スキップしてメイン コンテンツに移動
 

正しい認識がなければ議論は成り立たない


 警察庁は、現在試験的に110km/hの速度制限を実施している東北自動車道と新東名高速道の2つの区間について、3/1から制限を120km/hとすると発表した(東京新聞の記事)。あくまでも1年間の予定での試行だそうだが、110km/hでも大きな問題は発生しておらず、同様に問題が起きなければそのまま継続、別の区間でも制限速度の引き上げの検討を行う予定のようだ。
 この事を今朝のMXテレビ・モーニングCROSSでも取り上げていた。それに対する視聴者ツイートが画面にいくつか表示されていたが、適切にこの件を理解していない人も多くいるように感じられた。現在の基本的な100km/h制限同様、120km/hに速度制限が緩和されても120km/hで走る事を強いられるわけではない。渋滞等を除いた場合の最低速度50km/h以上であれば、80km/hでも100km/hで走っても構わない。というか、東京新聞の記事にもあるように、大型貨物車の制限速度は従来通り80km/hである。つまり120km/h区間でも80km/hで走るクルマが確実に存在する。


  モーニングCROSSで見かけた視聴者ツイートには「軽だと120km/hではついていけない」「120km/hに制限が緩和されたらあおり運転が心配」などがあった。このような見解を示す人は、適切な認識に基づいていないのではないか?と推測する。


前述のように120km/h制限区間であっても、120km/hで走らなければならないわけではない。大型貨物車の制限は従来通りなので80km/hで走るクルマが確実に存在する。つまり左側の通行帯の流れは確実に100km/h以下になる。軽自動車では120km/hでの巡行がキツいのは確かだが、わざわざ右側の通行帯へ入って120km/hの流れについていく必要などない。

 しばしば他県での現場仕事に出向くことがある為、自分は平日も高速道路をそれなりに利用する。クルマの運転が好きなので、レジャー等の為に休日も当然高速道路は利用する。平日の高速道路と休日の高速道路の様子は明らかに様相が異なる。平日の高速道路では追越車線を制限速度よりも遅いスピードで走り”続ける”クルマが少ないのに、休日の高速道路ではしばしば見かける。また、平日の高速道路では、追越車線で後ろから自分よりも速度の速いクルマが近づいてくれば道を譲る者が多いが、休日の高速道路では譲らずにマイペースで、場合によっては意固地になって走り続けるクルマが増える。まず確認しておきたいのは、一番右側の車線・追越車線は、基本的には追い越しをする場合にのみ走行できる車線である。警察も他の走行帯が空いているのに追越車線を走り続けるクルマを、通行区分違反等で摘発している。追い越しが終わったら左側の通行帯に戻らなければならないし、追い越しを行わないのに追越車線に入ってはならない。

 つまり仕事でクルマを運転しない人、所謂サンデードライバーの中には、高速道路の円滑な状態を維持する為の仕組みを理解せずに運転している人が相応に存在している。高速道路の通行帯については教習所で確実に習っている筈だし、運転免許の試験でも問題になっている。にもかかわらず、「追越車線を含めてどの車線を走っても自由」と考えている人が少なからずいる。確実にそのタイプの人は普段クルマを運転してない人に多い。
 「追越車線を含めてどの車線を走っても自由」は誤った認識である。高速道路では速度の速いクルマは基本的に右、遅い車は左側の通行帯を走らなくてはならない。速度を上げる必要のある追い越し・追い抜きは基本的に右側から行わなくてはならない。速度の遅い車用の登坂車線は原則的に左側に設置されるし、全線で80km/h制限の大型貨物車は基本的に一番左側の通行帯を走行しなくてはならない。
 東名の事故以来「あおり運転」が問題視されているが、あの事件や、その後摘発されているあおり運転の多くは幅寄せや進路妨害、若しくはクルマを叩いて威嚇する・壊すなどの行為だ。しかし、しばしば追越車線を漫然と走行して「煽られた」と言っている人も見かける。勿論車間距離を無駄に詰める行為も車間距離不保持に該当する不適切な行為には違いないが、追越車線を漫然と走行するのも通行帯違反というれっきとした反則行為なのに。


 少し話が飛躍しすぎかもしれないとは思うものの、前述の120km/hへの速度緩和を危惧する見解を見て、自分は「この人(LGBT)たちばっかりになったら国はつぶれちゃうんですよ」と発言した(1/5の投稿参照)、自民・平沢氏と似たような考え方に思えた。1/18の投稿でも触れた、ニュージーランドで同性婚を認める法律ができた2013年に、モーリス ウィリアムソン議員が議会で行ったスピーチ(ハフポストの記事)で語ったように、同性婚が認められる=誰もが同性婚をしなくてはならない、ではないので、同性愛者ではない人の生活に大きな影響や不利益があるわけではない。120km/hの速度制限緩和も同様で、出せる人・クルマが出せるようになるだけで、軽自動車に乗っている人は今まで通り左側の走行帯をマイペースに走行しても構わない。それをあたかも120m/hで走ることを強いられるかのように捉えて批判するのは決して適切とは言えない。 また通行帯に関する正しい認識を持たずに「あおり運転の深刻化」を懸念するのも適当とは言い難い。速度制限とあおり運転は全く無関係とは言わないが、現在問題視されているあおり運転は速度制限とは概ね別の問題である。


 今朝のモーニングCROSSでは昨日の国会で野党が統計不正に関する指摘を政府に対して行ったことも取り上げていたが、それに関して、
という視聴者ツイートがあった。 これに対して自分が、
と引用ツイートしたところ、
というリプライがあった。彼らは統計の不正に関する調査が杜撰で、再調査を余儀なくされていることを知らないのだろうか。統計の不正だけでも政府や政治への信頼は急落しているにも関わらず、それを正すのには不可欠な実態調査までも杜撰では、政府や政治への信頼性は更に下がってしまう。統計不正は2004年からだそうだから現政府だけの責任とは言えないだろうが、それに関するいい加減な調査を行ったことの責任は、確実に現政府・現厚労大臣にあるはずだ。まともな調査も出来ない大臣に再発防止なんて出来る筈がない。まともな調査も再発防止も出来ないような大臣には早く辞めて貰いたいし、もし政府や首相がその大臣をかばうようなら彼らも同じ穴の狢だろう。統計の不正も深刻だが、それについて杜撰な調査を行い、いい加減な結果報告をするという事は、更に事態を悪化させることに他ならず、深刻度は不正と同様か更に酷いとしか言いようがない。

 適切な認識を前提としない見解を示す人とは、まともな議論は出来ないということを、高速道路の速度制限緩和の件からも、国会審議・統計不正問題の件からも再確認した朝だった。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。