スキップしてメイン コンテンツに移動
 

トランプ氏をノーベル平和賞に推すなど到底認められない


 トランプ米大統領が2/15の記者会見の中で「安倍首相からノーベル賞に推薦された」と述べたことが大きな話題になっている。これを受けて米メディアがどのように伝えたかを記事化したハフポストの「「安倍首相からノーベル平和賞に推薦された」と自慢するトランプ氏の発言 米メディアはどう見たか?」はとても興味深い。紹介されているのはワシントンポスト・USAトゥデイ・ガーディアンの論調だが、どのメディアも「安倍首相じゃなくて文韓国大統領の間違いでは?」という方向性だ。
 このような論調を各社が示すのはもっともだ。何故なら、 昨年行われた史上初の米朝首脳会談直前の日米首脳会談の中で、トランプ氏は「拉致被害者が帰国できるよう最大限努力する」と言っていたようだが(2018年4/20の投稿)、大方の予想通り、その発言に反して実際には米朝首脳会談では、拉致問題には殆ど触れられなかったからだ(2018年6/13の投稿)。トランプ氏が初の米朝会談にこぎつけた事は一定の成果であると評価する日本人は決して少なくはないだろうが、拉致問題解決への働きかけを期待させたにも関わらず、実際は殆ど何もしなかったトランプ氏を、ノーベル平和賞に推したいとまで評価する日本人は決して多くはないだろうから、日本の首相である安倍氏がトランプ氏を「ノーベル平和賞に推すとは考え難い」と推察するのはとても自然だ。


 しかし、トランプ氏が明らかにした安倍氏が送ったとされる推薦状の中には信じがたい表現が含まれていた。時事通信の記事「ノーベル賞に「安倍氏から推薦」=トランプ米大統領が会見で言及」によると推薦状の中に、
 日本を代表し、謹んであなたをノーベル平和賞に推薦する
という文言があったそうだ。勿論トランプ氏の単なる勘違い、若しくは意図的な嘘の恐れもないとは言えないが、もしこれが事実なのだとしたら、自分は安倍氏に言いたい。「個人的にトランプ氏をノーベル平和賞に推薦するのを、勝手に日本の総意のように言うな」と。 「日本人の代表である首相という立場でトランプ氏をノーベル平和賞に推すなら、その方針を国民に示してからにしてくれ、あなたは全権委任された日本の総統でもなければ、封建社会的な王でもない」とも言いたい。

 この件に関する新聞各社の記事を比べてみるととても面白い。
一部見出しにもあるが、各社政府関係者に取材を行った上で記事化している。単に時系列的な差なのかもしれないが、毎日新聞は見出しにもあるように
 日本政府関係者は毎日新聞の取材に「両首脳のやりとりに関わる話であり、答えられない」として事実確認を避けた
としているのに対して、 朝日新聞は
 日本政府関係者によると、昨年6月にあった史上初の米朝首脳会談後、米側から「推薦してほしい」と打診を受けたという
としている。また読売新聞も、
 日本政府関係者は16日、安倍首相が米大統領を平和賞に推薦したことは事実だと認めた。推薦状を送った時期は初の米朝首脳会談以降とみられる
としており、安倍氏が推薦状を書いて送ったことは事実のようだ。

 もし、朝日新聞の推薦して欲しいという米側からの要請を受け手の推薦が事実だとしたら、日本側、安倍氏の対応は、彼がトランプ氏の太鼓持ちである事を如実に物語る。前述のように、トランプ氏が前回の米朝首脳会談で拉致問題に積極的に言及しなかったことを考えれば、とてもノーベル平和賞に推す程の評価は出来ないだろうし、なにより彼は、これまでしばしば女性蔑視や人種差別に寛容とも思える態度を見せたり、時に対立する相手を過剰に罵倒する人物でもあり、とても平和賞に推すなんて考えられない。
 そんな人物を日本の首相が「日本を代表してノーベル平和賞に推薦する」などとする推薦状を書いていたのだとしたら、それに賛同出来ない日本人は「自分は安倍氏とは違いトランプ氏をノーベル平和賞に推す事など到底出来ない」と声を上げるべきだ。でないと日本人は概ねトランプ支持者だという風に他国・他地域から思われかねない。また、そんな事をする首相に対して何らかのアクションを起こさなければ、今後も同様の事が起きかねない。

 明日以降の国会審議の中でこの件に関するやり取りはどうやっても行われるだろうから、ひとまずそれに、つまり首相がどんな見解を示すのかにまずは注目しなくてはならないが、どんな経緯があったにせよ首相が推薦状を送っていたのだとしたら、それを容認することは、間接的・消極的にかもしれないが、トランプ氏の数々の過激な発言や女性蔑視・人種民族差別容認傾向を、日本が国を挙げて認めることにもなりかねず、かなり深刻な事態ではないのだろうか。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

インターミッション・途中休憩

  インターミッション/Intermission とは、上映時間の長い映画の途中に制作者が設ける「途中休憩」のことだ。1974年公開の「ゴッドファーザー2」も3時間20分の上映時間で、2時間を超えたあたりにインターミッションがある。  自分がインターミッションの存在を知ったのは、映画ではなく漫画でだった。通常漫画は1つの巻の中も数話に区切られているし、トイレ休憩が必要なわけでもないし、インターミッションを設定する必要はない。読んだ漫画の中でインターミッションが取り上げられていたので知った、というわけでもない。自分が初めてインターミッションを知ったのは、機動警察パトレイバーの3巻に収録されている話の、「閑話休題」と書いて「いんたーみっしょん」と読ませるタイトルだった。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

非常識な田舎者

 G7で、他の首脳にマジった菅が見ていて、なんであんなにちんちくりんなのか、と恥ずかしく思った。世間知らずの田舎者感が半端なかった。他の国の首脳たちはきちんとした服装なのに対して、菅は、親のスーツを借りてバイトの面接に来たかのような、サイズの合っていないダボダボのスーツを着ていたからだ。勿論、身なりだけで人を判断するのはよくない。しかし、なにか相当の信念があるなら別として、 単に無頓着なだけな場合、身なりで判断されても仕方がない 。