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テレビとアーカイブ、ネットで引用しやすい仕組みの必要性


 この投稿は昨日宣言した通りその続きだが、昨日の投稿「「人に優しくするのは損じゃない」という声は、届いて欲しい人に届くか」とは、内容的には殆ど関連性がない全く別の話題だ。
 昨日の投稿では、同性愛者であることを公言している弁護士・南 和行さんが、MXテレビ・モーニングCROSSで語った話に対する個人的な感想・受け止めを書いた。それを説明するのに、番組の当該部分で南さんが何を語ったのかは非常に重要で、読む人に何が語られたのかを把握した上で投稿を読んで貰いたかったし、その前提がなければ私が書いたものを読んでも「私の勝手な解釈」と受け取られかねないし、本当は番組の当該部分の映像をそっくりそのまま個人的にアップしたいぐらいの気分だったが、流石にそれは色々と問題があるだろうから、スクリーンショットと当該部分の文字おこしを投稿に添えた。 要するに番組の当該部分を、必要性に応じて引用したと自分は思っている。


 最近、SNS等を見ていると引用と無断転載を混同している人が多くいるように感じる。無断転載とは著作権者に無断で権利を有しない著作物を、例えばあたかも自分の著作かのように、もしくは許可を得て使用しているかのように装って使用することだ。一方引用は、批評や報道や学術研究などの目的で、自分が権利を有しない著作物の一部を、必要性に応じて使用することだ。これは著作権法第32条で、権利者に無断で使用できると認められており、権利者は引用を拒否することはできない。ただ、無条件に引用を認めらた、無断転載を引用だと言い張る者が出てくるだろうから、当然引用には条件がある。条件について詳しくはWikipediaなどを参照して欲しい。

 昨日自分が掲載した番組当該部分の文字おこしが、引用に当たるか否かについては、自分は法律家でないし、問題のない内容だったかどうかは分からない。例えば、文字おこしする際に、口語を文字表現にすると分かり難い部分について、微妙に意を汲むような語尾の変更をしたし、カッコ書きで勝手に補った部分も結構ある。個人的には内容の同一性に変化はないと考えているが、誰もがそう思うかは定かでない。また、自分の主張・批評部分よりも文字おこしの部分、要するに引用の部分の方が長い。この比率では合法的な引用と言えるかどうか定かでない。しかし、南さんの話は一連の流れであって、自分が気になった南さんの表現だけを掻い摘んでも、適切に南さんの意図することが伝わるとは思えなかったし、それでは自分が感じた受け止めや批評も正確に伝わらないと思ったので、南さんが話ていたことをほぼそっくりそのまま文字おこしして掲載した。
 文章を書く前に引用・文字おこしをどうするかを考えていた際に、MXテレビが番組アーカイブを、せめて放送後1週間だけでも公開してくれていたらいいのにと思った。

 自身のラジオ番組、TBSラジオ・Session-22などで、主に主張を繰り広げている荻上 チキさんは、9/21の投稿で取り上げたBuzzFeed Japanのエディターである岩永 直子さんと同様に、所謂杉田議員の差別的な主張と、それを擁護する新潮45の企画に関連して、擁護する企画に寄稿した小川 榮太郎さんから、批判が暴言や恫喝に当たると名指しされた内の1人だ。荻上さんはそれに関して


とツイートしている。彼の番組はスマートフォン等で利用できるラジオアプリ・radikoでも放送後1週間聞くことが出来るし、TBSラジオのサイトでは ラジオクラウド として、いつでも放送された番組を確認できるような仕組みも用意されている。このような事をテレビ番組でも実施するべきではないのか。
 テレビ民放各社は TVer というアプリ/サイトを用意して、一部の番組を放送後1週間無料で公開している。勿論各放送局や番組の方針もあり、一部の番組でしかない。また、大手民放各社は、自社のニュースサイトを用意し、放送したニュースを記事化して当該放送部分と合わせて掲載している。このような事を目の当たりにすると、MXテレビがMキャスという放送同時配信アプリ/サイトを用意して、放送圏外でも視聴できるようにしているのはとても画期的だが、モーニングCROSSにももっとネットと連動するアーカイブを充実させて欲しいと感じる。

 ただ、映像や音声を単純にアーカイブしただけでは、アーカイブの質が高いとは言えないとも思う。現在ネットで検索できるのは主に文字情報だ。例えばグーグルなどでは、画像や動画も文字列で検索することが可能だが、それも結局は自動なのか手動なのかは定かでないが、付与された文字列のタグや、その画像や動画のタイトルや解説等周辺にある文字情報によって検索されている。動画や音声の中で誰がどんな発言をしたかという事までは検索することは、Youtubeの自動字幕システムなどを活用すれば出来ないこともないのだろうが、現状では実用化されているとは言い難く、動画や音声の中の発言を検索することは現状出来ないと言っても過言ではない
 この点を上手く補っているのがネット放送局のAbemaTVだ。AbemaTVもTVer同様、自社制作番組を、概ね放送後1週間無料で公開している。更にAbemaTIMESというブログ形式の自社サイトで、放送した番組を文字化、しかも場合によってはかなり詳細に文字おこしをしていることもあり、ネット検索に引っかかりやすくしているように思う。これは民放各局が(NHKも)用意するニュースサイトと同じ様なものだが、民放では詳しい文字おこしなどは殆どされず、アナウンサーが読み上げる原稿をそのまま掲載することが多く、AbemaTIMESはその点でやや毛色が異なる。

 ネットの影響力が増す今、そして政治の世界で公文書などアーカイブの重要性が問われる昨今、テレビ業界、特に報道に関わる番組に関しては、アーカイブやネット検索と親和性のある取り組みがもっと必要ではないだろうか。政治の世界に対して、文書保存・情報公開の必要性を説くのなら、自分たちが作って放送した番組についても、もっと誰もが後から確認できるような仕組みを用意した方が良いのではないだろうか。勿論、視聴率・スポンサーとの兼ね合いなどがあることは重々承知する。放送直後から制限なく無料で番組を公開というのでは何かしら支障があるかもしれないことも推測できるが、報道に関する番組については、もう少し柔軟に対応して欲しい。テレビが広告ベースで運営できるのなら、アーカイブサイトだって広告ベースで運営できそうだし、ましてや受信料で運営しているNHKなんて、なんであんなに早くニュース記事を削除していくのかと思えてならない。
 今はテレビの見逃し配信は放送終了後1週間が一般的だが、例えば逆に放送終了後1週間後から公開という手法もあるだろうし、文字おこしして文字データにすればアーカイブに掛かるコストも動画を公開するよりは少なくて済むだろう。確かにこれまでテレビ放送は、勿論今では録画で記録に残るが、テレビ放送が始まった当初は、放送する瞬間の刹那的なメディアであるという原点から始まったものなので、基本的には、アーカイブして公開するということを視野に入れていないメディアなのかもしれない。しかし、そのような点を今後は更に改善しないとならないのではないか。ネットで引用しやすい仕組みを作らなければ、SNS全盛時代において、衰退傾向に歯止めを掛けることは出来ないのではないだろうか。ネットに媚びろと言っているのではなく、テレビはネットをもっと上手く利用するべきではないだろうか。

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