スキップしてメイン コンテンツに移動
 

安倍首相と小池都知事の類似点


 舛添前知事が不適切な政治資金の支出・公私混同を指摘されて辞任したことを受けて行われた2016年の都知事選に出馬して当選した小池都知事。彼女は当時大きく取り沙汰されていた豊洲新市場の土壌汚染対策の不備についての問題に鑑み、「2016年11月に予定している築地市場の豊洲移転・開場を延期する」と2016年8月に発表した。その後追加工事などを施して、築地市場が豊洲新市場に移転し開業したのは2018年10月の事で、まだまだ記憶に新しい。
 この築地市場の豊洲移転に関して小池氏は、 2017年6/20の会見で「築地は守る、豊洲は生かす」と強調。築地は「5年をめどに食のテーマパーク機能を持つ一大拠点に再開発する」と述べていた(日経新聞の記事)。また市場としての機能も一部残すといった旨の発言もあった。しかし、今年・2019年1月には全く内容の異なる国際会議場の整備を柱とする再開発方針案を示した(時事通信の記事)。


 現在開催中の都議会では、小池氏のこの姿勢の転換についての追及が行われている(テレビ朝日の記事)。小池氏は指摘を受けて「都が中央卸売市場として運営するのは豊洲市場であり、豊洲との近接性を考えれば、築地再開発において都が改めて卸売市場を整備することはないと考えております」「築地ブランドを支えてきた食文化などを生かすという意味で、市場機能を含めて申し上げてきたことであります」などと述べ、「基本方針に変わりはない」と説明しているが、自分にはどう見ても基本方針が大幅に変わっているようにしか思えない。
 この報道を見たときに、またしても好ましくない既視感を覚えた(直近感じた他の「好ましくない既視感」については2/21の投稿3/1の投稿3/2の投稿で書いた)。それは2/28の衆院予算委員会で、立民・長妻議員と安倍首相の間で
長妻:年金記録問題で、ちょうど私がここで質問したときに、不安をあおるなと12年前おっしゃって。大ウソついたじゃないですか。最後の1人までと発言をされて。どうなってんですか今
安倍:政府としてそういう決意を示すことは当然のことではないでしょうか
長妻:これは決意なんだと。決意だったらウソをつき放題じゃないですか
安倍:(消えた年金を)最後のお一人までお支払いすることはできませんと、私に言って欲しかったんですか。それは違いますよ
長妻:極端ですね。こういうことを軽々に言わないで欲しいってことなんですよ。できないことを
というやり取り(日テレニュース24の文字おこし記事より)があったからだ。厳密に言えば、このような安倍氏の、以前の自己発言に責任を持たない言動は他にも枚挙に暇がなく、このやり取りだけが小池都知事の姿勢に感じた「好ましくない既視感」の理由ではない。このやり取りは直近に起きた具体例の1つに過ぎない。

 安倍氏は第1次政権の際に発覚した所謂消えた年金問題(Wikipedia:年金記録問題)に関して、
 この問題は、基礎年金番号に統合した10年前から社会保険庁において先送りされてきた問題でありますが、私の内閣においてすべて解決をしていかなければなりません。そのためには、私には2つ使命がございます。  まず、第1の使命は、最後のお一人に至るまですべて記録をチェックし、保険料を真面目に払っていただいた方々に正しく年金をお支払いしていくことでございます。そのために、政府は、1年以内に名寄せを行い、突き合わせを行う。所属先がわからない5,000 万件の年金の記録と突き合わせを行う。そう申し上げたわけであります。  しかし、私が1年以内と申し上げたときに、そんな1年以内にできるわけないだろう、こんな批判が野党からもありました。私は更に専門家にこの突き合わせが前倒しできないか精査させました。そして、結果、前倒しでそれが可能なことが明らかになったわけでございます。
と述べている(第166回通常国会終了後の安倍内閣総理大臣記者会見のGoogleキャッシュより)。因みに、 首相官邸のサイトで「第166回通常国会終了後の安倍内閣総理大臣記者会見」で検索すると、当該ページが検索結果には表示されるが、リンクをクリックしても当該ページには飛ばずに官邸のトップページにリダイレクトされる。都合が悪いことは何から何まで隠蔽しようとするのが今の政権なのだとしか思えない。また、使命であるとまで言い、1年以内に出来ると豪語していたにも関わらず、「最後のお一人に至るまでお支払する」が実現出来なくなると「あれは単なる決意表明だ」と言い出すようであれば、安倍氏は、米朝会談後に拉致問題解決などを念頭に「次は私自身がキム・ジョンウン(金正恩)委員長と向きあわなければいけないと決意している」と言っていたが(3/1の投稿)、これも「決意した」と言っているだけで「具体的に向き合うとは言っていない」ということなのだろうとしか思えない。あまりにも国民を馬鹿にした態度だし、拉致被害者家族の心情を弄ぶような態度ではないだろうか。

 自民党の二階幹事長は、3/5の会見で「来年夏の東京都知事選に小池百合子知事が立候補した場合、全面的に協力する」と述べたそうだ(産経新聞の記事)。二階氏と言えば安倍政権を支える自民党幹部の1人であり、安倍氏やその周辺の二枚舌を隠さない姿勢と、小池氏がそれと似たような姿勢を都政の場で示していることを勘案すれば、二階氏が小池氏の発言についての二枚舌性を懸念せずに、「来夏の都知事選で支援する」と言ってもそれ程不思議ではない。つまり彼らは同じ穴の狢、似た者同士だ。
 しかしとても興味深いのは、都議会で小池氏の二枚舌を追求しているのは主に都議会自民党の議員らであるという点だ。都議会自民党の議員らは、小池氏と似たような二枚舌を恥ずかしげもなくしばしば使う安倍氏をどう思っているだろうか。小池氏を支持するという二階氏をどう思っているのだろうか。


 この状況を見ていると、つくづく政界というのは太々しく強引に言い切る者が得をする世界なのだと思えてならない。日本の第35代内閣総理大臣になった平沼 騏一郎氏は、共産主義に対抗するする為に防共協定を結んだドイツが、1939年8月に突然ソ連と独ソ不可侵条約を締結したことを受けて、「今回帰結せられたる独ソ不侵略条約に依り、欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じたので、我が方は之に鑑み従来準備し来った政策は之を打切り、更に別途の政策樹立を必要とするに至りました」という、しばしば「欧州情勢は複雑怪奇なり」と表現される声明とともに総辞職したそうだ。まさに現状は
自民党情勢は複雑怪奇なり
である。しかし厳密には複雑怪奇でもなんでもなく、首相や自民党幹部・小池都知事が重要視しているのは自身の立場であり、その維持の為なら公約だろうがなんだろうが簡単に変えるし、民意だろうがなんだろうが恣意的に解釈する、都合が悪ければ「真摯に受け止める」などというスタンスだけを示して、実際は無視するような人達である。というだけのことではないだろうか。勿論、小池氏は批判するのに安倍氏は批判しないのであれば、都議会自民党の関係者も同様である。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。