オレンジ は、1996年にリリースされた電気グルーヴ6枚目のアルバムだ。オレンジの前作・DRAGONには、ポンキッキーズで使用された楽曲・ポポ や、マジカル頭脳パワーの主題歌になったり、国外・主にドイツで人気を博した 虹 などがあり、またオレンジの次のアルバム・A(エース)には、TVアニメ・コジコジの主題歌でもある ポケットカウボーイ、電気グルーヴ最大のヒットシングルとされる Shangri-La が含まれていたりと、それらに比べると影の薄いアルバムではある。
オレンジからシングルカットされたのは、NHK・POP JAMのオープニングテーマなど複数のテレビ番組で使用された、2曲目の 誰だ! だけだ。それ以外にはあまり目立った楽曲は収録されていないが、1曲目の ママケーキ の歌い出しは結構インパクトがあったし、個人的には、キラーポマト や スマイルレス スマイル なんかも印象深い曲だった。
この投稿でオレンジに触れたのは、5曲目に なんとも言えないわびしい気持ちになったことはあるかい? という曲があるからだ。
Denki Groove - Nantomoienai Wabishiikimochininattakotogaarukai? (HD) - YouTube
この曲は、タイトルにもなっている「なんとも 言えない/説明できない わびしい気持ちになったコトはあるかい?」という歌詞を連呼し、わびしい気持ちになることの例もいくつか上げている。この曲で上げられている例は、
- 友達と遊んだ帰りなどに、夕暮れ時に自転車で急ぐ家路
- 平日、閉店間際のデパート屋上
- 買ってもらったアニメ主題歌カセットが、TVとは違う全然知らないヤツが歌っているパチモノだった時
などだ。1つめと2つめは、情景/状況的なわびしさだが、3つめに情景はなく、ニセモノをつかまされた残念感がわびしさの理由である。この曲でのわびしさは、ひどくもの静かでさびしい、のような狭義のわびしさに限らず、
- 貧しくてあわれなさま、みすぼらしい
- つらく悲しい、やるせない
- 当惑するさま、やりきれない
のようなニュアンスも含めた、広義のわびしさだろう。
自分はこの数年、1日に1度は何とも言えないわびしい気持ちになる。それは主に、ニュースサイトを開いた時、ツイッターを見た時、つまり、社会問題についてのニュースに触れた時だ。実際には、それを見て最初にくるのはわびしい気持ちではなく、憤りやイライラさせられるという感情だ。そしてその後に、いつまでも変わらない社会の状況や、一向に解決の兆しが見えない社会の諸問題について、特に他国/他地域では既に解消に向かっているのに、日本だけがいまだに前世紀の感覚を引きずっていることに対して絶望感を覚えることによって、わびしい気持ちがやってくる。
率直に言えば、世界で唯一日本だけが認めない夫婦別姓などがその典型的な例だし、収容者を虐待して殺したのに入管幹部が不起訴になったこと、6/18の投稿でも触れた、公立校における黒髪強要を最高裁が人権侵害と認めなかったこともその例である。黒髪強要問題は人種差別問題に発展する懸念も強いのにもかかわらず、最高裁がそれを不当としなかったことは司法府の最高機関が公然と憲法無視したとしか言えず、この国の没落はかなり深刻度が高いとしか思えない。そんなのを目の当たりにしたら、わびしい気持ちにならざるをえない。
そして昨日はこんな判決も示された。
同性婚を認めないのは「合憲」 原告側の賠償請求を棄却 大阪地裁:朝日新聞デジタル
同性婚を認めない現在の民法などは憲法に反する、と訴えられた国は、憲法24条が「両性の合意のみ」で婚姻が成立すると定めているとし、その趣旨について「男女を表すことは明らかだ」と反論している。婚姻制度の目的は「一人の男性と一人の女性が子どもを産み、育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与えること」であり、同性婚は該当しないと説明したが、日本国憲法でも14条で、他の民主的な憲法と同様に、万人の法の下の平等を定めている。
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない
以前は、同性愛は病的とか異常な状態という認識も存在したが、現在はそのような認識は強く否定され、差別的とすらされている。つまり同性愛は、日本国憲法14条における要素で言えば、信条や性別の類であって、病でも異常でもないのだから、それを理由に権利を制限されることがあってはならない。異性愛者には認められている婚姻の権利を同性愛者には認めないのは差別である、というのは、最早国際的な常識になりつつあるのに、自民政府や大阪地裁は、その差別を容認する立場なのだ。
言い換えると、同性婚を認めないのは差別であり憲法違反である、ということをを裁判所が理解できない、政府が理解できないのが日本である。ついでに言えば、議会与党も理解できない政党なのだから、行政/司法/立法という国の主要な機関がすべて差別容認・憲法無視している状態だ。 また、日本人は同性婚を認めない方針の自民党を与党に選び続けているのだから、日本人は差別容認が多数派ということでもある。ウイグルで民族差別が…とか、香港やミャンマーで市民が弾圧を受けているとか、それと大差ないことをやっているのが日本であり、日本では同性愛者差別を大半の有権者が容認している。
こんな状況を毎日のように見せられて、何とも言えないわびしい気持ちにならないほうが異常である。付け加えると、自民政府は、婚姻制度の目的を「一人の男性と一人の女性が子どもを産み、育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与えること」と説明するくせに、少子化対策は全然やらず、産まない女が悪い、結婚しない奴が悪い、と言うばかりだ。そんな政治をいつまで続けさせる? 日本の有権者はズボラにも程がある。