スキップしてメイン コンテンツに移動
 

ネットに限らずどんな情報でも鵜呑みにするのは危険。それは有力な政治家の話でも同じ


 4/1はエイプリルフールだ。昨日の投稿の書き出しも同じだったが敢えて2日続けて同じ書き出しにしてみた。
 BuzzFeed Japanはエイプリルフールに関するネタとして、3/28に「今年は13年に一度の”逆エイプリルフール”? 「少女を処刑」の逸話は本当か」という記事を掲載した。体重計などの計測器メーカー・タニタの公式ツイッターアカウントが、「13年に一度、4/1を逆エイプリルフールという全く嘘をついていけない日とする風習」あり、2019年は逆エイプリルフールに当たるという真偽も定かでない話を、【拡散希望】などとしてツイートし、6700件超リツイートされ、それ以外の「いいね」が集まっているということに関する記事である。
 当該ツイートはWikipediaのエイプリルフールのページのスクリーンショットを情報のソースとして載せている。現在当該項目は既に削除されているようで、Wikipediaにそのような記述はない。BuzzFeed Japanの記事によれば、「逆エイプリルフール」に関する記述があったのは日本語版Wikipediaのみで、エイプリルフール発祥とされる国・フランス版のWikipediaや英語版に記述はなく、出典も示されていなかったそうだ。


 Wikipediaは基本的に誰でも、且つ匿名で編集が可能な閲覧無料の百科事典サイトである。なのでしばしば、認識の異なる者らによって編集・削除合戦が繰り広げられたり、真偽の定かでない馬鹿話ネタのようなものが、いたずらであたかも事実かのように書き込まれたりすることもある。
 自分がよく覚えているのは2015年に起きた事案だ。オーストラリアの音楽アーティストに関するWikipediaのページにファンが自分のことを「メンバーの家族である」と書き込み、そのページと身分証を提示して警備員を納得させ楽屋に入り込んだということがあった(NME Japanの記事)。Wikipediaでは基本的に嘘の情報が掲載される事を防ぐために、どんな情報にも出典を掲載しなくてはならない。出典が明示されない情報はたとえ真実であったとしても原則として削除される。しかしWikipediaのページ・項目は膨大で全てにチェックが及んでいるわけではない。前述の「逆エイプリルフール」に関する話も、書き込まれたのは2006年だそうで、13年もの間放置されていたようだ。
 この逆エイプリルフールに関する話の出どころがどこなのかは定かになっていないようだ。2ch(現5ch)のような匿名掲示版か、以前流行っていた個人が運営するテキストネタサイトなどにあった作り話を真に受けた誰かが、Wikipediaに書き込んだのかもしれないし、逆に2chや自分の運営するサイトに掲載する作り話に信憑性を持たせようという目的で、Wikipediaに書き込んだのかもしれない。兎に角出典が全く見当たらないことから考えて根も葉もない話と考えて問題ないだろう。

 3月初旬にネット黎明期・90年代後半から度々浮上してくるチェーンメールネタ、「ある6歳児が公園のトイレで性的暴行を受け、子宮を全摘した」という話が、ツイートされて再び話題になった。この件に関してもBuzzFeed Japanは、
と2つの検証・その影響に関する記事を掲載している。2本目の記事では「事実に基づいていなくても注意喚起になる」という主張があることを紹介しているが、果たしてその見解は妥当だろうか。
 例えば落語などの小話のように、あくまでフィクションであることを示唆し、事実を誇張した話で注意喚起を行うことはよくある。童話や昔話にはその類のストーリーがかなり多く見られる。しかし、事実に基づかない話をあたかも事実かのように話す人が適切な判断力を持っているかといえば、自分は決してそうは思えない。嘘も方便という話もあるが、ありもしない話をでっち上げ、やみくもに不安を煽るような方法は、方便:人を真の教えに導くための仮の手段には決して当たらないと考える。
 例えば、政府が必要以上に隣国の脅威、テロの懸念を示して不安を煽り、軍備拡張・防衛費の増大を他の政策よりも優先しようとしていたらどうだろうか。防衛への関心を高めることは確かに「注意喚起」だろうが、事実に基づかない話による注意喚起でも納得できるだろうか。自分は確実に「騙された」「税金を無駄にするな」と思うし、軍備拡張・防衛費の増大で得をする人が少なからずいるだろうから、その人達の利益の為に用意された嘘としか受け止められない。

