スキップしてメイン コンテンツに移動
 

考えているようで考えておらず、都合が悪いと無視する風潮の元凶は?


 ハフポストは4/25に「東京新聞・望月衣塑子記者を支援する署名集めた中学生の記事、「炎上」に加わった1人に筆者が会ってみた」という見出しの記事を掲載した。この記事は3/7の投稿「「いじめはだめだ」を否定する大人達」で取り上げたハフポストの記事
の続報である。詳しい顛末はリンク先で確認して貰うとして、さわりだけ説明すると、2/27の投稿で触れた、菅官房長官や彼の会見の進行役を務める内閣広報室長などが、東京新聞の望月記者に対して嫌がらせのような行為を露骨に行ったことに対して、ある中学生が望月記者を支援しようとWeb上で署名活動を始めたところ、SNSで誹謗中傷の標的にされた、という話だ。


 4/25の記事「東京新聞・望月衣塑子記者を支援する署名集めた中学生の記事、「炎上」に加わった1人に筆者が会ってみた」は、当該中学生を誹謗中傷したと思われる女性(注:本人は誹謗中傷ではなく妥当な批判だと思っていることを勘案したのか、記事ではあくまでも「炎上に加わった」と表現しているが、当該女性は「どうせ中2の女の子なんて実在しないんでしょ。いたとしても、大人の息がかかっている」と思ったとも言っている。勿論思っただけでは誹謗中傷には当たらないので、ここでは「誹謗中傷したと思われる」と表現した)へのインタビューを記事にしたものだ。
 インタビュー記事を掲載する場合、掲載前に当事者に確認して貰うことの方が多いのかもしれないが、果たしてこの記事がそれをしているかは定かでなく、記事が当該女性の言い分を事実に即して書いているのか、多分に記者の印象が含まれているのかは定かでないが、記事掲載から数日を経ても当該女性などによる記事の不備への指摘はないので、記事に概ね不備はないものとして考えることにする。

 記事によれば、当該女性は
 テレビとかでも路上で一般の人にインタビューしてその意見を紹介するのも、政権に批判的な声ばかりでしょ。メディアは信じられない。特に朝日新聞や、朝日と関連があるハフポストは信用できない
と述べているそうだ。それで前述のハフポストの記事を読んでも「中学生はでっちあげ」のように思ったようだ。またそう考える背景には、2014年総選挙の際に、安倍政権に疑問を呈するサイトを、大学生が「小学4年生の中村君」になりすまして作っていたことが発覚した件(ねとらぼの記事)があるようだ。
 しかし一方で、当該女性は産経新聞の記事は信じているそうだ。確かに朝日新聞はこれまで誤報を何度かしたことがある。しかし「沖縄の交通事故で米兵が日本人を救出し、後続車にはねられた」と報道した件(BuzzFeed Japanの記事)など、産経新聞にも同様に誤報はある。また、情報の受け手が、情報の発信者が誰なのか・どこなのかを見て、記事や報道内容の信憑性を計ること自体、つまり信憑性を判断する上での指標の一つにするのはごく自然なことだろうが、朝日新聞が報じたら全てウソ、産経新聞が報じることは全て真実、のような雑で極端な断定は確実に適切でない。例えば、彼女は朝日やハフポストは信用できないと言っているが、朝日やハフポストが「自民党の支持率上昇」と報じてもウソだと言わないだろう。
 つまり「(既存)メディアは信じられない、朝日やハフポストは信じられない」と言いつつ、産経新聞という既存メディアは信じているし、朝日やハフポストが自分に都合のよい話を報じた場合は信じる、ということだろうから、○○は信じられない、というのは単に自分に都合のよい解釈でしかないと言えるだろう。それは彼女自身も認めており、記事には
結局、自分が信じたい方向だから信じているだけなのかも
と話した、とも書かれている。


