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いつまでアベノミクスはまだ道半ばと言い続けるのか


 10/15の投稿「行き当たりばったり 2」、10/17の投稿「行き当たりばったり 3」で、安倍首相が10/16に示した、消費税率を予定通り来年10/1に現行の8%から10%へ引き上げるという決意表明に関連して、それが景気に与える悪影響への対策として示された、中小小売店での商品購入時にクレジットカードなどを使った消費者に対し、購入額の2%分をポイントで還元する案が、如何に合理性に欠けているかを書いた。両日の投稿のタイトルとした「行き当たりばったり」とは、この案に限らず軽減税率も含めて、消費増税に関する政策が余りにも場当たり的で、いい加減な議論が続けられていると感じたのでそう名付けた。
 10/17の投稿以降に明らかにされる話も相変わらず場当たり的だ。例えば産経新聞が報じた「政府、カード手数料下げ要請へ 消費増税で」などは、前述の投稿の中で自分も指摘していた、
小売店はクレジットカード決済分に関しては、カード会社に概ね5%の手数料を支払う必要があり、これまでの現金決済では必要なかったその手数料は、少なからず商品価格に反映されることになるから、2%ポイント還元されたところで、5%の手数料が商品価格に上乗せされれば、消費者は結果的には損をすることになる、もしくは小売店が自腹を切ることになる
に対する実効性があるとは考え難い、短絡的で場当たり的な「行き当たりばったり」の対応でしかない。


 何故、短絡的で場当たり的な「行き当たりばったり」の対応と自分が言い切るのかと言えば、産経新聞の記事では言及されていないが、日経新聞「カード手数料、上限3%台 消費増税時に政府要請」などが報じているように、検討されている手数料の上限が3%だそうだからだ。3%の手数料が上限になるようであれば、現在概ね5%程度の手数料で経営を行っているカード会社は、利益減を最小限にする為に3%台の手数料を設定するだろう。その手数料が商品価格に反映されれば、消費者は2%のポイントを還元されたところで結局損をすることに変わりはない。「ポイント2%を還元」なんて表現だとサービスの良い政策のように見えるかもしれないが、それは結局見せかけだけ・字面だけの話でしかない。10/17の投稿でも触れたが、当初はクレジットカードについてしか言及がなかったのに、クレジットカード以外のキャッシュレス決済という話も後付け的に浮上したが、カードの種類に関わらず、同様の事が言えるだろう。

 また、連立与党のもう片方である公明党は、キャッシュレス決済への対応が現実的でない層への対策として、商品券や現金給付案を言い出し始めた(朝日新聞の記事)。東京新聞「消費増税対策 商品券や現金給付案 政府・与党」によれば、公明党だけでなく自民党でも同じような案が検討されているようだ。
 今朝のTBS・上田晋也のサタデージャーナルでは、2012年の民主党政権下で行われた、民主党・自民党・公明党の3党間において取り決められた、社会保障と税の一体改革に関する合意、所謂3党合意は「消費増税を政争の具にしない為の取り決め」だったと位置付け、安倍首相がこれまで選挙直前に2度も増税延期を行ったこと、しかも2度目は1度目の延期の際に「再延期はない」と言っていたのにも関わらず方針転換したこと、また昨年の衆院選前にはまた「消費増税分の使い道の変更」という話を持ち出したことなどに触れ、3党合意とは一体何だったのか、安倍政権は消費増税をことごとく政争の具にしてきたというニュアンスの主張を展開していた。
 これを勘案すれば、消費増税に関連して検討されいてるポイント還元にしろ、商品券や現金の給付にしろ、そのような政策が消費税の逆進性等への対策として、今後恒常的に行われることが検討されているようなら理解出来る部分もあるかもしれないが、消費増税で予想される景気悪化対策という名目で1年から数年に限った政策として検討しているようであれば、「消費増税を選挙の為に恣意的に利用している側面」があると感じざるを得ない。

 そもそも、2度の消費増税延期の際に、その両方で安倍首相は「景気が力強さに欠ける」こと、「アベノミクスの成果がまだ結実していない」ことなどを挙げていた。政権成立からは既におよそ6年、最初の延期からはおよそ4年が経つし、昨今安倍首相は再三再四アベノミクスの効果によって景気が良くなっていると主張している。彼は前述の3党合意を経て政権をとることになったのだから、10%への消費増税を行っても耐えられるような状態への景気回復を目指していた筈だし、これまでの延期の際に、しかも2度目は「再延期はない」とする話を覆してまで「景気の力強さが足りない」という理由を持ち出したのだから、来年・2019年10月に消費増税を予定通り行うという事は、機が熟した・「景気に力強さが戻った」と判断したという事なのだろう。もしそうならば、消費増税に際して特段の景気対策など必要ない筈だ。
 にもかかわらず、ポイント2%還元とか商品券や現金給付だとか、消費増税で予想される景気悪化への対策を、参院選への対策とは関係なく検討しているというのであれば、安倍政権が成立した際に掲げた社会保障と税の一体改革を実現する為に必要な「景気の力強さ」を実現出来ていない、言い換えれば、消費増税に際して特段の景気対策が必要であるならば、アベノミクスの成果は政権成立から6年を経ても尚充分ではない、厳しく言えばアベノミクスは成功したとは言い難い、消費増税に耐えられる経済状況を実現するという目標を達成できなかったということになる。にもかかわらず彼はアベノミクスによって景気は良くなっていると主張していることになるだろう。

 一方で、安倍首相は再三再四アベノミクスの効果によって景気が良くなっていると主張し、一方で彼が消費増税に際して特段の景気対策が必要という姿勢を示すことについて、自分は強い矛盾を感じてしまう。彼の話がいい加減であることは、「再延期はない」とした増税延期に関する以前の自身の発言を、「新しい判断」などと覆し2度目の延期を宣言した時点で強く感じ、安全保障関連法案、所謂共謀罪法案、その他諸々の法案についての審議、所謂森友加計学園に関する問題、自衛隊の日報に関する問題について彼が示した種々の見解等で、それは既に懸念ではなく確信するに至っているが、今回の消費増税にまつわる彼や与党の検討案を見ていると、その確信は更に強固なものになる。

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