トランプ政権は、6/19に国連人権理事会からの離脱を表明した。ハフポストの朝日新聞転載記事「トランプ政権、国連人権理事会から離脱表明。パレスチナ問題の対応に不満」によると、パレスチナ問題について、イスラエルの対応が非人道的だという決議が複数行われていることへの反発のようだ。また、人権尊重上の問題が懸念されている国が理事国になっていることもその理由とし、ヘイリー米国連大使は「(人権理事会の)名に値しない」「人権をあざ笑う偽善で利己的な組織だ」という見解を示したようだ。
確かに、自分から見ても国連・関係機関が必ず適切な判断を下すとは限らないと感じられる。常任理事国に名を連ねる大国それぞれの思惑が強く影響し、国連がその役割を果たせていないと感じる場面も多い。しかし、現米政権はユネスコやパリ協定などからも脱退を表明しており、自分の主張が通らなければ脱退という、駄々っ子的な態度が滲み出ているし、トランプ氏も言っているように、北朝鮮問題同様、対話の場に留まること・対話の努力を続けることが問題解決の大前提であって、国際的な機関からの脱退という対応はどう考えても建設的とは言えない。
また、ヘイリー国連大使は国連人権理事会からの離脱の理由に、他の理事国における人権上の懸念を挙げているが、アメリカにだって人権問題はある。昨年・2017年8月には、白人至上主義団体と反対勢力の衝突で、白人至上主義団体側の人間が、自動車で突っ込み死者を出したにもかかわらず、トランプ大統領は「喧嘩両成敗」的な見解を示したし、更にハフポストの記事「2歳の女の子が泣く。今、アメリカとメキシコの国境で親子が引き離されている」などが指摘するように、人道性を重視しているとは決して言えない、移民に対する措置を現米政権が進めたことに対して、大統領夫人が苦言を呈するような状況にすらなっている(「親子を引き離す米移民政策は中止を、メラニア夫人が異例の政治的発言」AFP)。こんな状況が、過去ではなく今まさにあるにもかかわらず、よくも自国、というか自分が所属してる政権、自分のボスである大統領のことを棚に挙げて、他国の人権状況を批判出来たものだ。
昨年来の北朝鮮当局とトランプ氏を始めとした現米政権の批判の応酬、そして今年に入って一転して急に褒め称え合うような状況を見ていると、北朝鮮当局とトランプ政権は似たり寄ったり・どんぐりの背比べだ、と強く感じていたが、このようなご都合主義的な主張を恥ずかしげもなくしてしまう点も、北朝鮮当局ととても良く似ているように見える理由だろう。ただでさえ他の国から距離を置かれているのに、更にその距離は遠のきかねないとすら思える。それは、相対的に現在のもう一つの大国・中国の立場を押し上げかねず、アメリカ一国の問題ではないと自分は考える。
そもそも、直近のイスラエル・パレスチナ問題に関して、アメリカ以外の各国が懸念を示しているのは、イスラエルの対応もそうだが、トランプ氏が下した、これまでの国連決議に反する決断(2017/12/6の投稿参照)に対してだ。その懸念は、ヘイリー大使の言葉を借り、そしてその認識の誤りを指摘させてもらえば、イスラエルへの敵意ではなく「現米政権への敵意」だ。「イスラエルに対する敵意」という表現を用いれば、イスラエルの親米派・トランプ氏を支持するキリスト教福音派などへのアピールになるから、そのような表現を使っているのだろうが、もし本当にそう考えているのなら、現在の米政権、少なくとも国連大使には適切な現状把握・認識力が足りていないと言わざるを得ない。
現状把握・認識力が足りていないという点は、どこかの首相・副首相兼財務大臣と似ている、とどうしても連想してしまう。彼らは「100%共にある」そうだからごく当然のことなのかもしれない。