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都民ファースト・維新に対する共通した懸念


 朝日新聞の記事「オリンピック中の首都高 1000円値上げ案 渋滞対策」によると、
 国や東京都が期間中の交通渋滞対策として、首都高速道路の料金を日中に千円上乗せする案を検討している
そうだ。現在の東京都知事・小池氏は都民ファーストの会を立ち上げた人物で、現在の都議会与党も都民ファーストの会である。小池氏は2017年7月に「知事に専念」という理由で都民ファーストの会代表を退いている(日経新聞)が、彼女が現在も都民ファーストの会の中心的な人物であることには違いない。
 彼らは団体名が示す通り「東京都民第一」という姿勢で都知事選・都議選等に臨み、現在の地位を確立した筈だ。オリンピックのしわ寄せで東京都民も多く利用する首都高を1000円も値上げするという政策の一体どこが都民ファーストなのだろう。オリンピックは一体誰の為に開催されるのか。当該記事には
 (企業へ)商品の納入時期をずらすなどの協力を求めるなどの渋滞対策
ともあるように、 首都高値上げ以外にも、都民の通常生活への影響は確実に他にも及ぶ。オリンピックというイレギュラーなイベントを開催すれば、生活への影響ゼロとは当然いかないだろうが、オリンピックを大義名分にすれば何でもOKかのような話になってはいないだろうかと心配になる。個人的に、政治屋たちが自分達の手柄を確保する為にオリンピックを利用している側面を少なからず感じている為、そんな事の為にイレギュラーな負担を強いられるのは全然納得できない。自分は東京都民ではないが、期間中に首都高を利用せざるを得ない状況になる恐れもある。そしてオリンピック関連の負担は少なからず隣県にも求められているし、国の予算からの支出もある。


 都民ファーストの会が躍進したのは、舛添前都知事の公私混同で批判を受けての辞職と、当時の都議会与党だった自民党への不満という背景があったように思う。そんな状況の中、自民党に進退伺を出して知事選に臨んだ小池氏に期待が集まり、彼女が2016年に知事選に勝利したことによって党が結成され、2017年の都議選で再び躍進を果たし、都議会与党の座についた。
 2017年7月の都議選前にBuzzFeed Japanは「けっきょく「都民ファーストの会」って何なの?「小池新党」がわかる9つの事実」という記事を掲載し、「議会の透明化や情報公開が主な政策」をその1つとして紹介している。


 しかし、都議選のたった3カ月後に、音喜多 駿都議と上田 令子都議が
公約の一丁目一番地の情報公開が極めて不徹底。数度の代表交代の際に象徴されるように、55人の都議がいながら、密室でたった3名で決められた。いつ、どこで、誰が何を決めているかわからない。我々が非難してきたブラックボックスそのものだ」

「程度の差はあったが、言論統制、取材規制も行われた。私に関して言えば、ほとんどのメディアに出ることは事実上禁じられ、議員個人の自由な意見を述べることはできなかった」

「議員が自分の考えを外部に伝えるのは民主主義の極めて重要な役割の一つ。これを制限されれば都民有権者に十分な情報を伝えることはできません。政党としてやってはいけない致命的なガバナンスの欠如だ」
と批判し、都民ファーストの会を離党している(ハフポスト)。そしてその後も同様の批判は度々行われてきた。

 また、3/5の投稿「安倍首相と小池都知事の類似点」でも触れたように、築地市場の豊洲移転に関して小池氏は、 2017年6/20の会見で「築地は守る、豊洲は生かす」と強調し、築地は「5年をめどに食のテーマパーク機能を持つ一大拠点に再開発する」と述べていた(日経新聞の記事)。また市場としての機能も一部残すといった旨の発言もしていたのに、今年・2019年1月には全く内容の異なる国際会議場の整備を柱とする再開発方針案を示し(時事通信の記事)、公約違反という指摘を受けた。因みに小池氏や都ファ都議らは、「方針転換ではない」という苦しい見解を示しており、現在もその姿勢に変わりは見られない。
 個人的には、小池氏の都知事就任や都ファ躍進にも一定の意義があったと考えているが、彼らが当初掲げていた理想像を今も追及しているかどうかに関しては強く疑問を感じる。だから音喜多氏や上田氏のように離党する者が複数出ているのだろうし、小池氏も結局政治家ではなく、自分の政治キャリアの為にいろいろな事を政治的に利用する政治屋なのだろう。そして都ファ所属議員の中にも同様の者がいるのだろうと感じる。


