2014年にノーベル平和賞を受賞したマララ ユスフザイさんが来日した。彼女が生まれたパキスタン北部は、一時期アフガニスタンで恐怖政治体制を確立した勢力・タリバーンのパキスタン国内勢力が強い影響力を持つ地域で、彼女はイスラム教原理主義的なタリバーンが女性が教育を受ける権利を否定しているのに対して、声を上げ活動を続けたことによって、その活動を理由として2012年にタリバーンから銃撃を受け、負傷したこともある。そんな彼女の行動が評価され、彼女は史上最年少の17歳でノーベル平和賞を受賞した人物だ。
ハフポストの記事「マララさん初来日で、安倍晋三首相は女子教育への支援を表明 会場に入りきれずパンク」によると、今回の来日の理由は3/23に開催された国際女性会議WAW!(World Assembly for Women)/ W20への参加の為のようだ。WAW!は女性活躍を掲げる安倍政権が開催する国際会議で、今回で5回目の開催なのだそう。
2017年にWAW!が開催された際には、トランプ大統領の娘であるイヴァンカ トランプ大統領補佐官が今回のマララさん同様に基調講演を行った。彼女に対しては、トランプ氏の女性蔑視発言や過去のセクハラに関する指摘が複数あった為、「まず自分の父親を何とかして欲しい」という批判も集まった。また、多くのメディアが「イバンカ大統領補佐官の基金に、安倍首相が57億円を供出することを表明」と報じた事に対して、事実に即していないという批判も起きた(ハフポストの記事)。
彼は2012年の政権発足後「女性活躍推進」を標榜し、遅くとも2014年の衆院選の公約で「すべての女性が働き方、生き方など自分の希望を実現し、個性と能力を十分に発揮できる 「すべての女性が輝く社会」の実現を目指します」としている(ハフポストの記事「2014衆院選 各党のマニフェスト一覧(ZIP, PDF)」より。PDFはリンク切れになっているが、ZIPファイルはダウンロードできた)。しかし、2/27に世界銀行が発表した「Woman, Business and The Law」という報告書の2019年版によると、日本の労働分野での男女格差指数は79.38でG7中最低だった。これを報じたハフポストの記事「働く人の男女平等度、日本はG7最下位。世銀の調査で判明」によると、グローバルジェンダーギャップ指数(世界経済フォーラム調べ、2018年版)でも、日本はG7中最も低い110位だったそうだ。日本のグローバルジェンダーギャップ指数については、2017年に過去最低を記録し、2018年はそれよりはいくらかはマシだった(ハフポストの記事「ジェンダーギャップ指数2018、日本は110位でG7最下位「日本は男女平等が進んでいない」」)ものの、それでも決して日本の男女格差が2014年以降改善しているとは到底言えない。他国の状況と比較すれば、、絶対的に悪化しているとは言えないかもしれないが、相対的に悪化していると言っても過言ではない。2017年に過去最低だったというのはそういうことだ。
つまり、安倍氏が掲げる「女性活躍推進」「すべての女性が働き方、生き方など自分の希望を実現し、個性と能力を十分に発揮できる 「すべての女性が輝く社会」の実現を目指します」は形骸化していると断定してもよさそうだ。彼が「(福島、事故原発は)アンダーコントロール」「(辺野古移設工事について)あそこのサンゴは移した」(詳しくは1/8の投稿参照)など、いとも簡単に嘘をつく人物であることを勘案すれば、「女性活躍推進」も、元から何か具体的で効果的な政策をするつもりのなかった羊頭狗肉の公約だったのかもしれないとも思えてしまう。
彼は、2017年の沖縄戦戦没者追悼式あいさつの中で、「できることはすべて行う」と述べ、沖縄の基地負担の軽減に全力を尽くすという姿勢を示したが(ハフポストの記事)、「できることしかやらないということか」という批判を浴びた。彼の「できることはすべて行う」というセリフの意味が「できること以外はやらない」だったことは、昨年・2018年9月の沖縄知事選の結果や、今年2月の沖縄県民投票の結果を受けても頑なに辺野古への基地移設工事を止めないこと(3/2の投稿)からも明らかだ。つまり彼の言葉は全く軽薄そのもので、真に受けるのは適切な判断とは言い難い。寧ろ本当の事は言わないという前提で受け止めるべきだろう。
前述のマララさん来日に関するハフポストの記事によると、安倍首相は
「多くの女性がしっかりと声をあげ、行動を起こせば、世界を変えることができる」と述べ、「2020年までに少なくとも400万人の途上国の女性たちに質の高い教育の機会を提供してまいります」と表明したそうだ。彼が2012年、遅くとも2014年以降「女性活躍」を政権の重要な方針の一つに掲げているにも関わらず、実態が全く伴っていないこと、つまり彼の言う「女性活躍推進」が形骸化しており、「羊頭狗肉」になっていることに鑑みれば、彼が「多くの女性がしっかりと声をあげ、行動を起こせば、世界を変えることができる」と言っているのは、
自分は女性活躍推進を掲げ相応の政策を行っているのに、それが形骸化し羊頭狗肉と化しているのは、多くの女性がしっかりと声をあげ、行動を主体的に起こさないからだという、日本の女性に対する皮肉のようにすら聞こえてしまう。
海外の女性の為に資金や機会等を提供することが悪いことだと言うつもりは一切ないが、「自国の男女格差も解消出来ない日本の首相が一体何を言っているんだ?」というのが、国外から見た際の日本の首相・安倍氏への評価ではないだろうか。それは2017年のWAW!でイヴァンカ氏に向けられた批判を見れば容易に想像できる。3/17の投稿でも、データの捏造・隠蔽・改ざん・恣意的な解釈が横行する現政権の長である安倍首相が、「大阪サミットで、データの取り扱いに関する国際的なルールづくりをスタートさせ、自由貿易体制の進化につなげたいという考えを示した」ことが、如何に滑稽であるかを指摘したが、このような事が短期間に続くのは、彼は自分が置かれた状況を適切に認識できない、自己評価が適切に出来ていない事の証明だろう。
彼や彼の政権が適切に自己分析・自己評価できないことは、彼らの統計不正に対するし姿勢や、現在も未だに戦後最長の景気回復が続いているという見解を示し続けている(朝日新聞の記事)ことからも明らかだ。