ウルトラマンにつながる特撮テレビドラマ・ウルトラQに、東京氷河期という回がある。冷凍怪獣ペギラが現れたことで真夏の東京に吹雪が吹き荒れ、氷河期のように凍りついてしまう。この投稿のトップ画像はその回の1カットを加工したものだ。本編はモノクロだが、なんとなくカラーぽく見えるようにしてコピーを入れた。
『ウルトラQ』Episode 14「東京氷河期」【冒頭映像公開】− TSUBURAYA・GALAXY Vol.2で配信中! − - YouTube
東京氷河期の1カットを使ってこの画像を作ったのは、コピーからも分かるように、クールジャパンを皮肉りたかったからだ。クールジャパンとは、政府の文化経済政策の1つで、日本ブーム創出を目的とした情報発信・海外展開(海外での事業促進)・インバウンド振興(国内での事業促進)によって、日本経済を成長させようというブランド戦略政策である。
なぜクールジャパンを凍りついた東京とかけて皮肉ったのかと言うと、クールジャパン政策は大失敗したと言わざるを得ず、また日本経済はこの10年、ひと握りの大企業を除けば全く成長しておらず、停滞と言うよりむしろ衰退しているとすら言えそうな状況だからだ。クールジャパンだけが日本を凍りつかせたわけではないが、クールジャパンも日本を凍りつかせた要素の1つであるとは言えるだろう。
クールジャパン機構、統廃合の検討も視野 財政審が赤字問題視:朝日新聞デジタル
クールジャパンが国家戦略に位置付けられたのは2010年・民主党
菅政権の時ことだった。だが、2010年に菅
直人がいきなり初めたものではない。2001年に、経済産業省の商務情報政策局にメディア・コンテンツ課が設置されたことがその始まりとされ、2004年・小泉政権下で、コンテンツの創造・保護及び活用の促進に関する法律
が成立し施行されている。
クールジャパンの雲行きが怪しくなり始めたのは、2012年末に成立した安倍政権以降だ。経産省の資料によると、2014年の時点でも⽇本のコンテンツの海外輸出⽐率は5%で、人気があるとされていたアニメの海外販売もピークでだった2005-2006年の半分程度になっていた。この頃はスマートフォンゲームとPCゲームの一般化が世界的に進み始めた時期で、かつては日本製が世界を席巻していた家庭用ゲームの売上も、大きく落ち込んでいた。
このようなことを理由に、日本のサブカルチャーは海外でもごく少数のオタクにしかウケていないとか、Cool
Japan なんて言ってるのは日本人だけで実態は Fool
Japan、なんて話も既に出始めていた。確かに今Cool Japanで検索しても、出てくるサイト/ページはほぼ日本のものである。
そして2018年には、文筆家の古谷
経衡が、クールジャパン機構が東南アジアにおける日本文化の発信拠点として重視していた、マレーシア
クアラルンプールの ISETAN The Japan Store
の惨状を指摘した。これがきっかけかは分からないが、この時期より後は、クールジャパンに対して懐疑的・批判的な言説の方が多くなったように記憶している。
クールジャパンは決してオタク系サブカルコンテンツだけを売る政策ではないし、流石に、日本のサブカルチャーは海外でもごく少数のオタクにしかウケていなんてのは極端すぎる話だとは思う。しかし海外でウケているの日本文化の大半はオタク系サブカルコンテンツ、アニメやゲームやマンガで、その海外での展開がうまくいっているのだとしても、それはクールジャパンなんて言い出す前からの土壌があったからで、政府がカネを注ぎ込まなくても上手くいっていたんだろう。家庭用/アーケードゲームはクールジャパンなんて言い出すかなり前から日本製が世界を席巻していたわけだし。
クールジャパンという国家戦略が始まって以降、大半の期間は現在も続く自民政権なのだから、何にせよ、クールジャパンが進められた期間の大半が自民党政権で、そしてクールジャパン政策はほぼ完全に失敗した、税金を無駄に使っただけだった、ということは否定しようのない事実である。自民党によるクールジャパンのお寒い事情、なんてのもトップ画像で風刺していることだ。
岸田首相「漫画は成長の重要コンテンツ」 作者と車座: 日本経済新聞
