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賃金は下がりジャンプは1.4倍になった

 少年ジャンプと言えば、誰もが知る少年マンガ誌、いや青年向けや少女・女性向けも含めたマンガ誌にとどまらず、日本の雑誌としても有数の発行部数を誇る。トップ画像は、ジャンプが653万部という最高部数を記録した、1994年の年末発売の1995年3-4合併号の表紙だ。

 ただ、少し調べてみると、このジャンプの653万部は日本の雑誌としての発行部数歴代トップではなく、発行部数歴代トップは資生堂の愛用者向け雑誌・花椿が1960年代に記録した655万部なのだそうだ。

花椿の歴史 | 花椿について | 花椿 HANATSUBAKI | 資生堂

 しかしこれについて言及しているWebサイトはあまりなく、上記の公式サイトにもいつ発売の号がそれに当たるのかの詳しい情報もないため、その詳細や真偽はよくわからない。
 一方で少年ジャンプは、ドラゴンボール・キャプテン翼・聖闘士星矢・北斗の拳などの人気連載量産によって、1980年代中盤頃から少年マンガ誌としての地位を固め、それ移行現在までマンガ業界/出版業界で常にトップを守るような勢いを維持している。最高部数を記録した1995年にはドラゴンボールの連載が終わり、また1996年にはスラムダンクが連載終了したことなどで、その後発行部数がガクッと下がり、1997年から2001年まで一時的にライバルである少年マガジンに首位の座を奪われたが、2002年8月には再び首位を奪還する。ちなみにこのタイミングは、1997年に連載が始まったワンピースが、2002年7月発売の単行本第24巻で、コミック初版発行部数最高記録となる252万部を記録したのと重なっているのが興味深い。

『ジャンプ』『マガジン』『サンデー』、三大マンガ週刊誌の発行部数推移〔1994年〜2017年〕 | まんがseek(漫画データベース)

 一般的には、2000年代以降ネットの普及の影響などによる出版不況が続いていると言われており、マンガ誌も例外ではなくどれも発行部数を大幅に減らしている。また休刊したマンガ誌/統合したマンガ誌も決して少なくない。しかし、マンガは売れていないかと言えばそんなこともなく、電子版の売上が伸びていて、2020年は1990年代の最盛期を上回る過去最高の売上を記録したそうだ。


 この投稿でジャンプに注目した理由は、このツイートがきっかけだった。これを見て、定価150円というのが気になった。

 調べてみるとこれは1977年28号の表紙で、つまり1977年、少年ジャンプは150円だったということだ。現在のジャンプの価格は270円、合併号などで高くなる場合もあって、280円/290円、時には300円になることもあるようだ。自分が読んでいた頃の値段をよく覚えておらず、200円か210円くらいだったかな?なんて想像しつつ調べてみると、ジャンプの通常価格が200円を超えたのは1996年2月だった。
 自分にとってジャンプは子供っぽい印象があったので、結構早く買うのを止めてしまったから、もしかしたら200円になった頃は既に買っていなかったかもしれない。200円台の記憶とは、1991年に既に200円になっていた少年マガジンの価格だったのかもしれない。いや、スラムダンクの連載終了までは買っていた記憶があるので、辛うじて200円のジャンプを体験していただろうか。ワンピースは誌面で読んだ記憶が一切ないので、200円のジャンプを買っていたとしても、ごく僅かな期間だ。

 自分がジャンプを読み始めたのは間違いなく1980年代後半なので、最初は確実に170円だったはずだ。消費税3%の導入で1989年に180円になって、バブル期でイケイケだったのか、その値上げから1年ちょっとですぐに190円になっている。これはちょうどバブル崩壊と同時期だが、1990年代は何もかも物価が高かった。たとえば、エアマックス・エア・ジョーダンなどでスニーカーやバスケットシューズが人気だったが、2000年代になると1万円台前半が多くなるが、1990年代は1万円台後半が中心価格帯で2万円台も決して珍しくなかった。そんなことの影響、そして1997年の消費税5%への値上げもあって、1989年3月に170円だったジャンプは1998年5月には220円と、10年で150円も価格が上昇している。
 それに比べれば、1998年の220円から現在の270円は約25年で50円しか値段が上っていない。それを見れば如何に日本経済が停滞しているかが反映されているように思う。先進国の中で日本だけが唯一1997年比で賃金がマイナスなのだから、庶民が顧客のマンガ誌もそう簡単には値上げできないだろう。でも、1997年8月まで200円だったジャンプは、2022年現在270円になっている。合併号などでは300円になることもある。つまり、賃金は減っているもかかわらずジャンプの価格は約1.4倍になっているとも言える。他の先進国では1997年比で賃金が約1.3-1.5倍程度には伸びているそうだから、ジャンプ価格の上昇がおかしいのではなく、日本の賃金が上がらないのがおかしいんだろう。
 このような物価と賃金の関係については、2020年2/3の投稿でも書いたが、ジャンプについてもそれと同じ傾向だ。


 最近は深刻な円安が進んでいるという話が頻発に聞こえてくる。円安は輸入に不利な状況であり、日本は石油のほぼ全てを輸入に頼っているので、ガソリンだけでなくあらゆるものの価格が今後高くなるだろう。食糧品もその多くを輸入に頼っているので、食糧品の値上げも相次いでいる。でも賃金は下がることはあっても上がりそうな要素はないので、生活は苦しくなる一方だ。しかも今の自民政府は消費税の値上げを検討だなんて言っている。年金や健康保険の負担は既に以前よりも増やされた。
 このままでは、マンガが高価だった時代に逆戻りしそうだが、日本の有権者はなぜかそれでも自民を与党に選び続ける。政治は誰がやっても同じだとか言って。たとえ誰がやっても同じだとしても、いい加減なことをやっても立場が危うくならないなら、その人たちはずっといい加減なことをし続ける。つまり、誰がやっても同じな状況にしてしまっているのは、いい加減なことをしてもその人たちを選び続ける日本の有権者だろう。日本の有権者は政治家に「いい加減な振る舞いを変えなくてもいいよ!」と言っているにも等しい。現状に不満があるなら、自民党に投票するのはありえない。当然棄権や白票だってありえない。棄権や白票は現在の最大勢力の消極的支持になる恐れがとても高いのだから。


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