 昨日・毎日新聞は「元フジアナの長谷川豊氏が差別発言 参院選擁立予定の維新は処分検討」という見出しの記事を掲載した。詳しい内容は記事を読んで欲しいが、長谷川氏は講演会で、現在も所謂被差別部落として差別問題が残っている江戸時代の被差別層・穢多非人を不当に卑下するような発言をした。記事には掲載されていないが実際の映像も多く出回っている。記事には長谷川氏はこの件について公式サイトで
 「私自身の『潜在意識にある予断と偏見』『人権意識の欠如』『差別問題解決へ向けた自覚の欠如』に起因する、とんでもない発言」「謝罪するとともに、完全撤回させてください」
と謝罪コメントを掲載したとある。つまり「詳しい事を知らずに間違った発言をした」と主張している。しかし彼はそのたった1日前に「90分の講演を切り取り 自分たちの犯罪行為は棚上げして取材もせずに切り取りして批判 なんなんでしょうねぇ」というタイトルのブログ投稿をしている(現在は削除済み・リンク先はキャッシュ)。その中で彼は、
 僕の講演会の映像を切り取って、「差別だー」と言ってるそうですが、呆れ果てます
 僕の講演会にはかつて何人もの共産党員の方々が、僕の上げ足をとるために参加してきています。なかには妨害をする!」と予告して息巻いてくる方もいらっしゃいます。
などと言っている。 彼はこれまでにも「自業自得の透析患者を殺せ」という趣旨の主張をしたり、「8割がたの女ってのは、私はほとんど「ハエ」と変わらんと思っています」という女性蔑視としか言えないような主張を繰り広げてきた人物だ。そんな人物を日本維新の会は参院選で公認する予定だった。というか、落選したものの、2017年衆院選には維新候補として立候補していたし(産経新聞)、日本維新の会千葉1区の支部長に就任していた(デイリー)。

 維新と言えば、5/16の投稿5/14の投稿でも触れた、国後島で「戦争しないとどうしようもなくないですか」などと発言した丸山 穂高議員も所属していた政党だ。彼の国後島での言動に関しては、
こんな話まで出ている。
 更に維新には足立 康文という、度々国会内外で暴言を繰り返す(Wikipedia)議員も所属している。そもそも、維新の創設者である橋下氏も、2018年8/28の投稿で触れた件など、大阪府知事・市長当時から暴言を度々繰り返す人物だったし、現在の代表である松井氏も、橋下氏程ではないが度々暴言を吐く人物だ。つまり長谷川氏や丸山氏、足立氏などから維新の本質が滲み出ているように思えてならない。


 そんな維新だが、地元大阪での人気は根強く、今年4月の統一地方選では、大阪市長・府知事選、大阪府議選ともに圧勝を納めている。維新が大阪で人気を得ている理由については、個人的には古谷 経衡さんの書いた「維新はなぜ大阪で勝ち続けるのか?」という記事がとても理解しやすいと思う。大阪の維新にしろ、東京の都民ファーストの会にしろ、彼らが躍進し一定の地位を築けた背景には、マンネリ化して期待の持てない既存政治団体や、社会に漂う閉塞感のようなものを打破したいという市民・有権者の思い、つまり社会的なストレスがあったのだろうと思う。これを見ているとある種の危険性を感じる。
 第一次世界大戦で負けたドイツは多額の賠償を負わされ、1918-1923年の約5年間で物価がおよそ1兆倍になるというハイパーインフレが起きた。デノミの実施等により一時混乱は収まったが、1929年に起きた世界恐慌によって再びドイツ経済は混乱し、1933年には失業率が44%にも及んだ。そんな状況によって従来の政治勢力が信頼を失い、それに乗じてナチスが台頭、ヒトラーが独裁体制を完成させる礎となった。最終的には他の政治勢力を排除し、悪名高き全権委任法を成立させて独裁体制を完成させた。ナチスは1932-33年の選挙キャンペーンでアウトバーン建設を訴えたり、また1934年に提唱したフォルクスワーゲン(国民車)構想など産業政策も行うことや、数々のイメージ戦略によって支持を取り付けている。
 維新や都民ファーストの会がナチス的だと言っているのではない。維新関係者の中には差別や戦争肯定等、ナチス的発想の者も少なからずいるだろうが、それでも既にナチス化しているとか、ただちにナチス化する恐れがあるとまでは思えない。しかし、都民ファーストの会が示した当初の姿勢が守られていないのと同様に、今後変容しないとも限らない。

 選挙での投票先・政党選びというのが、ある程度「マシ」なものを選ぶことになるのは仕方のないことだが、あまりにもイメージ性重視・団体や候補者の主張を真に受けた選択をすれば、日本でもナチスのような政治団体が台頭しかねないし、戦前の日本に再び舞い戻るようなことにもなりかねないという認識を常に持っておかなくてはならない
 特に国会議員を選ぶ選挙には、特にそのような認識で臨まなくてはならない。

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