渋谷区神南にあるコンビニの店内をネズミが走り回るムービーがツイッター上で注目を浴びている。渋谷に限らず繁華街でネズミを見かけるのは決して珍しいことではない。特に飲食店の側には間違いなくいる。これまで自分がバイトしてきた飲食店の厨房は、閉店後電気を落とした後はほぼ間違いなくゴキの大運動会状態で、開店前に出勤して電気をつけたタイミングで、さささーっと退散する奴らを目にするのは日常的茶飯事だった。だからこの話にもそれ程驚きはなく、個人的な感想は「他の店も程度の差はあれ可視化していないだけでは?」だった。
話題になっていたのは、このツイートだ。
— あん (@fD7vpP8G5tE8Nav) August 1, 2019
深夜のコンビニやばくない??? pic.twitter.com/tUxp0ETCjz— 盧 銀海/GINKAI RO (@Ginkai19990324) August 4, 2019
前段で「他の店も、程度の差はあれ可視化していないだけでは?」と書いたが、それでも、こんな状態の店では口にするものを買いたくないと感じるのは、決しておかしな感覚とは言えない。ゴキブリと違ってネズミは食品の包装くらいなら簡単に食い破る。種類にもよるが、ネズミは比較的厚い被膜で覆われたケーブルを食いちぎるような動物だ。これまでの経験上、飲食店の厨房など食べ物飲み物のある場所から、ゴキブリやネズミを完全に排除するのはほぼ不可能だと理解しているが、それでも、ゴキブリやネズミが駆け回る横で調理をしているわけではないし、そんな環境で食事をさせられるのは流石に御免だ。つまり最低限視界からは排除して貰わなければ不安になってしまう。
この動画が注目された事で、ファミリーマートは「ファミリーマート店舗における動画投稿に対するお詫びとお知らせ」を発表した。
この動画を撮影した人達は、恐らく客として当該店舗を訪れた者だろうが、もしアルバイト等従業員による投稿だったとしたら、どうなっていただろうか。願望としては、投稿者が客だろうが従業員だろうが同じ反応であって欲しいが、昨今の所謂「バカッター」事案を考えると、場合によっては企業に損害を与えるとして、逆に投稿した従業員を訴えるなどの態度を示す企業・店もあるのかもしれない、なんて想像してしまう。
真偽は定かでないが、およそ4か月前から既に指摘があったという話もある(渋谷のファミマ、店内にネズミ発生で本部謝罪 「商品は撤去している。営業再開の目処は未定」 | キャリコネニュース)。指摘の声があがってから4か月も状況が放置されていたのだとしたら、もし従業員が指摘しても前向きには対応しなさそうだし、従業員が告発したら報復されるなんてこともあるのかもしれない。内部告発した者が蔑ろにされ、もみ消されそうになる事案はこれまでにも山ほど起きているし、実際にもみ消された事案もあるだろう。また「バカッター」の件もあるので、それと同じ様に不適切なSNS投稿扱いされかねないと懸念してしまう。
今回は、営業中の店舗の中を複数のネズミが歩き回っている動画が出回ったから、流石にそれが従業員による投稿だったとしても「バカッター」扱いは出来なかったかもしれない。しかし、冒頭で書いたような飲食店厨房のゴキ大運動会は、暗視カメラでも使わない限り撮影できないだろう。なので撮影するにしても1-2匹しか撮影できないだろうが、日常的に働いていれば、決して少なくないゴキブリやネズミがそこにいる事を感じとることは出来る。そんなことを考慮すると、その1-2匹程度の害虫を撮影して状況への疑問を示しても「バカッター」扱いされるかもしれないと想像する。
つまり、ファミリーマートの本部なのか当該店舗の経営者なのかは分からないが、これまでの指摘を「バカッター」扱いしてきたから、指摘があったにもかかわらず、4ヶ月以上も状況が放置されていたのかもしれない、とも考えられる。
この件についての、
ネズミだらけファミマの件、野良猫が捕獲されてネズミが増えた説か。かつて毛沢東が「稲を食べるスズメを駆除しろ!」と大号令をかけ、人民が一丸となって中国全土でスズメを殺しまくったら、今度はスズメがエサにしていた害虫が大発生して稲が壊滅したという逸話と重なって、すごい納得感がある。— ncc1701 (@ncc170116) August 7, 2019
というツイートもあった。そっくりそのまま鵜呑みに出来るような話ではないが、ネタ的な話としては割合完成されている感がある。
昨今日本では、鹿や猪等による所謂獣害が増えているという指摘がある(地方におけるシカ・イノシシ被害の実情と対策|ALSOK ビジネスセキュリティラボ)。その背景には、人間が活動範囲を広げていることの影響もあるだろうが、それらの動物の個体数自体が増えているという話もある。何故それらの個体数が増えているのかについては、天敵の減少があり、大きな天敵だったニホンオオカミが1900年代初頭に絶滅したからという話もある。Wikipedia:ニホンオオカミ#絶滅の原因によれば、その絶滅要因の一つに人間による駆除があるそうだ。この一連の流れもネズミと野良猫の関係と似ている。
2018年2/25の投稿などでも書いているように、野良猫や野良犬・野犬は、言い換えれば野生の猫/犬なのに、なぜ猫や犬は人間に飼われるべき動物と捉え、それらを撲滅しようと駆除したり保護したり、不妊手術を推進するのか、自分は強い疑問を持っている。人間との共存を考えれば、例えば狂犬病や他の疫病等の問題もあるだろうから、全く何もせずに一切手出しをしないのが正しいとは言えないだろうが、野良猫や野良犬を、身勝手で短絡的な動物愛護感だけで、撲滅しようなんてのは明らかに人間のエゴだ。
確かに、元来猫や犬がいなかった島などに人間が持込んだ為に、その島の生態系が脅かされているケースなどもあるだろうが、例えば猪が何キロも泳いで移動しているケースなども確認されており、人間が持ち込まなくとも、元来島にいなかった種が、何かしらの方法で到達する可能性もゼロではない。そもそも持ち込んだのは人間なのだから、それを駆除しようというは明らかに人間のエゴだ。そのエゴが単なるエゴならばよいのだが、それによって更に生態系に影響を与える恐れもあるし、これまでに示した幾つかの例のように、その影響が自分達人間にも跳ね返ってくる恐れは少なからずある。
この話は6/24の投稿「室内から猫を出さないのは「猫のため」ではなく「人間のため」」の中のいくつかの話にも通ずる部分がある。あの話の後にも、AC・公共広告機構が「にゃんぱく宣言」なる、猫を飼育する上での注意点を啓蒙するCMを公開し、一部で「絶賛」等とされた。その中にも、
家の外に出してはいけないという歌詞がある。
「猫を家の外に出すな」という話が如何に変かについては、前述の投稿で嫌になる程書いたので割愛するが、数年後に「野良猫」の保護(連れ帰って「非野良猫」にするのではなく、野良猫が野良猫のままでいることを推進するという意味での保護)が啓蒙されていたら、何とも言えない気分になりそうだ。
トップ画像は、Photo by Mark Sayer on Unsplash を使用した。