 この記事では、この女性がAbemaTVの番組へ当該案件に関連して出演(AbemaTimesの記事)した際に、「佐藤さん(仮名)」として出演したことに倣って同じ様に呼んでいる。
 この4/25の記事で前述のような内容が記事化されているにも関わらず、この記事のコメント欄には、まるで木の幹に塗った蜜に群がる甲虫かのように、当該女性とは別の「佐藤さん(仮名)」が集まっている。現在、この手の人達のことをネトウヨとか自称保守などと呼称することが多いが、彼らは決して右翼でもないし保守派でもない。個人的にそのようなタイプの人を右翼とか保守と呼ぶのには強い抵抗がある。彼らは右翼の何たるか、保守の何たるかすら理解していない単なる偏見に満ちただけの者でしかない。ハフポストの当該記事を読んでいて、そのようなタイプの人達を一口で表現するなら、今後は「佐藤さん(仮名)」とすればいいのではないか?などと思えた。勿論本当にそれをすれば日本中の佐藤さん(実名)達が余計なとばっちりをくうことにもなりかねないので、これは冗談である。

 更に付け加えるておくと、ツイッターで当該記事のタイトル「東京新聞・望月衣塑子記者を支援する署名集めた中学生の記事、「炎上」に加わった1人に筆者が会ってみた」で検索すれば、この記事を書いている時点では、前述ような第2・第3の「佐藤さん(仮名)」のようなツイートも散見するが、概ね記事でインタビューを受けた「佐藤さん(仮名)」に対する批判が多くヒットする。しかし中には「アホ」「三十路半ばの餓鬼女」「クソウヨ」など中傷めいたものもある。結局のところ、「佐藤さん(仮名)」達だけでなく、彼らと反対の立場の人の中にも、合理性のある批判と誹謗中傷を区別出来ない者がいるということが分かる。
 近代国家では「目には目を歯には歯を」も私刑も認められていない。木乃伊取りが木乃伊になるとはまさにこのことで、誹謗中傷をした者を誹謗中傷する行為は、相手と同レベルに成り下がる行為で愚の骨頂、としか言いようがない。


 当該女性は
 政治の話やニュースに関心はあるのだけど、それを周りの友人には気軽に話せないんです。それができるのは結局、Twitterしかない
とも述べたそうだ。 もしそれを既存メディアを信じられない理由として述べたのならば、何故既存メディアは信用できないのに、どこの誰かもわからないSNS投稿は信じられるのか、と問い詰めたいが、結局それも「結局、自分が信じたい方向だから信じているだけなのかも」でしかないだろう。
 朝日新聞は4/26に「ネットニュース・SNSだけ参考にする人、内閣支持高め」という記事を掲載したが、まさしく「佐藤さん(仮名)」のようなタイプの人達だと感じられた。合理性のある批判と誹謗中傷を区別できないどころか、情報の信憑性を見極められない人が増えている、或いは、これまでとその総数は変わらないが、SNSの隆盛によってそのタイプの人達が掘り起こされ、煽られてたり扇動されているのが現状なのだろう。
 この国ではもう何年も「オレオレ詐欺・振り込め詐欺」などの被害が続いているが、自分には所謂「お人好し」が多いということなのだろうと感じられる。お人好しとは一見ポジティブな表現だが、お人好しであるが為に悪意のある人に騙されやすい側面もあり、場合によっては悪事に加担してしまいかねない。

 戦後この国で重視されてきた、自分で考えるよりも、兎に角回答や設問の解き方を記憶して手っ取り早くテストで良い点を取る為の、所謂詰込み型教育の弊害と、他人を信用しやすいお人好しが多い国民性の悪い側面が、滲み出ているのが現在の日本の状況なのかもしれない。
 また、「考えているようで考えておらず、都合が悪いと無視する、開き直る風潮」の元凶は?と考えると、「真摯に向き合う」と口では言うが、具体的に何かをするでもなく、最終的には無視して強引にことを進める日本の代表的な機関が頭に浮かぶ。しかも、その機関やそれを支える組織(つまり内閣と与党)の積極支持を表明している人達を勘案すれば、その考えは更に強化されてしまう。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。