 Wikipediaに話を戻す。テレビなどで芸能人らが「自分に関するWikipediaのページには事実でないことがいくつも書かれている」と発言しているのをよく見る。出典も示されないいい加減な情報が、Wikipediaにはしばしば書き込まれるという事を前述したが、スポーツ新聞や週刊誌のゴシップ記事などは事実と異なる内容のことも多く、それらを出典として情報が書かれれば、たとえ出典があったとしても事実と異なる話がWikipediaに掲載されてしまうこともある。誰が言ったか失念したが、「現在のネット環境ではそれらしいブログを3つ立ち上げれば、それを出典として嘘を事実にすることが出来る」と言っていた人がいた。余談だが、この話も出典元が明示できないので簡単に信用してはいけない話だろう。この記事を書いている自分が勝手に作った話の恐れもあるということだ。
 一応Wikipediaでは出典元に出来ないいい加減なサイトをいくつか指定している。信用性の担保されていないサイトを出典元にすれば話の信憑性も怪しくなるのは、Wikipediaに限った話ではない。しかし前述のようにWikipediaでは項目が膨大過ぎてチェックが追い付いていないし、前述した「逆エイプリルフール」や「女児が性的暴行を受け子宮全摘」のように、出典が定かでない話でも信用してしまう人は少なくなく、Wikipedia上には怪しい話も多くあるのが現状である。

 このような観点から「Wikipediaの情報=怪しい情報」というような、逆ベクトルで極端な認識を持っている者も少なくない。しかし、Wikipediaに掲載されている情報には複数の出典元が明示されている信憑性のある情報も多く、「Wikipediaだから信じられる」という判断が不適切なのと同様に、「Wikipediaだから信じられない」という判断も不適切だ
 ハフポストの「「ヘイトスピーチ」で更迭 年金機構・世田谷事務所長」という記事に、
 
ヘイト発言」って何なの?朝日新聞は嫌いだ、というのもヘイト発言?いえ、屁意図発言ですとか?
定義がよくわからない言葉を軽々しく使わないでほしい。
とコメントしている者がいる。彼はよくこのような傾向のコメントを投稿する、所謂その手の人なのだが、PC若しくはスマホを使ってコメントしているのだから、調べりゃ分かるだろう、つまり2ch風に言えば「ggrks:ググれカス」なのだが、それでは角が立つので、
ヘイトスピーチとは、人種、出身国、民族、宗教、性的指向、性別、障害など自分から主体的に変えることが困難な事柄に基づいて、個人または集団を攻撃、脅迫、侮辱し、もしくは他人をそのように扇動する言論等
https://ja.wikipedia.org/.../%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE...「ヘイト発言」という表現を用いたのは日本年金機構だが、それが「ヘイトスピーチ」を指しているのは概ね疑いようがない。また「朝日新聞は嫌いだ」は前述の定義に当てはまらないのでヘイトスピーチ・ヘイト発言には該当しない。
定義がよく分からないなら目の前にあるPC若しくはスマホを使って調べてからコメントしてほしい。
と、Wikipediaの「日本のヘイトスピーチ#定義」から引用してリプライをした。すると彼は次のように言い出した。