首相の岸田は6/19に、東京・お茶の水にある現代まんが図書館で、「あしたのジョー」のちば てつや、「アリエスの乙女たち」の里中 満智子、島耕作シリーズの弘兼 憲史、「はじめの一歩」の森川 ジョージ、「まめしばコ!の、いっしょう」の一本木 蛮、「魔法先生ネギま!」の赤松 健らと対談したそうだ。日経の記事の写真は誰が現場にいたのかわかりにくいが、東スポでは集合写真が使用されている。
赤松がどんな主張をしているのか、自民党がどんな政党か、を考えたら、ここにこの人達がいることはとても残念でならない。参加しているのは大ヒットを持つ有名マンガ家らで、赤松
健は自民党の参院選候補だから、選挙を念頭においたアピールなんだろう。そして自民は小泉以降、なにかとサブカル愛好家にウケるようなアピールをやってきた。だから所謂オタクには自民支持が少なくない。
何が残念なのか、という人もいるだろうが、大抵の人は、自分の好きなスポーツ選手や俳優やミュージシャンなどが、選挙前にトランプと対談した、なんて聞けば残念に思うのではないか。これはまさにそれと一緒だ。
このように、赤松は「過度のジェンダー平等」なんて言ってしまうような人だし、自民党も同性婚も選択的夫婦別姓も認めない方針だし、在日コリアン・外国人差別事案や、差別感情を背景にしたテロにも等しい放火事件が起きても、自民政府は何の声明も出さない。また、アベノミクスによる深刻な円安とそれによる物価上昇、長引く新型ウイルスの影響のせいで庶民の生活が著しく苦しいときに、防衛費倍増だとか敵基地攻撃能力とか反撃能力だとか称した先制攻撃正当化、そのための憲法改悪を目指していると言うのだから、岸田もその前の安倍菅政権同様にトランプの同類としか言えない。社会に根強く残る差別を是正するどころか、容認維持しているのだから。
赤松は「過度なジェンダー平等」などと言っているが、このような表現使ってしまうのは、男女平等は必ずしも実現する必要などない、のように思っていることのあらわれだろう。そもそも完全な平等なんてのはあくまでも理想であって絶対に達成できない。つまり平等とは理想、つまり最後のゴールであり、どうしたらできる限り理想に近づけるか、というのが現実なので、過度な場合などあるはずがないのだ。過度な平等なんてのは、平等を実現したくない者の詭弁としか言えない。
赤松はこのツイートに多数の批判が集まったことで、正確には過度のジェンダー平等ではなく、過度のジェンダー平等論から ”論”
が抜けていたから訂正する、という旨のツイートを連ねたが、権利や平等の追求の方法が妥当とはいえない論、平等を追求するふりをしているだけの論はあっても、それを過度な平等論とは言わない。また前後の文脈からも、”論”
が抜けていたのではなく後付でそう言った、と見て間違いないだろう。
5/16の投稿でも指摘したように、赤松は自身のWebサイトで”取り組み”と”実績”の区別をせず、又は故意に歪曲して、自分の実績とはいえないことも実績として紹介しているし、彼が立候補にあたって選んだ自民党の前総裁は、国会で「募ったが募集してない」と堂々と発言し、党もそれでよしとしたのだから、もしも赤松に男女平等を腐すつもりがなかったとしても、言葉の使い方がおかしいのは明白であり、言葉の使い方がおかしい者に議論をする資質なんてないのだから、これを政治家として応援しようという人、公認する党も確実に感覚がおかしい。
ちなみに、日本語がおかしいというのは、愛国者を主張するタイプの自民支持者によく見られる特徴で、単語の見当違いな使い方をしたり、読み間違えとしか言えないミスタイプが頻繁に見つかる。安倍や麻生の漢字の読み間違えの多さ、言い間違いの多さ、原稿を読み飛ばしてもおかしいとは思わずにそのまま読み続けた菅など、支持者だけでなく自民党の幹部らも似たりよったりだ。
まんが図書館での対談に参加した漫画家らが、政治家としての赤松をどう見ているのかは定かでないが、距離が近すぎるから関係性が邪魔をして、判断を見誤っている恐れがある、としか思えない。また、日本のコンテンツ戦略であるクールジャパンに大量の予算をかけた挙げ句失敗し大損した自民政府の岸田に、この漫画家たちは一体何を期待しているのだろうか。
新型ウイルス感染拡大当初、やり玉に上げられたクラブやライブハウス界隈の一部が、当時官房長官だった菅に陳情を行っていたが、その時も、一体何を期待しているんだ? と思った。自民政府が如何に口だけで、公約を平気で破り、沖縄や福島に対して寄り添う詐欺を繰り返しているか、彼らは何も見てこなかったのだろうか。