昨日の投稿、侵略と戦争責任 その1 では、トップ画像の件、ウクライナ政府がツイートしたロシアによるウクライナ侵攻に関する動画に右の画像が含まれていたこと、日本人の一部がそれに抗議した結果、左の画像に差し替えられたこと、それにまつわるウクライナ側、在日ウクライナ大使/大使館の反応などについて書いた。
ウクライナ側の対応も決して妥当とは思えないのだが、実際のところウクライナ側の対応については、それほど強く非難する気はない。なぜ1日分の投稿を使ってそれを説明したかと言えば、それは日本側の対応/反応のおかしさを説明するのに不可欠だからだ。
当該動画を含むツイートが投稿された後、昨日の投稿でも書いたように、日本の右派を中心に、「昭和天皇をヒトラーやムッソリーニと同類扱いするとは何事だ!」と言い出した。それを受けて当該動画を含むツイートは削除され、左の画像に差し替えられた動画を含むツイートにあらためられた。
このことについて毎日新聞は、次の記事を4/25の朝に掲載し、それを紹介するツイートもした。
ヒトラーと一緒に昭和天皇の写真 ウクライナ政府が動画から削除、謝罪 | 毎日新聞
現在当該記事の最後には、
この動画を巡っては、自民党の佐藤正久外交部会長が24日、自身のツイッターで日本の外務省に対応を要請したと明らかにした。その後、佐藤氏は「外務省からウクライナ政府に抗議、削除要求し、問題の動画は削除されたようです」と投稿した。
とあるが、記事のリンク先にしてある Wayback Machine に保存されている履歴を見れば分かるように、当初この部分は記事にはなく、これは後から付け足されたものである。佐藤が当該ツイートをしたのは、ツイートのタイムスタンプによれば、4/24の22:20ころだ。佐藤はこのツイート以前にも、外務省から抗議させることを示唆するツイートをしている。
つまり、毎日新聞は外務省や内閣の記者クラブに所属するメディアであるにもかかわらず、外務省や内閣記者クラブなどに取材も行わずに、日本国内のネットユーザーなどから批判が高まったことを受け、ウクライナ側が当該画像を削除して謝罪した、という記事を書いたのだ。速報と捉えることもできそうだが、毎日新聞の記事は取材もせずに書かれたコタツ記事とも言えるし、しかも実際には日本政府が抗議したことでウクライナ側が削除したにもかかわらず、ネットユーザーなどからの批判によって削除された、という、事実とは異なるニュアンスで書かれた記事とも言える。実際にSNSの日本語による投稿で指摘が複数なされたのは事実だし、ネットユーザー”など”
としているので、そこには日本の政治家や政府も含まれる、とも解釈はできるが、しかし ”など” と書くなら、ネットユーザーなど、ではなく、日本政府など、日本の政治家など、とするのが妥当だろう。
毎日には、この件にかかわらず、特に日本の政治絡みのことになると、上辺だけにしか触れない他人事な記事を書くイメージしかない。
日本政府がこの件をどんな風に捉えているのか、認識しているのかは、4/25の官房長官会見を見るとよく分かる。
令和4年4月25日(月)午前 | 令和4年 | 官房長官記者会見 | ニュース | 首相官邸ホームページ
4/25の会見は、官房長官の松野ではなく副長官の磯﨑が行っている。磯﨑はニコニコ記者からの質問への答弁の中で、ハッキリとヒトラーやムッソリーニと昭和天皇を同列に扱うのは不適切だと言っている。また、産経記者が質問の中で、戦前の日本はファシズム(ナチズム?)や全体主義であったという誤解が世界に根強く残っている、という趣旨のことを言っているが、磯﨑はそれを否定せず、否定するどころかG7全体でそれに対処していかなくてはいけない、という趣旨の答弁をしている。
これでは、東アジア/東南アジア諸国の対日感情が悪化することは必至だ。こんな政権を日本の有権者が選び続ければ、政府だけでなく、日本人は皆そんな認識で、また再び過去の過ちを繰り返しかねない、と思われ続けるだろう。ウクライナの動画にはムッソリーニやヒトラーも取り上げられたが、ドイツ政府やイタリア政府がウクライナへ抗議した、なんて話は一切聞かない。つまり日本だけが過去の戦争に向きあえていない、だから愚かにも抗議なんてことをやる、としか言えない。
日本政府がこのような見解を示したことで、海外メディアもこの件を取り上げ始めている。つまり、この件は決してウクライナと日本だけの問題ではなく、世界中に知れ渡る、ということである。
Ukraine removes Hirohito from video after Japan protests - ABC News
Ukraine Apologizes to Japan for Comparing Emperor Hirohito to Hitler on Twitter - Bloomberg
付け加えると、今の政府や自民党ばかりが狂っているのかと言えばそうでもなく、野党第一党の立憲民主にも、同じようなことを言っている議員がいるのだから、日本の病は深刻である、としか言いようがない。
立憲民主党がこれをこのまま放置するんだとしたら、少なからず既存の支持者は立憲民主党から離れるだろう。昨年の参院選の結果が芳しくなかったことから、立憲民主党は保守層へアピールするような姿勢が少なからず見える。しかしそんなことをしても、保守層は立憲民主党にはなびかないだろうし、逆に既存の支持者が愛想を尽かすだけなのではないか。
一部の日本人や政治家の反応、そして政府の対応、更には野党第一党にも同類がいて、今のところ野党第一党は放置したまま、ということを見れば、日本の病は相当深刻であることがよく分かる。