wikipediaの類いでしか説明が出てこないような言葉を軽々しくメディアが使うのは辞めて欲しいということ。皮肉にわざわざ解説をつけるのも馬鹿馬鹿しい話だが、貴殿とその追従者のようにわからない人がいるようなのではしょうがない。
 流石に朝日新聞では「差別的ツィート」と見出しをつけている。腐っても鯛というところか。
この返答からは、彼がリンク先をよく見ていないこと、Wikipedia=信じられない情報と短絡的、又は恣意的に捉えていることがよく分かる。何故なら自分が引用した部分の出典の中には、「「ヘイトスピーチ、許さない」 法務省が啓発活動強化」という産経新聞の記事も含まれているからだ。つまり、ヘイトスピーチという言葉は「wikipediaの類いでしか説明が出てこないような言葉」ではなく、産経新聞のような全国紙や法務省も用いる一般的な表現であることは誰の目にも明らかだろう。
 彼はいちいち何かにつけて短絡的で恣意的な解釈に基づいたコメントを平然と投稿してくる人物なので、このコメントにも全く驚きはない。そして都合が悪くなると返答をしない、間違いを認めないのも平常運行だ。現実社会にもこのような気質の者はいるが、匿名での主張が可能なネット・SNS上にはこの手の人間が更に多いように思う。


 少し話がズレてしまったが、Wikipediaに限らずネット全般、ネットに限らず、出版やテレビ・ラジオなどの放送メディア、そして他人からもたらされる噂話に至るまで、どんな情報も自分の頭でその信憑性を吟味し、また自分の視点以外での見え方も検討して、信じるべきか否かを判断しなくてはならない。2018年11/13の投稿「スマホ情報に踊らされないための ”4つのハテナ”」でも紹介したが、”スマホ情報”に限らず全ての情報について、
  1. まだわからないよね? … 結論をク(即)断するな
  2. 事実かな?意見・印象かな? … 分けずに(鵜)呑みするな
  3. 他の見え方もないかな? … 1つの見方にタよ(偏)るな
  4. 隠れているものはないかな? … スポットライトのカ(中)だけ見るな
を判断の基準として心に留めておくべきだ。情報のソースを確認することがまず重要で、ソースが1つしかない場合はなぜ1つしかソースが見当たらないのかを考えなければならない。また複数のソースに見える場合であっても、同じ通信社の記事を各社が報じているだけで実際はソースは1つの場合もある。また、自分自身がソースになるような、自分の目や耳で実際に仕入れた情報であっても、自分以外の人間が見たら微妙に違って見えることもあるし、自分が気が付かなかったこと、逆に自分しか気付かなかったこともあるかもしれない。つまり何に付けても凝り固まった視点・視線で一元的に物事を捉え、乱暴に一括りにして判断を下すのは時に大きな失敗に繋がるし、人に損害を与えるなど場合によっては自分の人生を台無しにしてしまう恐れすらあることを忘れてはならない。

 安倍首相は2016年に国会で皇位継承について
 男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえつつ、安定的な皇位継承の維持について引き続き検討していきたい産経新聞
と述べているが、これは、過去に少なくとも10名の女性天皇(Wikipedia)が存在したこと、「皇位継承資格は皇統に属する男系男子のみ」は、1889年に皇室典範(Wikipedia)によって定められたことを無視した発言で、「男系継承古来例外なく維持されてきた」は明らかな嘘、若しくは間違いである。
 また、しばしば小池都知事が持ち出す「江戸しぐさ」に関しても多くの嘘・誤認が指摘されている。例えば小池都知事は2018年7月に、
 打ち水は、お風呂の残り湯などを使って朝、夕に水をまくことによって、涼を確保するという江戸の知恵であり、江戸のおもてなし東京都のサイト・知事の部屋
などと発言している。しかし、江戸時代の風呂は公衆浴場が一般的で、風呂が家にあるのは一般的ではなく、風呂の残り湯を撒くのが打ち水で、それが江戸の知恵・江戸のもてなしなんてのは、落語の枕になりそうな滑稽な話でしかない。
 有力な政治家ですらこのようないい加減な話をするのが日本の現状だし、逆に有力な政治家の話であることを根拠に信じてしまう人が少なくないのも日本の現状である。俗に「日本人は論理的思考が苦手」なんて言われることがあるが、そんなことは決してないとは言い切れないのが悲しい現実だ。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。