関西電力の経営陣20人が、原発立地自治体の福井県高浜町の助役から3億2000万円もの金品を受け取っていたことが発覚した。「関電会長ら3.2億円受領=福井・高浜町元助役から-「原発マネー」還流か:時事ドットコム」は、元助役が原発関連工事に絡んで得た資金などを7年にわたり提供していたとし、「原発マネー」が関電側に還流していた疑いもあると書いている。
現在の関電社長の岩根氏は、記者会見で自身も社長就任時に「お祝い」として高価な物品を受け取ったことを認めたが、「トップとして経営責任を果たしたい」と辞任は否定したそうだ。自分が社長を続けることで原発再稼働に対するイメージを悪化させたいということだろうか。
この事案の発覚は、昨年金沢国税局が行った、原発工事を請け負う高浜町の建設会社の税務調査で元助役が3億円を受け取っていたことが分かったのが発端だそうで、芋づる式に、元助役から関電会長ら6人が2011-17年の間(後述のハフポスト/朝日新聞の記事では2018年までの7年間となっている)に約1億8000万を受け取っていたことが判明したらしい。その後関電の社内調査で役員ら計20人が金品の提供を受けていたことが分かったそうだ。
ハフポスト/朝日新聞の記事「関西電力が会見、岩根社長ら20人に3億2000万円分の金品。「一時的に保管していた」」には関西電力・岩根社長が記者会見の冒頭で、「社会に多大な心配をかけたことを深くおわびする」と謝罪する場面の写真が掲載されている。
しかし、彼らが本当に不適切なことをしたと思っているのかどうかには疑問を感じる。頭を下げさえすればチャラになると考えているのではないか?と感じてしまう。何故なら、この金品のやり取りについて関電現社長・岩根氏が示した見解が酷い。前者はハフポスト/朝日新聞の記事、後者は時事通信の記事からの引用だ。
(金品などは)受け取りを拒んだり、返却を申し出たりしたものの、強く拒絶されるなど返却困難な状況があった。返却の機会をうかがいながら、一時的に個人の管理下で保管していた
(相手との)関係を維持しながら事業運営をしていくには、あまり強引に(返却)しない方がいいと判断した「返却の機会をうかがいながら、一時的に個人の管理下で保管していた」?「あまり強引に返却しないほうがいい」? 不適切な金銭のやりとりではなかったということをアピールしたいあまりに、小学生でも分かりそうなどうしようもない言い訳になってしまっている。
元助役が強引に渡してきたから拒否できずに一時的に保管していただけ、相手との関係性があるからあまり強引なことは出来なかった。なんて話が通るなら、どんな賄賂もこの論法で正当化出来てしまう。端的に言って癒着体質以外の何ものでもない。不適切な金銭提供を持ちかけるものがいたら、それはダメだときっぱり指摘しなければ同じ穴の狢だし、当該の元助役は既に死亡している為に「死人に口なし」で責任転嫁しているようにしか思えない。バカも休み休み言って欲しい。
金の流れについては「東京新聞:原発マネー還流か 関電会長らに1.8億円 福井・高浜町元助役から:社会(TOKYO Web)」が掲載している図が分かりやすい。
この図が実態に即しているとすれば、関電社長が示した見解は単に責任を逃れる為の稚拙な言い訳としか思えない。金を渡してきた方が悪い、もう返したし一応謝ったからOK、なんて話が通るのだとしたら、明日からは万引きで捕まっても、「無料サンプルだと思って懐に入れた。後でちがうと気付いて返す機会をうかがいつつ一時的に保管しただけで万引きじゃない。誤解を招いたことは謝る」と説明すれば、責任を問われないことになるだろう。
この件に対する経団連会長が示した見解も酷い。「関電役員の金品授受、経団連会長「友達で悪口言えない」:朝日新聞デジタル」によると、経団連の中西 宏明会長(日立製作所会長)は9/27の定例記者会見で、
八木さんも岩根さんもお友達で、うっかり変な悪口も言えないし、いいことも言えない。コメントは勘弁してくださいと述べたそうだ。岩根氏は前述の通り現関西電力社長、八木氏は会長である。日立製作所は日本を代表する原子力関連企業だ。
