままだし、詳しくは後述するが、日本政府もそれをウクライナ政府公式ツイッターアカウントとして扱っているし、それによって当該動画のツイートは削除され、ヒトラー・ムッソリーニ・昭和天皇から昭和天皇だけが削除された右の画像に差し替えられたツイートにあらためられた。また現時点では、@Ukraine は今のウクライナ政府とは関係がない、という扱いはどのメディアもしておらず、どのメディアもウクライナ政府公式アカウントとして扱っている。
このウクライナ側の対応は、引き出せる支援はなんとしてでも引き出したい、のような思いが背景にあり、日本人の一部が不快だと言うのならお望み通りに削除してやろう、それで支援が継続するならそれでいい、くらいの判断なのかもしれないが、こんなことをすれば、ウクライナは東アジア/東南アジア諸国からの信頼を失うことにもなりかねない。
なぜなら、一部の日本人の抗議を受けて、第二次世界大戦時の侵略者から日本だけを削除するということは、ウクライナはヨーロッパにおける侵略行為は糾弾するが、アジアにおける侵略行為はなかったことにしている、ようにも見えるからだ。それは白人に対する侵略は否定し、アジア人に対する侵略は否定しないという、一種のアジア差別のようにも見える。場合によっては非白人全般への差別とも認識されかねない。それは拡大解釈かもしれないが、しかし世界は未だに、それが拡大解釈だと切り捨てられないような状況にある。
在日ウクライナ大使館のツイッターアカウントは、その懸念を後押しするような、こんなツイートもしている。
この「よもの海みなはらからと思ふ世になど波風のたちさわぐらむ」は、四方八方の海で暮らす人類はみな同じ兄弟姉妹なに、どうしてその人達と波風を立てて争うのか、という内容で、明治天皇が日露戦争の頃に詠んだ歌なのだが、昭和天皇が日中戦争の頃に引用した歌でもある。昭和天皇がこれを引用した頃の日本は、日中戦争・つまり中国への侵略戦争の真っ只中で、明らかに日本軍が中国で侵略行為を行っていた。
つまり、この歌は字面だけを見れば平和を希求する歌とも思えるが、しかし実際には、侵略者であるプーチンが、我々は平和維持の為に戦っている!と主張しているのと同じような側面を持つ歌なのだ。
在日ウクライナ大使館は、そんな歌をこの件の中で持ち出しており、歴史に関する認識が不足しているのは誰なのか、がよく分かるし、これでは中国に対してロシアを支援してくれ、と煽っているようなものでもある。東南アジア諸国だって、日中戦争から続く太平洋戦争の中で日本の侵略を受けているんだから、これを平和の希求なんて言われたら、間違いなく肯定的には受け取らないだろう。
明日の投稿・その2 へ続く。