結局ここでも癒着体質が露呈している。中西氏は友達だから強く批判・指摘出来ないと言っている。やや飛躍した推測の感もあることは理解しているが、こんなコメントをするということは…(あんたも同じ穴の狢だろ?)と思われても仕方がないのではないか。
原子力関連の話題は9/19の投稿「国の原発政策「絶対的な安全性の確保までを前提としておらず」?」でも書いた。それ以前から、原発を再稼働させたい人達をそうさせる何かがあるんだろうとは思っていたが、それはつまりこういうことだったんだろうというのが、この件の率直な感想だ。まず不当に私腹を肥やすこと自体が問題のある行為なのだが、あんなに酷い大事故を経験した直後なのにもかかわらず、それでも私腹を肥やす手段に原発を用いる人達の気が知れない。単に馬鹿なのか、血も涙もない人なのか、その両方なのか、どうにもやりきれない。
昨日の投稿であいちトリエンナーレの補助金取り下げについて書いたが、政府がその取り下げの妥当性を主張するなら、こんなことが起きたのだから原子力発電への公的資金は全て引き上げ、少なくとも関西電力に提供している公的資金は、7年前まで遡って返却させる必要が出てくるのではないだろうか。
この件に対する経済産業大臣のコメントもまた滑稽である。 「「事実なら言語道断」 経産相、関電の資金疑い :日本経済新聞」によると、千葉を始めとした関東各地が台風被害に苦しむ中、災害対応そっちのけで組閣された新内閣(9/11の投稿)の経済産業大臣・菅原氏は、9/27の会見で、
事実とすれば極めて言語道断で、由々しき事態だ
徹底解明し厳正に処する
関電という原発立地地域を抱える社会的責任のある企業の問題だ
原発の立地地域の信頼に関わる極めて重要な事案ととらえている
と述べ、関電から事情聴取するよう省内で指示したと説明したそうだ。
「極めて言語道断で、由々しき事態」という表現が文法的に適切かどうかに疑問があるものの、口語表現上なら仕方のないことでもある。それを除けば菅原氏のこのコメントや姿勢自体は全く滑稽ではない。では何が滑稽なのかと言えば、彼もほんの数日前に不適切な献金は返せば問題ないという姿勢を示していたのに(9/22の投稿)、そんな人が「極めて言語道断で、由々しき事態」なんて文法的に正しいとは言い難い表現をしてしまうくらい憤って見せているから滑稽なのだ。
確かに菅原氏が受けた不適切な献金の額は8万円足らずなのに対して、関西電力の経営陣が受けた金銭提供は3億円と大きな開きはある。しかし、不適切な金銭供与を受けたという点では同じことだ。同じことをした人が同じことをした人に強く、しかも過剰なまでに憤って見せている様子から、菅原氏は世間の目が自分から逸れることを願っているのだろうと感じられてしまう。
関西電力や高浜町助役の行為は当然問題なのだが、しかし大臣が「返せばOK」という姿勢を示し、政府もそれで済ませているのだし、企業や自治体が「バレなければOK」「バレても開き直ればOK」という方向性に向かうのは無理もない。これも昨日の投稿で指摘した、現在の日本は、民主主義/自由主義崩壊前夜かもしれない、実際は既に前夜は過ぎており、もう崩壊の只中にあると考えるべきかもしれない、理由の一つだ。トップが腐ればその影響は端々にも及ぶ。経済のトリクルダウンは起きなかったが、腐敗のトリクルダウンは確実に生じている。アベノミクスの成果は腐敗のトリクルダウンなのかもしれない。
因みに、昨日は原発関連で「「処理水は薄めて海洋放出が妥当」原子力規制委が韓国に伝える | NHKニュース / スクリーンショット」という報道もあった。汚染水を海に流しても問題ないということをアピールするには、少なくとも約1年間程度、規制委幹部や環境大臣・首相などが、汚染水を沸かした温水プールで1時間以上泳ぐことを日課にして実践して見せればよいのではないか?と感じる。東京オリンピックに向けた暑さ対策などで話題になっている「打ち水」に用いるのも効果的だろう。とりあえず国会や自民党本部などで用いる水を、飲料水以外全て汚染水を希釈して賄ってみてはどうだろうか。
トップ画像は、3D Animation Production CompanyによるPixabayからの画像 と、Stefan KuhnによるPixabayからの画像 を組み合わせて加工した。